第49話 俺の女

 倒せなかった敵が、武器が変わることによってすんなり倒せて驚き、喜ぶナターシャ。

 その後、なにか吹っ切れたようにダンジョンを攻略していく。


「今のところ、合格点だが、今のままで満足したらダメだからな」

「はい。バッツ師匠!!」


 いつの間にか師匠になってるよ…


「なぁバッツ、そのハンマー、お前が使ったらどんだけ威力が出るの?」


 俺はバッツに聞いてみた。


「俺?」

「お前の理想とするハンマー使いの身体だとどうなるのか気になってな。それに、ナターシャも、ハンマーを使いこなすイメージに繋がるだろ?」

「そうだな。やってみるか!!」

「バッツ師匠。よろしくお願いします!!」


 しばらく歩くとゴーレムが2体。


「じゃぁ、あの魔物でやってみるぞ!!」


 そう言うとバッツはハンマーに魔力を纏い、そこから魔力を紐みたいにして、自分の頭の上でハンマーをグルグルと回し始めた。


 お前それ鎖鎌じゃねぇんだから…

魔力コントロール間違って紐みたいな魔力が切れた瞬間大惨事になるぞ…


「えー!!師匠、なんですかそれは?」

「回る力が加わるといいかな〜って思ってやってみてるんだけど、意外と良いかもしれないな。そ〜れっと」


 遠心力によりパワーが増したハンマーがゴーレムに向かって命を刈り取るように、横向きに飛んでいく。


【ドガーン…バゴーン】


 横並びにいたゴーレムが、2体とも魔石へと変わる。


「す、すごいです!!」

「ん〜なんか違うな。もう少しこう…」


 ゴーレムを倒した後も、鎖ハンマーを振り回すバッツ。もぉ、めんどくさいから、鎖ハンマーでいいよね?


「そうか!!この形がダメなのかも!!」


 今度はさっきより少し小さいが、両サイドが同じ大きさのハンマーを取り出す。


 ※さっきまで使ってたのは、スプラ○ゥーンのウルトラハンコみたいなやつ。

 ※今取り出したのは、けん玉みたいな形のハンマー。


「おぉ。これなら重心も分かりやすいし、扱いやすい」


 その後、バッツは鎖ハンマーでゴーレムを倒して遊びながらダンジョンを進む。


 ナターシャに鎖ハンマーやらせたら、あっという間に魔力の紐が切れて俺に飛んできたので、しばらくは魔力操作の練習をして、合格が出るまで鎖ハンマー禁止にした。


 そのまま勢いでボス部屋まで行き、今のナターシャがどこまで出来るかを確認。


「ほ、ほ、本当に私が一人でやるんですか?」

「危なかったら助けるから、大丈夫」

「そうよ。私達を信じなさい。あのザックだって何度か死にかけたけど、ちゃんと生きてるじゃない」

「あわわわわわ…」


 ザックの時の相手はバッツだったけどな…


 部屋に入り、バッツは後ろから指示をだして、なんとかブラッドオーガを討伐。


「やったな!!」

「っはぁっはぁ。はいっ。私…」


 かなり疲れてるのだろう。息をするのでいっぱいいっぱい。


「まぁ、なんだ。みんな今日はナターシャも頑張ったことだし、バッツの奢りでご飯でも行かないか?」

「賛成!!お兄ちゃんの奢り」

「俺かよ!!まぁいいけどさ」


 さっそく転移で王都に戻ってお店探し。


「あわわわわわわ。こ、これがSランクパーティーの日常なんですか!!」

「転移ぐらいでビビってたらダメだぞ」

「は、はい!!師匠」


「バッツがナターシャを鍛えてる間、私も誰かとクエストでもやってみようかな?」

「どうした急に?」

「今まで教えてもらってばっかりだったけど、人に教えることでも成長があるかなって」

「たしかにな。俺は良いぞ」

「まぁゆっくり考えるわ」


「なら、クエストとして募集してみるか?」

「募集?」

「そう。竜の息吹とダンジョンに潜りたい人募集。賞金は無いけど、魔物討伐した分は全部あげます。みたいな募集」

「ちょっと面白そうね」

「なら、明日にでもリンダールさんに相談してOKだったら募集してみるよ」

「ふふっ。どんな子が来るのかしら」


 悪い時のカリーの顔してる…

その日はバッツの奢りだったので、カリーも俺も遠慮なくご飯を食べた。


 明日は休みにして、バッツはナターシャの武器を買いに、あのハンマーをあげるのかと思っていたが、若干ナターシャのサイズではないみたいで、もっと良いのを探しに行くのだとか。


 カリーは最近魔道具屋さん巡りにハマってるみたいで、明日も巡ると言っていた。


 俺はグランデのお店へ顔を出す日だったので、転移で移動。お店でお酒を飲みながらアマンダ、バロック、ローラと会話を楽しみ、その夜はもちろんアリアナとアマンダと楽しんだ。


「ねぇロドニー、最近私のことを、ひつこく狙ってくる冒険者が居るんだけど、どうにか出来ないかな?」

「ん?どんなやつだ?」

「明日ちょっとギルドに顔出してよ。どんなやつか教えてあげるから」

「分かったよ。明日。おやすみアリアナ」


 翌日、グランデの冒険者ギルドへ行き、クエストボードでも見ながら過ごしていると。


「ねぇねぇ、アリアナちゃん、今日も可愛いね。俺さ、オシャレな店見つけたんだよ。でも一人じゃぁなんだから一緒に行かない?」

「嫌です」

「そんなこと言わずにさ、ねぇ、アイリーってお店なんだけど、アリアナちゃんも絶対気に入ると思うんだよ。ねぇ」


 俺の店じゃねぇか。オシャレで気になってくれてありがとう。


「ちょっとごめんね、アリアナ、ちょっと良いかな?」

「えぇ。もちろん」


「あんだ?おめぇ。今俺がアリアナちゃんと話してんだろうがよ?」

「話などしてません。迷惑です」

「アリアナはそう言ってるけど?」

「うるせぇんだよ。殺されてぇのか?」


「あはは。嫌だな〜。僕のお店のこと褒めてくれたから許してあげようかと思ってたんだけど、どうしようかな」

「あん?お店?え?あのお店ってお前の店なのか?はははっ冗談きついぜ!!」


 そう言って俺に殴りかかってくる。

…遅すぎる…軽く受け止め、そのまま腕を掴み、地面に倒す。


「いででっ!!」

「いいかハゲ、俺はな、お前みたいな底辺冒険者が敵う相手じゃねぇんだよ」


 地面に倒したハゲの耳元でそっと囁き、Sランクの冒険者カードを見せる。


「俺は優しいからな、俺の店で酒を飲む事は、まだ許してやるよ。ただ、俺の女に手をだしたら次は消すぞ?分かったな?」


「…ひぃ。は、はい…」


 俺はハゲを解放する。

ハゲはそのままギルドから逃げるように出て行った。


「俺の女って、あんた他にもいるくせに。べーだ!!」

「アリアナ、そんなこと言わないでよ…」

「分かってるわよ!!あと、ありがと」

「困ったことがあったらいつでも言って」


 俺は転移で王都へ。リンダールさんに昨日カリーとした話をしてみたら、全く問題ないとのことだったので、さっそくギルドのクエストボードに貼り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る