第26話 アーバイン伯爵家

 到着しました。アーバイン伯爵の豪邸。

門番の人がルドルフさんを見るとすぐに門を開けて中に通してくれた。

 家の扉の前には執事が待っていて挨拶をしてくる。


「お待ちしておりました。ルドルフ様とロドニー様ですね。私、執事のアンソニーと申します。ではこちらへ」


 そう言って歩き出し、応接室みたいな部屋に通される。


「ここでしばらくお待ち下さい」


 部屋の中には綺麗なメイドさんがいて紅茶を淹れてくれる。俺は紅茶より、コーヒーがいいんだよな〜。

 そう言えばこの世界でコーヒーって飲んだことないよな…なんてことを考えていると部屋に入ってくる人。俺は思わず立ち上がる。


「ルドルフ殿、わざわざすまんな。そちらがロドニー殿か?」


 がっしりとした体格、身長180センチほどで、整ったヒゲにオールバック。威厳があるが、どこか優しさもある不思議なオーラをもった人だ。


「そうじゃの」


 ルドルフさんがこちらを見てくる。


「はい。私が冒険者のロドニーです」

「そうか。私はルーク・アーバイン。まぁまずは座ってくれ」


 座るタイミング分からなかったから声かけてくれてよかった〜。


「それで、君がレッドドラゴンを倒してくれたと聞いている。間違いないな?」

「はい。冒険者ギルドからの依頼で討伐しました」


 ギルドマスターから領主の兵では不安だからお願いされたって言うのは何か言えない。


「そうか」


 領主様はそう言って立ち上がり俺に向かって頭を下げた。


「ありがとう!!」

「えっ⁉︎いや、あのそんな。僕はギルドからの依頼をこなしただけなので…」


 こんなに真っ直ぐにお礼を言ってもらえるとは思ってなくて動揺する…。なんか上から目線で、礼を言う。くらいで終わると思ってたのにな。


「いや、君は息子と兵たちを救ってくれた。君がいなかったら息子と兵たちは全滅していたであろう」

「あの、失礼ですが、一つお伺いしてもいいですか?」

「かまわん」

「全滅すると分かってたなら何故向かわせたのでしょうか?」

「街を守るためだよ。それ以外のなんでもない」

「そうですね。分かりきったことを聞いてしまいました。申し訳ありません」

「いやかまわん。本当は私が行きたかったのだがな…」


「ふぉっふぉっふぉ。そういえば伯爵様、新しい魔道具を作ったのじゃが、そちらの話もして良いかの?」

「おぉ。そうだったな。ルドルフ殿。その前に、ロドニー殿、息子のルイスが会いたがっている。違う部屋を用意するからそちらで息子と会ってやってくれぬか?」

「あ、はい」


 会いたくないけど断ることもできずに、執事のアンソニーさんに連れられて違う部屋へ。

 案内された部屋に入るとすでにルイスが待っていた。


「やぁロドニー君、よく来てくれたね」

「あ、はい」

「こちらに来て座りたまえ」


 素直に勧められたソファーに座る。


「君に会いたかったのはね。色々と誤りたかったんだよ。初めて会った時から僕は君の実力も分からず、失礼な態度をとってしまった。本当にすまなかった」


 立ち上がって頭を下げてくる。

 このアーバイン家の人というのはなんなんだよ。びっくりするくらい簡単に頭を下げてくる。正直このルイスは嫌いだが、こんなに素直に謝られてはどうしようもない。


「頭を上げて下さい。僕のことを心配しての行動だと理解してますので」

「そう言ってくれるとありがたい。それともう一つ話があってね…とその前に…」


 ルイスは部屋にいるメイドに目配せをするとメイドは分かったかのように部屋の外へ出る。


「ここからする話は誰にも聞かれたくなくてね」

「な、なんか怖いんですけど…」

「ロドニー君。この通りだ!!サマンサさんに俺を許してくれるように言って欲しい!!」


 今度は綺麗な土下座である。

 俺はソファーに座って、伯爵家の人が土下座してる…サマンサ?


「あ、あの、サマンサさんって、あの夜の蝶のサマンサさんですか?」

「そうだ!!この通り!!どうか!!」

「あの、話が分からないのですが、説明して下さい」


 どうやらルイスは夜の蝶のサマンサさんがものすごくお気に入りで、何故かここ最近冷たくされている。理由を聞いたら俺を困らせたからとサマンサさんが言ってたと。


 何故ロドニーを困らせたらダメなのか聞いたら、俺がクジラ君の開発者で夜の世界に革命を起こしたからだと。

 もし、俺がこの街のことを嫌いになって、出て行ったら夜の蝶の女の子たち全員ロドニーの居る街で働くと言ってもおかしくないと言われたとのこと。


 たしかに、俺、サマンサさんにこの人(ルイス)の愚痴を言ったな…

 俺ってそんなに好かれてたんだな。お金ありきの関係とは言え、なんだか嬉しいよ。

 ってかこのまま行くと俺って彼女作ったら夜の蝶の女の子に嫌われてしまうのか?


「なるほど。話は分かりました。許してあげてとは言えないですが、ルイス様と仲直りしたとだけ伝えておきますね」

「ありがとう!!ほんとにありがとう!!」


 その後は冒険者の話や、今後この街でお店を開くかもしれないことなどを話した。

ルイスが言うには貴族が気軽に行けるお店は少ないらしく、どうせなら貴族をターゲットにしたお店にしてはどうかと意見をくれた。


 貴族をターゲットか。何かあったら領主様との繋がりもあるし、意外と良いかもしれないな。


 なんだかんだでルイスと仲良くなり、アーバイン伯爵家を後にする。

 その日の夜、夜の蝶へと行き、ちゃんとサマンサさんにはルイス様と仲直りしたと伝え、しっかりとサービスしてもらった。

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