第48話 バッツ師匠

 ある日のこと。


 ダンジョンの魔法陣を設置するために、ブラッドオーガがいるダンジョンへ来ている。


 ここも20階層に小さな町があるので、これで、食料の調達などやりやすくなると大喜び。ダンジョンへ潜る人も増えるし、気軽に王都に帰れるようになったのも大きいな。


「あぁ!!」


 バッツが急に叫ぶ。


「どうしたのお兄ちゃん?」

「ほら、あそこ、あの人たしか…」


 カリーがザックに突き飛ばされた時に気にしてくれた人がいた。


「えっと、たしかナターシャさんだったわよね?」

「そうそう、ナターシャさん。ちょっと挨拶しにいこうぜ!!」

「二人とも、俺はちょっと魔法陣の設置してるから」

「「は〜い」」


 ナターシャさん、ソロの冒険者だったのかな?ソロで20階層まで来れるってことは…どんくらいの実力なんだろうか…分からん。


 とりあえず決められた場所へ魔法陣を設置して、ちゃんと起動するかもチェックする。


「問題なく動きそうだな」


 しばらくしたらバッツ、カリー、ナターシャさんの三人で戻ってきた。


「ロドニーちょっといいか?」

「いいぞ。どうした?」


 ナターシャさんがペコっと頭を下げたので、俺も軽く頭を下げて挨拶した。


「実はよ、このナターシャさんが、俺に弟子入りしたいって言うんだけど?」


「…へ?お前に?」

「そうそう」

「ん〜、バッツはどうしたいんだ?」

「俺は、ナターシャさん優しい人だったし、色々教えてもいいかなって思ってる」

「なら良いんじゃないか?ただ…」

「ただ?」


 俺はナターシャさんに向かって聞く。


「ナターシャさん、なぜバッツに弟子入りをしたいんですか?」

「あの、噂で聞いたんです。バッツさんとカリーさんが、ザックに何かしたと」

「…なにそれ?」

「ザックが二人の名前を聞くと逃げ出すようになりまして…それで先ほどバッツさんに聞いたら色々と教えてくれました」


 ザック。心の恐怖は時間が癒してくれる…きっと…今度会ったら飲みにでも誘うかな?って俺、ザックの味方じゃないのにな…


「私、強くなりたいんです。でも、どうやって強くなって良いか分からなくて…」

「それで、私がナターシャさんの戦闘スタイルを聞いたら、盾と剣って言うから、バッツに教えてもらったら?って言ったのよ」


 カリーも会話に入ってきた。

カリーからしたら、自分のことを心配してくれた人だし、悪い人ではないからと言うことで、カリーも助けてあげたいんだろう。


「了解。次の目的地も決まってないし、しばらく王都で過ごすのもいいんじゃないか?」

「ロドニーならそう言うと思ったぜ!!」


 俺もまだ全部のお店周れてないし、丁度よかった。


「ただよ、俺も人に教えた事ないから、ロドニーにも手伝って欲しいんだ。いいかな?」

「あぁ。俺で良ければ」


「よろしくお願いします!!」


 綺麗な辞儀をするナターシャさん。


「ちなみに、このダンジョンだと何階層まで行けるんですか?」

「あの、私に丁寧な言葉は…えっと、このダンジョンだと、ここの20階層が限界です」

「なるほど。じゃぁこの後みんなで21階層に行ってみようか」


 魔法陣も設置し終わってるので、そのまま皆んなで21階層へ。


 21階層はゴーレム地帯。


 ナターシャさんの動きは悪くないが、ずば抜けて良くもなかった。先祖帰りによって、身体能力と魔力でもってなんとか出来てるが、正直30階層以降のマッドゴーレムとかの相手は難しいだろう。


「バッツ、どう思う?」

「ん〜。全てが勿体無いんだよな…」

「お前もそう思うか」


 能力はあるのに使いこなせてない感じが…


「ちなみに、バッツ、お前がナターシャだったらどの武器を使う?」

「どう言うこと?」


「今までは、相手の身体能力と武器をコピーきて、そこから自分が考える、その武器を扱う為の最適な身体に変化してただろ?」

「そうだな」


「お前がナターシャの身体をコピーしたとする。その身体ならお前は何の武器を使う?」

「そう言うことか!!」


 バッツはナターシャさんの所へ行くと、軽く打ち合いをしてナターシャの身体をコピー。


 その間魔物が出て来たら俺とカリーで処理しておく。


「分かったぞ!!」

「何が分かったんですか?」

「ナターシャ、お前、次からこれを使え」


 そう言ってバッツがアイテムボックスから取り出したのは金属製の巨大ハンマー。


「えっ。今どこから?」

「細かいことは気にしない!!とりあえずこれ使ってみて」

「はい!!」


 バッツってあんなハンマーも持ってたんだな…。某、大人気死にゲーのスモ○ハンマーと言えば伝わるかな?


 突然デカいハンマーを渡されたナターシャだが、手に持った瞬間に「あっ」て感じの顔をした。その後、バッツから武器の扱い方などを簡単に教えてもらう。


「よし、じゃぁあのゴーレムを殺ってみて」

「はい!!」


 巨大ハンマーでも重さを感じないほど素早く動くナターシャ。先ほどまでの剣と盾の装備の時とは全く違う、イキイキとした動き。


「はぁーーーーーっ」


 空高くジャンプして、ゴーレムの頭に重い一撃を喰らわす。


【ドゴーーーン!!】


 とっても簡単に砕け散るゴーレム。


「ウソ…私が倒した?」

「やったなナターシャ!!」

「バッツさん、私、倒せました!!」


 武器一つであんなに変わるんだな。そう思うと、バッツが俺には素手が良いって言ってたのは間違ってないんだろうな。

 いや、武器の才能がないのかな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る