第8話 トラブル

 今日で護衛任務5日目。

ちょうど折り返し地点と言う感じだろうか。

 周りの景色と出てくる魔物も少し変わってきてるから遠くに来たのだなと感じている。


 ここ数日でルドルフさん、蒼炎の皆さんともだいぶ仲良くなり、リーナさんとライラさんには俺が魔法を教え、代わりにランスさんとエンリケさんに近接戦闘を教えてもらっている。


 近接戦闘では、やはり技術が足りてないのか、蒼炎の男性陣に勝てない…

 身体強化ゴリ押しなら勝てるのだが、技術を身につけるのが目的なのでやってない。


 今日の夜は小さな町に泊まることになっている。どんな町なのか少し楽しみだ。


「うわぁーーー!!」


 どこからか悲鳴が聞こえてきた。

 さっそく探知をする。


「魔物に襲われてますね。どうしますか?ランスさん」

「そうだな。ルドさん、どうしするよ?」

「そうじゃの。ワシはここで少し休憩しておくから行ってくれ」


 あくまでも依頼は護衛、護衛する対象から離れる訳にはいかないからランスさんはルドルフさんに確認したのか。


「なぁロドニー、魔物は何体だ?」

「1体です」

「よし、ロドニー、俺と一緒に来い。あとのメンバーはルドさんから離れるなよ」


 俺とランスさんで急いで向かう。

探知を続けているが、襲われてる人は恐怖からなのか動かない。魔物のほうがゆっくりと近づいていっている。


「ランスさん、このままだと間に合わないかもしれません。魔法で先に殺っちゃいますね」


 俺は風魔法ウインドランスを魔物に向かって放つ。


 見事に命中。


 現場に到着すると、そこには大きなクマみたいな魔物と男の子がいた。


「おい坊主、大丈夫か?」


 ランスさんが話しかけるが、子供は気が動転してるのか返事がない。


「おい坊主!!」

「えっ⁉︎あっ…」

「ケガはないか?」

「ケガ、だ、大丈夫…」

「それにしても坊主、お前一人でなんでこんなとこにいるんだ?」

「…あ!!」


 男の子は何かを思い出したかのように走り出した。


「おい待て!!」

「くっ離せよ!!妹が!!妹が!!」

「妹⁉︎どう言うことだ⁉︎落ち着け!!」

「妹が拐われたんだ!!助けに行かないと」

「くそっ。面倒なことになったな」


 なるほど。拐われた妹を助けに飛び出してきたと…ざっと周りを探知してみると男の子が走り出した方向に人の反応が5つ。


「ランスさん、僕がこの子の妹を助けに行っても良いですか?この先に、たしかに人の反応があるんですよね」

「何言ってるだロドニー。ダメだ。一人では危険だ」

「ではどうしますか?この子、ほっといたら間違いなく妹を助けに行くし、絶対に死にますよ?」

「そうだな…でも…」

「なら全員で行きましょう。行きますよ」


 俺はランスさんと男の子を空中に浮かし、反応のある方へと一緒に飛んで行く。


「ちょ、おぃ、えっ⁉︎と、飛んでる⁉︎」

「えええええーーーー!!!」

「君、ちょっと静かにして」


 反応のあるところの近くで降り、慎重に近づくと馬車を発見。


「ロドニー、お前、実は王様直属の魔術師とかじゃないよな⁉︎」

「あはは。違いますよ。そんなことより…えっと」


 俺は男の子を見る


「俺はバッツ」

「バッツね。一応このへんだとあの馬車しか人の反応が無かったんだけど、あの馭者に見覚えは?」

「あんなやつ知らない」

「ん〜それは困った。なら中の会話を聞いてみるか」


 馬車の下に魔法陣を飛ばして貼る。自分の目の前に小さな魔法陣を出すと、あら不思議、馬車の中の声が目の前の魔法陣から聞こえてくるではありませんか!!魔法って便利だね!!


「アニキ、こいつぁ誰に売るんです?」

「一人は売り先が決まってるが、もう一人はオークションに出してもいいかもしれねぇな。結構高値で売れるだろ」

「あぁなるほど」


「うぅ…お兄ちゃん…」


「カリーの声だ!!」

「当たりってことだね。なら遠慮はいらないか。ランスさん、バッツのこと見てて下さい」


 土魔法で馬車の前に壁を作り、馬車を停止させる。そのまま荷台の布?ビニールハウスみたいな形のやつを風魔法で飛ばす。


 中には女の子が二人。


「とりあえず男どもをどうにかするか」


 男3人を空中に浮かして無力化


「えっ?か、体が!!」

「おぃどうなってやがる!!」

「あ、アニキ!!助けてくだせぇ」


 何やら騒がしいが無視。

ランスさんとバッツを呼ぶと空からナイフが飛んできた。


「おっと危ない。そうか、浮かすだけじゃなくて、手足の自由を奪わないとダメか。次から気を付けよう」


「お兄ちゃん!!」

「カリー!!」


 気になるのはもう一人の女の子。

 そっちにはランスさんが行ってくれた。


「おい大丈夫か?」

「……わたし、助かったの?」

「あぁもう大丈夫だ」

「う…う…うわーーん」


 助かったと分かって安心したのか、女の子は急に泣き出した。怖かったんだな…


「ところでランスさん、こいつらどうします?」

「町にいる衛兵に突き出すか。どっちにしろルドさんにも相談だな」


 男ども3人を土魔法で作った球体に閉じ込め、風船みたいにしてもっていくことに。

一応空気穴を開けることも忘れていない。


 幸いにもルドルフさんたちの馬車からそんなに離れていなかったのですぐに合流することができた。

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