第42話 バッツとカリーの実力
ブラッドオーガを倒すと、魔石とオーガの角がドロップ。オーガの角って何かに使えるのかな?
「なんか、推奨レベル50のダンジョンも簡単に攻略できちゃったな…」
「次は俺にやらせてくれ」
「なら私は、お兄ちゃんの次ね」
ボスまですぐに行けて、目立たないところに転移魔法陣を設置。一度部屋を出たらすぐにまたボスがリスポーンするから便利なんだけど、転移が使えない人はまた戻るのめんどくさいだろうな…
魔石で転移できる魔法陣作って冒険者ギルドに売るか?出来たらリンダールさんに売り込みに行こうかな…
ボス部屋に入り、今度はバッツが戦う。
「よし。まずは様子見だな」
バッツはアイテムボックスから剣を2本取り出す。
「あれ?バッツって双剣使えたっけ?」
「最近、お兄ちゃん色んな武器を集めるのと、色んな人の戦闘スタイルを真似するのが趣味になってるの」
戦闘スタイルを真似するのが趣味って…
「双剣ってことはローラの真似か」
「お兄ちゃん、真似する時は、体のパーツごとに身体強化率を変えてるの。武器の扱いだけでなく、真似する相手の肉体から真似するんだって」
なにその変態じみた真似の仕方…
バッツは危なげなくブラッドオーガの攻撃をかわし、小さい傷を付けていく。
『グァッ、グギィ』
ちょこまかと動く相手に大振りの攻撃をしてもダメだと判断したブラッドオーガ。全体的に小さく動き、しっかりとバッツの動きを見ながらカウンターを当てにいくスタイルに変更。
「へぇ〜、おまえ意外と考えてるんだな、魔物ってもっと単純な生き物だと思ってたよ。そろそろ双剣の使い方も慣れてきたし終わりにするぜ!!」
バッツの魔力が上がる。
ローラの肉体を真似してた身体強化率から、自分が思う双剣の最適な身体へと変える。
「っしゃぁ!!」
〜ここからブラッドオーガ視点〜
人間の空気が変わった?さっきまでの相手と違う…このまま突っ込むと殺られる。
そうしてオデは一旦距離を取ることに。
「逃げてんじゃねぇぞ!!」
そう言って人間が魔力を纏った剣を一本、オデの顔目掛けて投げてきた。
あれに当たるのはやばい。防御しても腕の一本は持っていかれる…
幸いなことに距離がまだあるからな。ここは冷静に避けるか。
そう。オデの判断は間違ってなかったはずなんだ。ただ…一瞬、剣を避けるために人間から目を離したんだ。
『アレ?人間がいない…どこだ?』
スパっ
『アレ?なんでオデの体が見えるんだ?アレ?オデ、首が……』
〜ロドニー視点に戻ります〜
「すごいぞバッツ。最後ばっちり転移決めたじゃないか!!」
「あぁ。相手が距離を取ってくれたからな、ここだ!!って思ってよ」
究極の2択だな。避けずに防御してたら恐らくブラッドオーガの手は無くなっていただろう。それが出来るだけの魔力量が、あの投げた剣には纏ってあった。
ブラッドオーガもそれが分かったのだと思う。でも、避けるためにバッツから目を離した瞬間、バッツは自分の投げた剣目掛けて転移。そのまま後ろからブラッドオーガの首をスパッと。
転移先は自分の魔力を纏った剣。ポインターの役割として、これ以上はない。よく考えたな。
今回もドロップしたのは魔石と角。さっと回収して部屋を出る。
「次はカリーの番だな」
「私はどうやって倒そうかな〜。楽しみ」
結論から言おう。
カリーのブラッドオーガ討伐は残酷なものだった…
その時の状況はこうだ。
ブラッドオーガの周りにカウンター結界を展開。そう、結界を壊そうと攻撃すると自分に跳ね返ってくる。カリー曰く、魔法も全て跳ね返すように作ったとのこと。
つまり、ブラッドオーガは絶対に出られない結界に閉じ込められたと言うこと。
それを理解したブラッドオーガは攻撃を辞め動かなくなった。
「あらら?もぉ諦めるの?もっと頑張りなさいよね。仕方ない、じゃぁ私から攻撃するね」
そう言いながら、色んな魔法をブラッドオーガに向かって放つ。
「なぁバッツ、カリーのあの結界、どうやって攻略すればいいと思う?」
「正直、閉じ込められた時点でアウトだな…俺には無理。こっちは攻撃できないけど、あっちの攻撃は通るって恐ろしすぎる結果だぜ」
俺とか父さんなら結界の主導権を奪って…でも時間かかりそう…
「あははっ。オーガさん、避けないの?もう一発いくよ?ほ〜ら」
カリーが笑いながらブラッドオーガを虐めてる光景が続く。
最終的にブラッドオーガは自分の心臓を自分で貫いた…そう自分から命を…
「あら?な〜んだ。面白くない。ダメよ?ちゃんと私のやりたいこと全部やるまで死んじゃ」
ブラッドオーガの周りに白い光が。
あら不思議、みるみると回復していくブラッドオーガ。
「なぁ、バッツ…カリーってあんな性格だったかな?」
「ロドニー、お前には言い辛いんだが…カリーがああなったの、多分マギーさんのせい」
「えっ、母さんのせい?」
バッツは魔法はあまり得意ではないが、魔法使いを相手にした時にどう立ち回ればいいかを俺の父さんに相談。自分は苦手でも知識として知ってた方が絶対に良いからと。
それからカリーも俺の母さんに戦い方の相談をするようになったんだとか。
それ以降、徐々にカリーの性格が俺の母さんに似てきたと言うことらしい。
「そう言えば町を出る時、父さんがカリーに俺のことよろしくって言ってたな…もしかして冗談じゃなく本気だったのかな…」
「ロドニー、まじでカリーだけは怒らせたらやばいからな。気を付けろ」
「あはは…」
笑えねー。
一通り試したい魔法を試せたカリー。
スッキリとした顔で戻ってきた。
「か、カリー、おつかれ」
「二人でなんの話してたの?」
「えっ。あぁ、あの結界に閉じ込められたらどうやって攻略するかを話してたんだよ」
「あぁ、二人なら転移で出れるじゃない?」
「転移ね。ってことは空間魔法はカウンターできないってこと?」
「そう。ロイルさんと一緒に色々考えたんだけど、どうしても無理だったの。空間魔法で結界ごとえぐり取られちゃって」
なるほど…
「それなら、空間魔法だけ阻害するように改良してみたら?」
「やっぱりそうなるよね。今考えてるんだけど、難しくて…」
気のせいか、ザックがあの結界に閉じ込められる未来が見えたような…
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