第77話 夏休み開始して僅か3日で私は突っ込む/////




 「隼人ー」

 「ん?」

 「暇」



 柚葉の高校が夏休みに入り3日目。今日は柚葉も仕事がなく俺の家にいる。



 「宿題やろうよ」

 「え?」

 「……やることないんだったらやること終わらせようよ」

 「はぁ……分かってないな」

 「は?」

 「こういう時は"それじゃあ何する?"がビンゴなのだよ?」

 「だから宿題しようって…」

 「それは禁句だから!!そんな3日目でやるなんて普通思わないから!!」

 「……あ、確かに大輝君が"柚葉の夏休みの宿題は手伝わないで"ってメールきたしな」

 「」

 「俺とは勉強できないか」

 「……余計なことを……」

 「まぁ、お前がやることやれば良いだけなんだから頑張れよ!」

 「……嫌だぁ……」



 柚葉は情け無い声を出す。



 「それじゃあ……何する?」



 俺は話を進める。



 「んーー……じゃあ選んでよ」

 「何?」

 「どこか出かけるか、やったことないことやるか」

 「」





 柚葉はそう二つの選択肢を出した。




 「やったことないこと……って何?」




 俺が至極当然な疑問を柚葉に言う。




 「単純だよ。"何かやってみるか?"ってことだよ?」

 「例えば?」

 「……隼人が決めていいよ」

 「は?」

 「私はこの二つの選択肢を選ばさせる。それで隼人にはこの選択肢の具体的な案を決めさせる。ウィンウィンでしょ?」

 「……結局俺に全てを決めさせようとしてんだな」

 「あ、バレた(笑)?」

 「分かったよ……んーー……何が良いかな……」




 俺は考える。やったことがないこと……まぁ、俺は基本的にあまり外に出ないからやったことがないことがほとんどなんだけどな。何が良いかな……。




 「……あ」

 「ん?」

 「海行ってみる?」

 「」



 俺はふと思ったことを口に出した。



 「え、海?」

 「そう。普通に水着とかで行くんじゃなくて軽く私服で海を見ない?的なさ……」

 「……今から?」

 「い、いや!!今だと人が凄いだろうし夕方から夜ぐらいにかけて軽く見てみない?ってこと……////////」

 「……」





 柚葉はしばらく無言になる。




 「……やめとく?」

 「隼人は私を守れる?」

 「え?」

 「人が少ないとはいえ、私が絡まれる可能性はあるかもよ?2人で大丈夫?」

 「」



 俺が言ったことだもんな……。


 "2人きりだと絡まれた時に助けられないかも"ってことを。




 「……」




 柚葉は俺を見てくる。




 「大丈夫だよ」

 「」

 「ちょっとは自分に自信を持ってみるよ。だから……行ってみない?」

 「……カッコいいな……」

 「え…」

 「いいよ!!そこまで言うんだったら一緒に海に行こうか!!」

 「……」





 柚葉は俺を信じてくれた。





ーーー





 「それじゃあ海行く時間まで何かしようよ」




 私は隼人にそういう。



 「あ、何しよっか……」

 「んー……何でも良いんだけどね……」

 「つーか、暇だから何しようって話をしたのにその"やることをやるまでの暇潰し"って……グダグダだな」

 「しょうがないじゃーん。隼人が決めたことなんだから」

 「え?俺のせい?」

 「せいじゃなくて事実ね」

 「お前が決めてって言ったんだろ?」

 「あー、私のせい?」

 「せいじゃなくて事実な?」

 「「……」」




 と、私達はふと沈黙になり……、

 



 「「ぷふっ(笑)」」




 思わず笑ってしまっていた。




 「ふふっ……なんか隼人と前より話せるようになってきた気がするなー」

 「そうだな……俺も前より柚葉に感情的になれてる気がするわ」

 「そっか!」

 「こんな感じでいろんな人と話せたら良いんだけどな……」

 「話せるよ!頑張れば不可能なことじゃない!」

 「そうかな……」

 「自分を信じるんでしょ?大丈夫だよ」

 「……」




 段々と私に対しての気持ちの伝え方が慣れてきているな……。




 「それじゃあ隼人」

 「ん?」

 「海に行くまでの時間は私が決めるよ」

 「お、頼む」

 「任せてよ!!……それじゃあね……一緒に……」

 「」


 私は溜めた。そして、


 「イチャイチャしよう!!」

 「……え?」




 隼人は呆気に取られた顔をする。




ーーー



 「"イチャイチャする"って何だよ?」

 「え?甘えあったり、ベタベタしたりするんだよ?」

 「それは分かってる!!だから……その、それが何だよって話」

 「え?」

 「何でそんなイチャイチャしたいって……////////ダラダラでも良いだろ?」


 俺はそう追求する。


 「やだ」


 でも柚葉の答えは決まっていた。


 「」

 「今日は折角だから2人きりの時間を大切にしたいの」

 「だからって……その暇潰しでイチャイチャ…」




 この反応は俺が変わってるのか?いや、正常なはずだ。




 「カップルって慣れてくると人前でも見せつけたくなるんだよ?」

 「な、何が?」

 「自分達の愛の強さを」

 「」




 何故それを今?




 「と言う訳で私達は今からイチャイチャしたいと思います!!」




 柚葉は強引に切り出す。



 「……」



 俺はとりあえず柚葉に流れを任せた。

 


 「さぁて……最初は何しようかな?」

 「……」

 「何しようかな?」

 「あ、俺に言ってる?」

 「そんなの決まってるじゃん!!隼人にエスコートしてもらいたいから!」

 「……それじゃあ柚葉に選ばせるという選択をする」

 「だからそれはセコいって(笑)」

 「いやごめん。マジで思いつかない」

 「しょうがないな……それじゃあ私が決めちゃうね」

 「よろしく」

 「……本当に決めて良いの?」

 「何だよ…良いって言ってんじゃん」

 「……言ったね?」

 「お、おう…」

 「それじゃあ……」

 「」

 「キスしようか」





 柚葉はこう言った。




ーーー





 「キスしようか////」




 私は言ってやった。恥ずかしかったから声は震えていたが隼人には気づかれなかった。




 「……え、キス?」



 隼人は理解が追いついていない感じだ。



 「そっ。ちなみに口ね?」

 「」



 私は正直、悶々としていたのでこの際、きっかけを作ろうと思い"この流れ"にした。つまりは"暇"と言ったときからこの流れにしようと必死に考えていた訳。



 「……心の準備ができてないんだけど……」

 「それは私もできていない」

 「ことに及ぶとこまで進んじゃわない?」

 「何を心配してんのよ(笑)////////」

 「顔赤いじゃん」

 「と、とにかく!!隼人は私とキスしたくないの?」

 「……ちょっとその段階にはまだ達してない気がするんだけど……」



 隼人はビビってる。



 「自信持ってよ!!大丈夫!!ただ、軽く"チュッ"なだけだから!!」

 「」





 さぁて、どうなるのやら…。

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