第27話 Sランクとアリアナ

 ある日のこと。

もはや日課となっているハージノ町冒険者ギルドのギルドマスター、ロドリゲスさんとの殴り合いをやっている。


「だいぶ良くなってきたじゃないか!!まただ行くぞ!!」

「そりゃぁ毎日やってますからね。ってかどんだけ硬い筋肉してるんですか?」

「そりゃぁ毎日ちゃんと鍛えてるからな。そう言えばお前Sランク冒険者になったぞ」

「え⁉︎ってそれ今言うことですか?」


 一旦距離をとって落ち着く。


「戦いの最中に何があっても大丈夫なようにな、わざと今言ったんだよ」

「正確悪いですよ」

「はっ。なんとでも言え。それでな。王都の冒険者ギルドのマスターが近々こっちに来るからよろしく」

「へぇ〜わざわざ来るんですか?」

「Sランクなんて滅多になるやついないからな。前も言っただろ、人間性とかも含めて、視察も兼ねてるんだよ」

「なるほど。ちなみに、Sランク冒険者って今は何人いるんですか?」


 話ながらさっと距離を詰めて回し蹴りをくりだす。


「けっ蹴りながら質問とかお前も正確悪いな」

「教えてくれる人に似たんですよ」


 殴り合いは続く


「冒険者ギルドが出来てから今までSランクになったのは10人だけだ。今現役で活動してるSランク冒険者は3人、お前を入れると4人だな」

「俺以外に3人か。まぁすぐにあと2人増えて全員で6人になりますね」

「あと2人ってあの2人か?」

「だってレッドドラゴン倒しただけでSランクになれるならあの2人も倒してますし」

「まぁそうだろうな」


 殴り合いも終わり、軽く体を拭いてると、


「よぉロドニー、久しぶりだな」

「ランスさん!!お久しぶりです。どうしてここに?」

「どうしてって、ルドさんの護衛だよ」

「あぁ。ルドルフさん来てるんですね。後で挨拶してこなきゃ」

「あぁ、それと話があるんだが、ちょっと良いか?」

「ん〜、なんか嫌な予感がするので断ってもいいですか?」

「なんでだよ!!いいから俺の話を聞いてくれ。飯奢るから」


 強制的に連れ去られる俺。


「俺に拒否権はないんですね…まぁ話を聞くだけ聞きます」

「悪いな」


 そう言ってギルドに併設してある食堂のテーブルへ。

 エールを2杯頼み、まずは乾杯。


「で、話ってなんでしょうか?」

「実はな、アリアナのことなんだけどな」

「………」

「聞いてるか?」

「聞いてますよ」


 やっぱりめんどくさい話か…


「あいつから言われたんだよ。お前と話がしたいから繋いで欲しいって。おまえら何があったんだ?」

「あの人に関わるのがめんどくさくなっただけです」

「だからなんでそうなったんだよ?」

「アリアナさんからどう聞いてるか分かりませんが全部話しますと…」


 俺は一緒にお酒を飲んだこと。次の日起きたら何故か一緒に寝てて、俺の勘違いでおっぱいを触ったこと。

 土下座して謝ったりとしたが、ゆるしてもらえず、そのまま俺はギルドには行かなくなったこと。

 久しぶりに会ったら、死んだのかと思った、生きてて残念だと言われ、もぉいいやってなったと。


「以上です。俺のこと死んでたらよかったのにと言ってくるような人に何をしろと?」

「……はぁ〜。そんなことがあったのか…」

「まぁそう言うことなので、俺は死んだとでも伝えて下さい」

「そこをなんとかお願いできないか?」

「無理です」


 話があるなら自分で来いよと言いたかったが、それを言うと本当に来た時にめんどくさいので言わないでおく。


「まぁそうだよな…」

「どうせ俺がSランクになるって知って今からでも仲良くしてやろうみたいな考えなんでしょうね」

「えっ、お、お前Sランクになるの?」

「まぁ、なんかレッドドラゴン倒したらSランクに推薦してくれました」

「やっぱり、レッドドラゴン倒したのお前だったか。誰が倒したんだって噂になってたからな」


 そう言いながらランスさんは2杯目のエールを注文。


「まぁギルドマスターに報告だけしてすぐにグランデの街を出ましたからね…」

「そうだ。うちのメンバーがよ、お前に会うの楽しみにしてたんだよ。実力が上がったのを見て欲しいってな」


 そう言えば蒼炎の皆さんにも色々と教えていたな。


「なら、明日にでも手合わせしますか?僕もそうですけど、あの2人にもいい経験になるかと思うので」

「あの2人?」

「ルドルフさんの護衛任務の時に助けた子供達です」

「あ〜あの2人か!!まさかこんなとこまで一緒に来てるとはな」

「あれからずっと一緒に行動してまして、かなり強くなりましたからね。油断したら負けますよ」

「そんなにか⁉︎」

「まぁ2人ともレッドドラゴンで遊べるくらいの実力はありますよ」

「冗談じゃぁない…よな?」

「そうですね。やってみれば分かりますよ」


 その日はそのまま家に帰り、みんなに明日、蒼炎の皆さんと手合わせをすることになったと報告。カリーは少し不安そうだったが、父さんから君なら大丈夫と言われて少し安心したみたいだった。明日は俺も頑張ろう。

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