第51話 ブルー

 王都の冒険者ギルド、隣の酒場にて。


「死ぬかと思いました…ってか、10回くらい死にました…ひどいですロドニー大師匠」

「あはは。まぁ今日は飲んで食べて、ゆっくり休んでまた明日」

「明日⁉︎無理です無理…助けてくださいバッツ師匠ぉーー」


「なぁロドニー、お前ナターシャに何させたんだよ?」


 バッツが聞いてくるので、簡単に説明。


「おぉーーその方法があったな!!さすがロドニーだぜ」

「えっ?バッツ師匠、そこは庇ってくれる場面じゃ無いんですか⁉︎」


「何言ってるんだナターシャ?死んでも生き返らせてくれるってことは、どんだけ失敗しても良いってことだ。こんな良い事ないぞ!!それに、恐怖に慣れろとは言わないが、恐怖に対する耐性は付けておいた方がいい…」


 バッツも母さんとの修行を思い出してるのだろう…かなりしごかれたんだろうな…


「それで、そっちはどうだったんだ?」

「そうね。カルロスはクリスを守りたい。だから守る力が欲しいって言うから、盾を使うことにしてみたわ」

「そうだな。ただ、クリスがよ、まだイメージが湧かないんだと」


 なるほど。


「ん〜どうして2人は冒険者になったの?」


 俺は2人に聞いてみる。


「俺は、クリスを守る為に…」

「僕は、カルロスに守られなくても良いくらい強くなりたい…」


 お互いのことが大切で失いたくないんだろうな…男の友情と言うやつか。


「そうか。じゃぁ、青の剣ってどうやって名付けたの?」

「……」


「まぁ話したくないこともあるだろ。無理には聞かないよ」


「……嘘なんだ」

「おいクリス!!」

「…?何が嘘なんだ?」


 何か込み上げるものを必死に堪えて、ゆっくりと話し出すクリス。


「僕と、カルロスは孤児なんです…でも、なんとか3人で生きていたんです…」

「3人?」

「ぐすんっ。ぐっ…」


 ついに我慢できなくなったのか、クリスの目から涙が溢れ出す。


「ったく。俺たちは3人で生きてたんだ、あの日まで…」


 代わりにカルロスが話し出した。

昔、クリス、カルロス、そしてブルー。この3人でスラム街で暮らしいた。


 ブルーは犬の獣人の女の子で、二つ年上と言うこともあり、3人のリーダーみたいな存在だったらしい。


 ある日、ご飯を盗んで逃げてる途中、クリスが転んでしまい、ブルーが助けに行った。そこで、クリスの代わりに捕まってしまったブルーは連れ去られてしまった。


 2人は必死にブルーを追いかけ、たどり着いたのは貴族街。それ以上は中に入れず途方にくれたのだとか。


 ブルーが連れ去れてから半年後、

言葉には言い表せないほどの悲惨な姿で、スラム街に捨てられているブルーを発見。


「俺たちはブルーを見た途端、絶望したよ。でもブルーは帰ってきた。帰ってきたんだ…ただ、俺達の顔を見たブルーは、一言」


「あんた達、生きてたんだ……良かった。…ごめん、私はもぉ無理だ…」


 そう言って笑顔で自分の首を切った。


「…だから。俺たちは、ブルーを守れなかった自分達の弱さとの決別と、ブルーをあんな風にしちまったどっかの貴族に…復讐すると誓ったんだ。俺たちと、ブルーの為に…」


 だから青の剣ってことなのだろうな…


「復讐か…」

「……」

「良いんじゃないか?復讐の為の力を欲しがっても」

「「え⁉︎」」

「復讐…そうだな、暗殺者とかどうだ?」


「ちょっとロドニー本気なの?」


 カリーが止めてくる。

 きっと日本にいた頃の俺ならそんなこと言わなかっただろう。でもここは異世界、力が全てでは無いが、力があって損はない。


「あぁ。暗殺者って名前がダメなのかも知れないが、ようはターゲットにバレないように消すってことだろ?」

「そうだけど…復讐の為の力って悲しいわ」


「そうかもな。でもそれを選ぶのは俺たちじゃなくて、クリスとカルロスだ」


 所詮は他人の人生だ。俺がここで何も言わなくても自分達で強くなるかもしれないし、途中で死ぬかもしれない。そんなこと考えてたら何もできない。


「で?二人はどうしたいの?どの貴族がやったとか情報はあるのか?」

「…まだよく分かってない…」


「まぁ、俺はお前らの師匠でもなんでもないし、バッツとカリーが決めればいいと思う」


「ちょっと考えさせてくれ。難しい問題だぜ」

「そうね。クリス、カルロス、また明日にでも話せるかしら?」

「「はい」」


「明日って言っても宿なんて無いんだろ?俺が出すから一緒な宿屋に泊まるぞ」

「い、良いんですか?」

「あぁ、気にすんな。その代わり、バッツとカリーがどんな決断をしても二人を嫌いにならないでくれよ」

「「もちろん」」


 とりあえずみんなで宿屋へ移動し、その日は寝ることに。俺以外ね。


 もちろん俺は夜の繁華街へ遊びに行く。

 今日はまだ行った事のないお店、【アニマルハウス】へ。獣人の女の子が働いているお店。


 俺は羊の獣人の女の子を指名。ボンきゅっボンな体に全てを捧げ、至福のひと時。


「ロドニー様が私を指名してくれて嬉しいです。やっと会えました」

「やっと?俺って変な噂とかあるの?」

「やだ〜、変な噂どころか、ロドニー様の妙技を受けた女の子が嬉しそうに話すから、私もいつかロドニー様のお相手ができたらなと思ってたんです」


「そんなことが…」

「それに、ロドニー様ってクジラ君の開発者なんでしょ?もぉ私もクジラ君だけじゃ我慢できない体になっちゃった!!だから、また指名して下さいね」


 おぉ、クジラ君の開発者ってこともバレてるのか…だからなのか?最近繁華街を歩いていると、野郎どもからチラチラ見られて、


「おぃお前話しかけてこいよ」

「いやだよ、こぇぇよ」


 みたいな話が聞こえて来てるのは…

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