第24話 脳筋への入り口
実家に帰ってきてから1ヶ月が過ぎた。
バッツもカリーも確実に強くなってきていて、剣ではバッツと良い勝負になってきている。
いや嘘だ、俺は今地面に倒れている。
「あーーーっ!!ついにバッツにも勝てなくなったか〜」
「っしゃ!!剣でロドニーに勝った!!」
悔し過ぎて立ち上がることも面倒くさいし、強くなるの早くね?
「やっぱ、俺には剣の才能無いんだな」
「ん〜よく分かんねーけど、マギーさんが言ってるみたいに、ロドニーがやりたいことが伝わってくるんだよ。だから俺はそれをやらせないようにしてるだけ」
やっぱり俺は魔法使いなんだと改めて自分に言い聞かせる。正直バッツに勝てなくなったのは悔しいけど、心のどこかでバッツの成長を楽しんでる自分もいた。
なんとも言えない不思議な感情だ。
「もしかしたらなんだけど、ロドニーは剣より素手の方がいいんじゃないか?」
「素手?格闘術ってことか。なんでそう思うんだ?」
「ん〜なんとなくそう感じたとしか…」
なんとなくって…でもバッツを信じてみようかな。格闘か…ハージノ町のギルドマスター、ロドリゲスさんにでも聞いてみよ。
と言うことで来ました冒険者ギルド。
「サリーさんお久しぶりです」
「あらロドニー、ほんと久しぶりね。帰ってきてたのは知ってたけど、今日はどうしたの?」
「ギルドマスターに会えないかな〜と思いまして」
「マスター?ちょっと待ってて」
サニーさんはすぐに戻ってきてくれて、ギルドマスターの部屋に行けばいいとのこと。
「ロドリゲスさんこんにちは」
「おぉロドニー、よく来たな。それで俺に用事があるって?」
「素手での格闘術を教えてもらえないかと相談に来ました」
「格闘術?まぁ空いてる時間に少しならいいけどよ。マギーのやつに何か言われたのか?」
俺はバッツ、カリーのことを説明し、バッツが俺は剣術より格闘術の方が向いてるのではないかと感じたと説明。
「そう言うことか。しかしよ、俺も素手を得意としてるが、誰かに習った訳じゃねぇ。独学だが良いのか?」
「独学だろうがなんだろうが、強くなれれば良いです」
「そうか。分かった。なら今日の夕方また来てくれ」
「ありがとうございます!!」
それから一度家に帰り、みんなに俺は剣術じゃなくてロドリゲスさんに格闘術を習うと伝える。みんな了承してくれたが、母さんは少し寂しそうだった。
「母さん、今まで剣を教えてくれてありがとう。でも俺には剣術の才能が無いと思う。だからバッツが感じたことを信じて一度格闘術を習ってみるよ」
「そうね。バッツの言う通りよ。私も気付いてたんだけど、言えなかった。あなたは魔法があって十分強いし、あなたとの剣の時間が楽しかったから…ごめんなさい」
「謝ることじゃないよ。俺も母さんとの時間は楽しかったし、母さんに勝つことを諦めた訳じゃないから。剣では無理でも格闘で勝つ!!」
「ふふっ。そうね。楽しみにしてるわ」
バッツが感じてたことを母さんも感じてたのか。やっぱり俺には剣の才能が無いってのが分かったし、バッツはすごい才能があるんだな。
「バッツ、お前にもな。もぉ剣では勝てないけど…負けない!!」
「ははっ。まさかロドニーにこんな嬉しいことを言われる日が来るとは」
気持ちを新たに、冒険者ギルドへ向かう。
受付にギルドマスターがいて、二人でギルドの訓練所へ向かうことに。
「よし、まず軽く俺に打ち込んで来い。今のお前の強さを見てみたい」
「よろしくお願いします」
格闘術なんてやったことないから、なんとなく色々と攻撃を出してみる。
「なるほど。やや動きがぎこちないが、マギーにしごかれてるだけあって筋がいい」
「ん〜、筋がいいと言われても、剣術と格闘術ってどう違うんですかね?」
「そうだな」
少しだけ考え込むロドリゲスさん
「俺は剣術をやってこなかったから違いと言われると困るんだが、たとえば、剣だと盾とか剣で防がれた場合、そこから力勝負になるか受け流すかとか考えるだろ?俺は単純だからよ。もし俺のパンチをお前が防御した場合、俺が考えるのは防御ごとふっとばすことだ」
ふんっふんっとパンチしながら説明するロドリゲスさん。
「なるほど。剣だと切るイメージで攻撃して、防御されたら次の手を考えるけど、パンチだと当たりさえすればそこから先は力でなんとでもなるってことですか?」
「まぁそんな感じだ。それに剣と違って素手には利点もある。分かるか?」
「ん〜腕が2本あるとか?」
「ははっ。それもそうなんだ。足も使えば4本だな。だが答えはそうじゃなくて、手だから、相手を掴めるってことだ」
たしかに相手の腕とかを掴んだりできるが、そこの間合いに入れるかどうかなんだよな…
「なんだか考えこんでるみたいだな」
「剣とか槍相手だと、自分の間合いまでどうやって近付くんですか?」
「なんだそんなことか?簡単、己の肉体を剣や槍より強くすれば良いだけよ」
分かってはいたけど、やっぱり脳筋だったか…まぁでも無駄なことを考えずにただ殴る。避けられるなら掴んで殴る。これだけ考えればいい。俺は格闘の方が向いてるのかもな。これを格闘術と呼んでいいかどうかは微妙なんだけど…
その日から俺とロドリゲスさんでひたすら殴り合う訓練をやり続けることになる。
身体強化に頼らず己の筋肉もしっかりと育てることを忘れない。
その日の訓練?殴り合いを終えるとロドリゲスさんが思い出したかのように言ってきた。
「そう言えばロドニー、お前Sランクに上がるかもしれないぞ。グランデのギルドマスターが、レッドドラゴンをお前が倒したと、Sランクに上げてくれって王都の冒険者本部に申請出してた」
「あぁそう言えばドラゴン倒しましたね。報酬もらって終わってました。Sランクにもなると冒険者本部に申請が必要なんですね」
「そうだな。今までの仕事や人間的なことも含めて判断するから、俺にもお前がどう言う人間か確認の書類が来てたよ」
「Sランクって強ければ誰でもなれる訳では無いんですね」
「そうだ。まぁ滅多なことは無いけど、Sランクになるとそれなりの権力も与えられるから、その権力を正しいことに使えるかどうかの見極めってやつだ」
権力か…めんどくさそうだな…
「ちなみに、その権力ってやつ、いらないって言えたりできますか?」
「あぁん?権力がいらない?」
あぁん?って…
「ん〜権力が与えられるってことは、それなりの責任も与えられるってことでしょ?俺は自由に生きていきたいので、めんどくさそうな責任はちょっと…」
「あぁそう言うことか。安心しろ。むしろ自由に生きていける為の権力だよ」
「自由の為の権力?」
「簡単に言うと、Sランク冒険者は一人で独立した国扱いされる」
「独立した国?へ?」
俺が国になるの?
「えっとだな。国王と同じ権力をもつってことだ。つまり貴族から依頼があっても、どうするかはお前次第ってことだ」
「それって、貴族と揉めて、俺がその人を殺しても大丈夫ってことですか?」
「話が極端だな…だがお前の正当性が認められれば問題ない。もちろん認められなければ犯罪者に落ちるがな。それは国王でも同じだ」
なるほど。Sランクの魅力はあるな。
「まぁなんだ。貴族もそう簡単にSランク冒険者を利用できないようにしたってことだ。何か問題があって国が滅びたらたまったもんじゃないからな」
「国が滅ぶって、そんな大袈裟な」
「お前、やろうと思えば出来るだろ?」
「…まぁやろうと思えば…ね?」
「ね?って。たのむから滅ぼすなよ⁉︎」
「やりませんって」
レッドドラゴン倒した程度でSランクになれるんだったらバッツとカリーもすぐランク上がりそうだな。
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