第40話 ギルドマスターの許可
リンダールさんが直々に紅茶を淹れてくれ、出してくれた。りんごっぽい味でほのかに甘い。この世界では初めて飲む味だ。
「私、これ好きです。美味しい」
「カリーさん、気に入ってくれてなによりです。よければ茶葉の売ってる所をご紹介しますよ」
「是非!!」
カリーのテンションが上がるのって珍しいな。紅茶が好きなのか。覚えておこう。
「ところで、竜の息吹はしばらく王都で活動するのですか?」
「とりあえず来てみただけなので、ちゃんと決めてはいませんが、しばらくは観光がてら王都にいるつもりです」
「王都は広いですからね。楽しんで下さい」
「ちょっと聞きたいのですが、このあたりでダンジョンってありますか?」
「ダンジョンですか?一番近いダンジョンですと、ここから馬車で半日のところに、推奨レベル50のダンジョンがありますよ」
「推奨レベル50のダンジョンですか!!面白そうですね」
「あはは。ダンジョンを面白そうと言う人は初めてですよ」
まぁ普通なら命の危険があるからな…
「最近魔物と戦ってないからな!!今の実力を試すのとレベル上げには丁度いいんじゃないか?」
バッツが乗り気で言う。
「ダンジョンからは貴重な資源が取れますからね。この街の冒険者のほとんどはダンジョンに潜る毎日ですよ。あと、少し離れますが、馬車で7日ほどの所にも同じく推奨レベル50のダンジョンがあります」
ダンジョンの近くに街が栄える法則みたいなのがこの世界にもあるのかな?
「なるほど。ちなみに、この世界で一番難易度が高いダンジョンってどこでしょうか?」
「この世界は4つの国に分かれてるのはご存知でしょう?4つの国の丁度真ん中に推奨レベル不明のダンジョンがありますよ」
「推奨レベル不明?」
「まだ誰もクリアできてないダンジョンなんです」
「おおーー!!ロドニー、俺たちが最初にクリアした冒険者になれたらいいな」
バッツも男の子だな。まだ誰もクリアしたことの無いダンジョン。たしかに心が踊る。
「あぁワクワクするなバッツ。世界を旅した最後の目標にするのも面白いかもな」
「ん〜私はちょっと不安。だってまだ誰もクリアしたことないって、どれだけ強い魔物がいるの?」
「そうだな。今よりもっともっと強くならないと。その為にもレベル上げもしたいな」
レベルは関係ない訳ではない。上げて損はないのだから上げれるだけ上げておきたい。
「リンダールさん、あともう一つ聞きたいのですが」
「なんでしょう?」
「ソロでAランク冒険者のザックは、どう言った冒険者なのでしょうか?」
あぁ〜と額に手を当てて、少し呆れた顔をするリンダールさん。
「もしかして、何かありました?」
「実は…」
リンダールさんに、ついさっきの出来事を伝える。
「っふぅ〜。ザックは実力はあるんですけどね、態度が悪く、他の冒険者からもあまり良く思われてないんですよ…」
「それで、確認なのですが、Sランクの僕にケンカを売ってきたんですよね。次、何かあったら潰しても問題ないですか?」
満面の笑みで質問する。
「…ロドニー君、怖いです」
「問題ないですよね?」
満面の笑みで近付く。
「…できれば、命だけは取らないであげて下さい」
「できたら。そうします」
「…お願いします。あと、伝え忘れてたのですが、次回から王都に入る時は貴族用の入り口からで大丈夫ですよ。Sランク冒険者は特別なので」
「そうだったんですね。分かりました」
それから色々オススメのご飯屋さんとか教えてもらい、ギルドマスターの部屋を後にした。
「バッツ、ギルドマスターからザックは潰しても良いって許可もらったからな。次は我慢しなくていいぞ」
「あぁ!!やっぱお前もキレてたんじゃねぇかよ」
「当たり前だろ。女の子に暴力を振る男はこの世から消す」
「…なんか怖ぇよ」
「私も次は油断しないから。私がやる前に潰さないでよね!!」
めずらしくカリーも怒っている。
「とりあえずだけど、装備を揃えたら近くのダンジョンに潜る?」
「そうだな!!ダンジョン行こう!!」
「私もダンジョンで良いよ」
「決まりだな。じゃぁポールさんに教えてもらった鍛冶屋さんに行くか」
ポールさんが教えてくれた鍛冶屋は王都の端っこにポツンとある所だった。
「ここで合ってると思うんだけど…」
「これ本当に鍛冶屋か?看板もねぇぞ?」
バッツの言う通り、ただの家にしか見えない。しかし、近付くとハンマーで金属を叩く音が聞こえる。
「すいませ〜ん!!」
入り口にノックするやつとか、ピンポン的な物が無かったので、とりあえず叫ぶ。
「すいませ〜ん!!!!!」
「なんだぁ〜うるせぇな!!」
「あっすいません」
中から出てきたのは、身長1mほどで筋肉ムキムキ、アゴヒゲが腰の下まで伸びているが、リボンで上手くまとめているドワーフ。
「あの、ワーグ商会のポールさんに聞いて来たのですが、ここってドルクの鍛冶屋ですか?」
「あいつの紹介か、ここで合ってるぞ。入れ」
中に入ると色んな武器や防具が散らばっていて、とてもお店とは思えない。
「で、なんの用だ?」
「武器と防具を探してまして…」
「見たら分かると思うが、うちは店なんてやってねぇ。全部特注で作ってるだけだ」
「特注ですか…」
「材料もってきたら好きなもん作ってやる」
そう言うことか。材料ね…
「あの、このドラゴン使えます?」
「ドラゴンだと!!嘘だろ?」
俺はアイテムボックスからレッドドラゴンをチラッと見せる。
「ほほほほほ、本物じゃねぇか!!!!!」
「これは材料になりますか?」
「おめぇ何者なんだ?」
「Sランク冒険者です」
「Sランク⁉︎…冗談では無さそうだな。ドラゴンなんてそこらへんの奴は持ってるはずねぇ。それに、アイテムボックスか…お前のこと信じるぜ」
Sランクになってからアイテムボックスが使えることを隠さなくなった。
アイテムボックスを見せたらサニーさんにギルドマスターの部屋に連れ込まれた過去が懐かしい。
一度外へ出てレッドドラゴンを全部出して見せ、相談の結果、爪はバッツの剣、鱗で三人の防具、魔石でカリーの杖を作ることに。
ドルクさんが、ドラゴンの素材なんて、滅多に触ることがないからとタダで作ってくれると言いだした。
さすがに申し訳ないので、ドラゴンの肉と、余った鱗は全部あげることに。
そのおかげか、ドルクさんのやる気がUP。
全部出来上がるのに2週間欲しいとのことだったので、2週間後にまた来る約束をして、俺達はその間、軽くダンジョンに潜ることにして、その場を後にした。
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