第47話 昔は可愛かったのに…

 王都から離れた方のダンジョン。ここも推奨レベル50。ボスはエンペラーリザードと、リザードマンが複数出るらしい。ボス部屋で魔物が数体出るのは初めてだな。


 ここも最深部は50階層。まずは20階層の休憩ゾーンにある町を目指すことに。

 転移がないから、ある程度の階層で色々補給ができるように小さな町がある。


 出てくる魔物はリザードマン系で、厄介なのがポイズンリザード。うちのパーティーに毒は無意味だが。このダンジョンは強さというより、他の要因で推奨レベルが高いみたい。


「なんかザコばっかで面白くないな…」


 バッツがため息をつきながら言う。


「状態異常を使ってくる魔物が多くなるから、油断してると簡単に殺られるぞ」

「カリーが魔法で状態異常無効にしてくれてるからな…よし、俺も自分で出来るように練習しながら行くよ」


 そう言ってカリーに魔法を解かせるバッツ。


「お兄ちゃん、危険だと思ったらすぐに言ってね」

「あぁ。その時はよろしくな」


 そこで俺は、ふと思いつく。


「そう言えばカリー、バフとデバフの魔法って何か使える?」

「ばふ?でばふ?」

「あぁ〜っと、味方の能力を上げる魔法だったり、逆に敵の能力を下げる魔法」

「考えたことなかったわ。味方の能力を上げるのは…あなた達には要らないわね。敵の能力を下げるやつを考えてみる」


「俺がブラッドオーガにやったやつもそうなんだけど、意外と使えるからな」

「たしかに、あの魔法は恐ろしかったわ」


 そんなこんなで、それぞれ考えながらダンジョンを潜っていく。


 しばらくすると、カリーが魔法を考えたので、さっそく試してみることに。


「えっと、まずは、麻痺をやってみる」


【ドーーーン!!】


「あれ?加減が難しいわね」

「カリー?それ、麻痺じゃなくて、思いっきり雷落ちてるんだけど?」

「だって、麻痺って雷を弱くしたら出来るんじゃないの?」

「イメージとしては分かる…」

「もう少し違うの考えてみるわ」


 デバフって具体的なイメージが難しいからな…


 20階層にある小さな休憩できる町に着いた。簡単な食料と、寝るとこがあるくらいだが、こう言う町に転移ポイントがあると便利なんだろうな…


 その後も色々と試したいことをやって、ダンジョンの奥底へと進んでいく。


 バッツはポイズンリザードの毒をなんとか無効化できるように頑張っていた。

 戦いながらだと、魔法の効果が無くなった時には遅いので、効果が無くなる前に重ねがけをする必要がある。


 そしてバッツはそれをよく忘れる。


 カリーは麻痺のイメージが難しいみたいで諦めて、スリープの魔法を練習。夜にバッツ相手に練習してた。


 二度と起きて来なかったらどうしようかと不安だったが、イメージしやすい魔法はすぐに使いこなせるようで一安心。


 そしてボス部屋の前。


「どうする?今回のボスは複数いるみたいだから、とりあえずみんなで倒す?」

「そうだな。それか、カリーの結界で相手の技を見てからでもいいかもな。俺もリザードマンの動きはコピーしてみたいし」


 なにそれ。人間では満足できず、魔物の動きまでコピーしようとか、変態だな。


「私はどっちでもいいわよ」

「なら、カリーの結界で閉じ込めて、バッツがコピー、俺はカリーの結界に入らなかったやつがいたら倒すよ」

「「了解」」


 ボス部屋を開けて中に入る。

情報通りエンペラーリザードが1体。キングリザードは5体だった。


 エンペラーリザードは後ろの方でゆっくりと構えていて、キングリザードに命令を出している。


「魔物で統率とられたら結構嫌だな」

「カリー、結界はどうだ?」

「ちょっと広がり過ぎてるわね。エンペラーリザードと、キングリザード2体は閉じ込められるから、残りの3体をお願い」

「りょうか〜い」


 試したかった魔法でも使うか。


「ソニックウェーブ!!」


 音の波動をぶつけてみるだけ。

ただ、キングリザードは何かに押しつぶされたような感じで潰れて弾けた…


 まじか…


「うぇ。ロドニー、お前の魔法怖ぇ〜よ」

「ごめん…」


 誤りながらも残りの2体をさっと殴って片付ける。音攻撃は基本的に近距離がいいかもな…飛び散って周りの人にかかったら迷惑だしな…


 その後、エンペラーリザードと、キングリザード2体の動きを懸命にコピーするバッツ。


 筋肉がどうのこうの言いだしてる…

 あれ?俺の仲間ってこんなんだったかな?

 昔の可愛かったあいつらが懐かしい…


 その後はまもちろん、バッツとカリーの遊び相手になって朽ち果てる魔物達。


 俺はレベル上げ程度に魔物を倒し、残りの時間は使役魔法を考える時間に当てた。


 魔石の転移魔法陣は、カリーが上手いこと消費魔力を削減することができて、実用的になったことで、ダンジョンから王都に戻った時に、リンダールさんに相談。


 世紀の大発明だと大喜びしてくれて、さっそく全世界のダンジョンへ設置できるように動くとのこと。


 この功績でカリーはSランク間違いなしと言われ、妹に先を越され悔しがるバッツだったが、どうせいつかお兄ちゃんもSランクになるんだから一緒でしょと説得されていた。


 転移魔法陣のアイディアは俺だが、俺だけでは、消費魔力の問題を解決出来なかったと思うので、カリー一人に功績を譲った感じだ。


 この発明のおかげで、また莫大なお金が俺たちに流れ込んでくることに…


 バッツとカリーはお金をどうやって使うか迷っていたが、素直に欲しい物や、やりたい事に使えば?と言った。


 ロドニーは何に使ってるの?と聞かれたので、飲み食いと、グランデの街の皆んなの給料に使ってるとだけ言っておいた。嘘ではないから…


 バッツは珍しい鉱石とかをオークションで買って鍛冶屋に武器作りを依頼。

 カリーは世の中の珍しい魔石をオークションで買い集め、杖の材料にすることに。


 お前ら自分の足を使って集めれるだろと言ったが、お金他に使うとこないからと言われ、さすがにそれ以上は何も言えなかった。


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