第23話 懐かしきゴブリンの味
翌日、家の庭で俺と母さんとバッツが集まる。
「まずはバッツ、あなたの力を見せてちょうだい」
「よろしくお願いします!!」
ルールはいつもと一緒。初めは身体強化無しでやって、その後身体強化を使って打ち合いをする。
昔の俺は母さんに身体強化を使わせることが出来なかった…俺は使ってたのにな…
「よし、次は身体強化使ってみなさい」
「分かりました!!」
結果は言うまでもない。バッツは母さんに弄ばれて《もてあそばれて》終わった。
「なるほどね。バッツ、あなた筋は良い、けどそれよりも良い目を持ってるわね。経験を積めば剣術ではロドより強くなるわよ」
「ほ、ホントですか⁉︎」
「あなた次第ね。じゃぁロド、次いくわよ」
まじか…バッツが俺より強くなる…
たしかにバッツの方が俺より才能はあると思うけど、さすがにまだ負けたくないな…
「母さん、行くよ!!」
俺は何度も母さんと戦うイメージはしていた。どうすれば母さんの隙を作れるか…
「あなたがどれだけ成長したか見せてもらうわね」
俺は呼吸を整え、まっすぐ母さんを見つめる。母さんに小細工は効かない。だから力で勝負するしかない。
力で勝負と言っても初めから全力で剣を振るのではなく、野球のバッティングみたいに、インパクトの瞬間に力が最大限になるように工夫して剣を振る。
と言っても野球なんて遊びでしかやったことないから詳しくは分からない。素振りをしながら自分の感覚のみで練習してきた。少し不安はあるけどね。
「くっ、なるほど、少しは考えたじゃない」
「これでもダメか」
「次、身体強化して」
「こうなったら!!」
身体強化をして小細工なしのパワーでゴリ押し、たまに力を抜いて緩急をつけるが、どれも上手くいなされたり、避けられたりして終わった…
「くっそ〜。やっぱり勝てない…」
「少しは考えたようだけど、あなたの剣を押し付けるんじゃなくて、相手のやりたいことをやらせない剣さばきや動きが必要よ。その点、バッツは目のおかげもあってか、私のやりたいことを見抜いて、考えながら剣を振ってたわ」
なるほど。たしかに俺は自分のやりたいことしか考えてなかったな…相手のやりたいのとをやらせない剣、動きか…そんなん分からん…
母さんはお店の準備があるからとバッツに一人でできる訓練を教えて中に入って行った。
入れ替わるように父さんとカリーがやってきて、今度は父さんがカリーの魔法を見てみたいと言う。
「カリーちゃん、一通り君の魔法を見せてくれないか?」
「分かりました」
カリーが得意なのは結界魔法だが、一通りできる攻撃魔法を見せる。
使ったのは、火、水、土の3種類、野宿をする時に使えると便利だからとその3属性を練習してきた結果だ。
「なるほど。あと、言ってた結界魔法も見せて欲しい」
父さんに言われて結果魔法を見せる。
「ほぅ。たしかにこれは面白いな」
「今は物理攻撃でカウンターが発動するのですが、魔法攻撃にもカウンターが発動するようにしたいんです」
「なるほどね。ちなみに物理攻撃はどのくらいの威力まで大丈夫なの?」
「試したのはレッドドラゴンの体当たりまでなら大丈夫でした」
「なるほど。それは運が良かったね」
「運?どう言うことですか?」
父さんは何も言わずにカリーの斜め後ろに行き、結界にパンチした。
すると結界が割れる。
「えっ⁉︎な、なんで?」
何が起こったのか理解できないカリー。
「簡単だよ。君の結界は前からの攻撃には強いけど、後ろ、特に利き手の反対側だね。そこは弱いそれだけ」
「後ろ?なんで…」
「さぁなんでかな。教えてもいいけど、自分で考えるかい?」
「ん〜…」
「父さん、意地悪なことするね」
「あははっ。やはりロドにはバレてしまったね」
「どう言うことですか?」
俺はカリーに近付く。
「カリー、もう一度結界を張ってくれるかい?今度は父さんが言ってたポイントを意識してみて」
「分かった」
カリーが張った結界を見て、1番魔力の流れの悪い所をパンチする。結界が割れた。
「うそ、今度は違う所で…」
「結界が弱くなる場所は一定じゃないってことだね」
「分かった。そう言うことね」
カリーは分かったみたいだな。単純に魔力が均一に張られてないだけなんだけど、分かったからと言ってすぐに出来る物でもないし、地道な努力が必要だな。
「ロド、お前は何か新しい魔法はあるか?」
「あぁ〜、転移が使えるようになったよ」
「転移か、もぉそこまで」
「ちなみに、こう言うことも出来る」
俺は父さんとカリーの位置を入れ替える
「なるほど。面白い」
俺がどうやったかを考え込む父さん。
「長距離は時間と魔力が必要だけど、近距離なら自分以外も簡単に転移できるよ。これを覚えれば客のテーブルに料理を転移させることも出来るね」
「はっはっは。それは便利だ。今度やってみようかな」
教えてでもなく、今度やってみようかなってことは父さんも転移が使えるってことか…
「父さんは何の魔法が得意なの?」
「俺か?ある程度できるけど、1番使ってきたのは料理が上手くなる魔法かな」
「どう言うこと?」
「冒険者になったばかりの時だ。食べ物に困った時があってな。ゴブリンの肉とか上手く出来ないかと考えて色々魔法作ったんだよ。懐かしいな」
「なるほど。その考えは無かったな。その魔法を普通の食材に使うとさらに美味しくなるってこと?」
「そうそう。それに毒抜きとか、繊細な魔力操作が必要で、あれはいい訓練になったよ」
「…私、ちょっとゴブリン狩ってくる」
「あはは。カリーちゃん、ゴブリンじゃなくても出来るから、お店で練習しようか」
やっぱり魔法って面白いな。
バッツとカリーはそれぞれに課題を見つけたので、今よりもっと強くなる。俺より強くは…なるかも。どうしよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます