第41話 ロドリゲスさんって強かったの?

 王都から馬車で半日のダンジョン。

基本的にダンジョンに名前は無いみたいなのだが、王都から近いと言うこともあり、ここのダンジョンはキングトンダンジョンと呼ばれている。


 推奨レベル50。前回潜ってたダンジョンが推奨レベル25だったから単純に倍の難易度ということかな?


 とりあえず入り口で冒険者カードを見せ、ダンジョンに入る。

 入り口のギルド職員がSランクカードにびっくりはしたが、何も言われず、すんなりと入れた。多分リンダールさんが言っておいてくれたのかな?


 なにはともあれ、無事にダンジョン内へ。

地図も買ってあるのですんなり進む。このダンジョンは50階層まであり、ダンジョンボスはブラッドオーガとのこと。


 ブラッドとは、希少種のことで、魔物同士で殺し合い、上位ランクに進化した魔物のことらしい。実際に見たことが無いのでよく分からないが、オーガキングとは違い、ブラッドと名前が付く魔物は特殊個体で、キングの上に位置付けられる。


 なかなか楽しめるダンジョンと期待しながら1階層の攻略を進める。

 1階層は比較的初心者でも大丈夫なウルフ系のモンスターがメインだったので、さっさと下の階層に潜ることに。


「久しぶりに魔物と戦うけど、人間と違って攻撃が直線的なのは面白くないぞ」


 バッツが不満をもらす。


「まぁそうよね。今回ばかりは私もお兄ちゃんと同じ意見だけど、油断は禁物だからね」

「あぁ。俺もマギーさんにうるさいくらい言われたからな。大丈夫だ」


 この二人まだレベル25とか22なのに、推奨レベル50のダンジョンの31階層の魔物相手に余裕ぶっこいてるな…


 今相手にしてるのはマッドゴーレム。

普通のゴーレムよりドロドロしていて、物理攻撃が効きにくく、魔法も吸収されるという、一般的な冒険者からしたら逃げの一択の魔物である。


「もぉこのドロドロ飽きたよ」


 そう言いながら魔力を纏った剣でぶった斬っていくバッツ。


「お兄ちゃん、泥が飛び散るから倒さないで!!服が汚れるじゃない。ここは私が倒すからじっとしててよ」


 服が汚れるから倒すなって…どこのお母さん?よほど服が汚れるのが嫌なのか?

 バッツより先にマッドゴーレムを倒すと言わんばかりに氷魔法でマッドゴーレムを凍らせていくカリー。


 俺?何もしてないよ…強いて言うなら、洗濯係?バッツとカリーの汚れた服にクリーンをかける係を頑張っています…


「あの、二人とも、俺もレベル上げしたいから、たまには俺にも魔物を…」


「「嫌だ!!」」


「え〜。二人ばっかり強くなるじゃん」


 このパーティーのリーダー俺だよね?

 俺いじめられてる?なんかしたかな?


「全力のロドニーに勝てる未来が見えないから、このダンジョンは俺達に任せて欲しい。俺はロドニーの横に、本当の仲間になりたいんだよ!!」

「私も。ロドニーの仲間になるためにはもっと頑張らないとダメなの!!」


「お前ら…」


 って俺そんなに強いって思われてるの?

 まぁ女神様の加護?みたいなのがあるけど、魔力量でゴリ押ししてるだけだから…二人が怖い……


 そんなこんなでやってきました49階層と50階層の階段。

 ここだけ49.5階層みたいな感じで、ボス部屋の前の階段は広くなってて、そこで休めるみたい。


「いや〜推奨レベル50って聞いてたから少し身構えてんだけど、弱いじゃねぇか!!」

「お兄ちゃんの言う通りね。なんか緊張して損した気分」


 魔物が弱くてクレーム出してる二人。


「それだけ俺の両親との修行がすごかったってことだよね?」

「「たしかに!!」」


 ちなみに、ここまで来るのに2日。

普通は1ヶ月くらい潜るつもりでダンジョンに挑むらしい。


 20階層、40階層と街が存在して、武器のメンテナンスや食料調達もできるようになっている。


「どうする?ドルクさんに頼んだ武器が完成するまでまだまだ時間あるけど?」


お前ら少しはペース考えろよな…


「このままブラッドオーガにチャレンジしてもいいんじゃないか?」

「私も賛成。さっさと倒してレベル上げのルーティンにしましょ」


二人は久しぶりに魔物を倒したせいか、人間以外と戦ったせいか、ノリノリである。


「あの、そう言うことなら、まずは俺にブラッドオーガ倒させてくれません?」


 こいつらばっかり魔物と戦ってずるい!!

 ってか二人に丁寧語使う俺って…


「どうせ何回もここのボス倒すんだろ?だから良いよ。お前がどこまで強くなったのか、俺はあとどれだけ強くなれば良いのか見せてくれ」

「今までロドニーに我慢させてたから私も良いよ。でも本気でやってよね?」


 やっと俺が戦えるよ…

 キングトンダンジョンのボス部屋に入ると現れたのは情報通りのブラッドオーガ。


「ブラッドオーガとか知らないけど、今までの俺の修行の成果と、ストレス発散に付き合ってもらうからよろしく」


 普通のオーガとは違い、真紅色のオーガ。色が濃ければ濃いほど強いらしい。

 返り血を浴びた量ってことかな?


「まず、お前が本気で戦うに値する相手か見極めさせてもらうよ」


『ガァァー!!!グギィャ!!』


 ブラッドオーガが右ストレートを繰り出してくる。


「バッツとカリーがクレームを言うのも分かったよ。確かに弱い」


 俺は片手でブラッドオーガの攻撃を受け止める。ロドリゲスさんに比べたら軽すぎる攻撃にびっくり。

 いや?もしかして、ロドリゲスさんって強かったのか?


 完全にロドリゲスさんの下位互換のブラッドオーガに対して興味を無くした俺。

 さっさと倒そうとロドリゲスさん相手に練習してた技を試す。



「悪いけど、お前弱すぎ」


 俺は指を鳴らす。【🎶パチン〜パチン🎶】


 俺の指の音に反応したブラッドオーガが、ヨダレを垂らしながら動かなくなる。


『だぁ〜…』

「え?何が起きたんだ?」

「お兄ちゃん、これは何かの魔法。精神に届く何か…でも分からない」


「簡単に言うと、このブラッドオーガを音の魔法で薬物中毒にしたって感じ」


 ん?何が起きたのか分からない二人。


「「薬物中毒?」」

「えっと、精神的に物事の理解が出来なくした状態ってこと」


 ヨダレを垂らし続けるブラッドオーガ。


「何が起きたのか分からないけど、これも魔法なんだよね?」

「カリー。そうだよ」


 俺はかる〜く二人に同じ魔法をかける。

【🎶パチン〜パチン🎶】


「解除」

「「!!!!!」」

「今のなんだ?」「精神攻撃…でも防げない」

「さっきの感じがず〜っとあのブラッドオーガに続いてるんだよ」


 自分で魔法を体験して納得する二人。


「ちなみに、ロドリゲスさんには効かないんだよね。あの人、脳みそも筋肉だから、気合いでこの魔法を解除するんだよ…」


【気合いでどうにかなる魔法じゃねーよ】


 気のせいか二人の顔にそう書いてある。

とりあえず、薬物中毒状態のブラッドオーガをスパッと切ってダンジョンクリアっと。

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