第32話 初めての奴隷購入
商業ギルドの人に連れられて何件か物件を見て、少し広めのやつに決めた。
従業員に住んで欲しいし、自分でも泊まれる。お値段は金貨600枚(日本円で600万円)今の俺にとっては安い買い物だ。
「ここの物件でお願いします」
「ありがとうございます。では、一度ギルドへ戻り契約書にサインをお願いします。その後にこの物件の鍵を渡しますね」
「分かりました」
商業ギルドへ戻り必要な書類にサイン、鍵をもらう。リフォームは勝手にしてくれて良いと言ってくれたので後でやろう。
物件も決まったし、ルドルフさんに聞いておいた奴隷商人の所へ。戦闘奴隷?みたいなお店のボディーガードをやってくれる人が見つかるといいな〜。
そんなことを考えながら教えられた場所へ向かうと、すごく立派な建物が。ルドルフさんが教えてくれただけあってちゃんとしてそうだな。
中に入るとビシッとした格好の初老の男性が話しかけてきた。
「いらっしゃいませ。失礼ですが、初めてご来店のお客様でしょうか?」
「はい。ルドルフさんに紹介してもらって来ました」
「ルドルフ様からのご紹介でございましたか。もしかしてロドニー様でしょうか?」
「はい。ロドニーです」
「ようこそいらっしゃいました。私、ここのオーナーをしております。イルガーと申します。どうぞこちらへ」
そう言ってお店の奥へと案内される。ちょっとした貴族のお部屋みたいな所で、豪華なソファーへ座る。
「それで、ロドニー様。本日はどのような奴隷をお探しでしょう?」
「今度お店を開こうと思ってまして、そこの護衛と言うのでしょうか、戦える奴隷を探しています」
「なるほど。では戦闘能力の高い奴隷を何人かご紹介しますね。少々お待ちください」
ちょうどそこへ従業員が紅茶を運んできてくれたので、イルガーさんは呼んできて欲しい奴隷のリストを渡す。
「ところで、よければどのようなお店を開くのかお伺いしても?」
「貴族とか富裕層をターゲットにして落ち着いてお酒が飲めるお店ですね」
「それは面白い。オープンしたら私もお邪魔させていただきます」
「えぇ。面白い飲み物を出すので是非」
「それは楽しみです」
面白い飲み物とはハイボールのことだ。正直、お酒にはあまり詳しくないので、ルドルフさんからお酒を仕入れて炭酸水で割って出す。炭酸水はもちろん魔法で作る。
この世界に来てからコーヒーを飲んだことがないのだが、コーヒーはあるのだろうか?
前世ではコーヒーが趣味で、家庭用の小さい焙煎機も買って生豆から焙煎して飲むくらいハマっていた。昼間はカフェで、夜はバーみたいな店もいいよな〜。
「失礼します」
従業員の方がリストにあった奴隷を連れてきてくれた。
奴隷なので服装は質素だが全員清潔感があり、ここでの生活は悪いものではないと分かる。連れてきてくれたのは5人。
「ロドニー様、お待たせしました。では皆さん、自己紹介をお願いします」
「あたいはローラ。見ての通り猫の獣人。元冒険者だ…です」
「あっしはラット、人族、冒険者でやした」
「ロックだ…です。ドワーフで冒険者だった。いや、でした」
「あの、無理に丁寧に喋ろうとしなくていいですよ」
つい言ってしまった。イルガーさんから言葉遣いを注意されるんだろうが、なんか気持ち悪い。
「なら遠慮なく。俺はガッツ。人族。元傭兵だ」
「俺はバロック。狼の獣人。傭兵だった」
一通り自己紹介が終わると、イルガーさんが俺にそれぞれの価格を教えてくれた。
ローラさん、金貨80枚
ラットさん、金貨30枚
ロックさん、金50枚
ガッツさん、金貨35枚
バロックさん、金貨50枚
ローラさんが高いのは女性だからみたい。
次に俺の質問タイムとなる。まぁ知りたいのはどれだけ強いかなんだけどな。
バッツとカリーと修行してたおかげか、魔力の流れと魔力量でなんとなくその人の強さが分かることに気付いた。
この前会った王都のギルドマスター、リンダールさんとかヤバかったしな。それと同じくらいうちの両親もヤバいんだよな…
今回の奴隷の中では獣人族の二人と、ガッツと言う人が強い部類に入るかな?
「質問です。皆さんは何故奴隷に?」
全員借金という回答。貴族にハメられたと言ったり、純粋にギャンブルだったりと。
基本的に借金奴隷は、ここの奴隷商でタダ働きをして借金額を返済すれば解放される仕組みとのこと。返済できればの話らしいが…
犯罪奴隷は一定の期間売りに出されるが買い手が見つからなければ過酷な労働の場所へ送られ、そこで一生過ごす。そこでの報酬は全てイルガーさんの収入になる。
「決めました。ローラさんとバロックさん、2人を買います」
「おぉ。2人も。ありがとうございます」
ローラさんとバロックさんだけ残して後の奴隷は部屋を出て行った。
「あたいを買うとは良い目をしてるな」
「………」
何も言わずに黙ってるバロックさん。
「俺に買われるのが嫌ですか?」
俺はバロックさんの前へ行き直接聞く。
「…そうだな」
「なぜ?自分より弱いやつに買われるのが嫌だとか?」
「そう言う訳ではない。申し訳ない」
受け答えはちゃんとしてくれるし、俺のことが気に食わない訳でもなさそう。
するとイルガーさんが口を開いた。
「ロドニー様、おそらくですが、バロックの妹も一緒にここにおりまして…」
「あぁ。そう言うことですか。ではバロックさん、俺があなたじゃなくて、あなたの妹さんを買うと言ったら?」
「妹が幸せに生きていけるなら…俺よりも妹をお願いしたい」
俺はイルガーさんの方へ向き直し、
「分かりました。では妹さんも買いましょう」
「ロドニー様、ほんとうでしょうか?」
「えぇ」
「か、かしこまりました。少々お待ちください」
イルガーさんは従業員に妹さんを連れて来て欲しいと伝える。
「くぁ〜。あんたとんだ甘ったれちゃんだな。あたいの主人として少し不安になってきたぜ」
「ローラさん、甘ったれ主人でもなんでもいいですよ。仕事さえしてくれれば俺は何も言いませんから」
ニコッと笑って軽く殺気を飛ばしておく。
「ヒぃっ。わ、わかりました」
「よろしくお願いしますね」
少しやりすぎたかな?まぁいい。しばらくすると小さい狼獣人の女の子がやってきた。
「お兄ちゃん!!」
「リリー!!」
「リリー、ちゃんと自己紹介をしなさい」
イルガーさんが言う。
「は、はい。あの、リリーです。狼獣人です。よろしくお願いします」
バロックさんも一緒に頭を下げた。
なんだろ、妹がいる兄を助ける光景。以前にも似たようなことがあったな…妹って存在に弱いな俺…
「イルガーさん、さっそくお支払いをお願いします」
「ありがとうございます」
手続きと支払いを終わらせて奴隷紋を入れる儀式へと移る。
首の下あたりに奴隷紋が刻まれ、あとは俺の魔力を注ぐだけ。
契約と言っても何かを縛ることはないが、俺の魔力が刻まれてるので居場所はすぐに分かるし、俺に対して嘘をついても分かるようになる。そんなとこだ。
犯罪奴隷だとまた違った奴隷紋になるらしいが俺には関係ないか。
それぞれに俺の魔力を注ぎ、無事に終了。
するといきなりバロックが俺の前で跪く。
「ロドニー様、リリーのことも買っていただきありがとうございます!!この命、あなたの為に使います」
「いやいや、重い重い!!そう言うの無しで。あらためて、ローラ、バロック、リリー、よろしくね」
ちなみに金貨230枚払った。リリーが金貨100枚と一番高いという…まぁそれだけ売れるし、売り先次第では悲惨なことにもなるってことなんだろう。
お店を後にして、さっそく買ったばかりの家へ向かう。
「今日からここに住んでもらう。買ったばかりでリフォームとかする予定だし、まだ家具とか無いから。今から買いに行くんだけど〜そうだな。ローラ、付いてきて。バロックとリリーは簡単に掃除をお願い」
そう言ってアイテムボックスから掃除用具を取り出す。本当はバロックと一緒が良かったけど、リリーと離らかすのは少しな…かと言ってローラだけ残すのは怖い…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます