第136話 自分とは"無縁"の場所
「ここか」
俺はある場所に来ていた。
「……」
あくまで平然を装う。それが"下見"では鉄則。
「思った以上にデカいな…」
俺はそう言いながら周りを歩き始める。
「体育館デカ」
まぁ、このセリフで分かると思う。俺はある高校を下見に来ている。その高校は…、
「この校舎で柚葉達が授業受けてるのか…」
そう、影心高校だ。
昨晩のこと。
ー
ガチャ。
「ゆ、柚葉!」
「あ…」
夜の10時半ごろに柚葉が俺の家に来た。
「隼…」
「1人で来たの?」
「」
「危ねぇだろ」
俺は柚葉にそう言っていた。まぁ、まだ10時半とはいえ、夜だ。
「ご、ごめん…一応お兄ちゃんはいるけど…」
「え」
柚葉の立場を考えたら危ない可能性もある。だから俺は少し強めに言った……つもりだったが遠目に大輝君がいた。あー、なんか恥ずかしい…。
「それで?どうしたの?」
「あ…文化祭のことについて」
「」
「一応さ……やっぱ来てほしいって…」
「あぁ、行くよ」
「あ……来てくれる?」
「お、おぉ……もしもの時は桜がついてきてくれるって」
「妹にボディーガードをされるのは恥ずかしくない?」
「うるせぇ」
あぁ、なんかカッコ悪い…。
「」
「と、とにかく!!行かせてもらうから」
「……ありがと」
そう柚葉は可愛く笑う…。マジで可愛いな。
「……」
「で、本題に入っていい?」
「ん?え、今のが本題じゃないの?」
「あ、これはただの確認」
「…お、おう…」
な、何か調子が狂うな…。
「隼人は琥太郎の文化祭に行く?」
「」
あ、そういえば再来週か…。
「考え中だった……由芽子は行くの?」
「由芽子は行くって言っていたよ」
「そっか……で、柚葉は?」
「私も行ってみたいけどさ…行くんだったら由芽子と隼人か、または隼人かのどっちか何だよね。隼人はどうしたい?」
「んー…つーか、行くにしろ行かないにしろそもそも、柚葉達と琥太郎の高校を見たことないなとは今思った」
「あ、そうだっけ?」
「そうだよ。去年は行ってないし」
「じゃあ、明日見てみれば?」
「え」
「明日空いてるんだったら外見だけでも確認してみればどうかな?」
「……」
ー
と言う訳。
何となく見に来た。
「あ」
俺はグラウンドを見る。
「でけぇな」
なんだろうな…"自分とは無縁な場所"かと思うと少し虚しく感じる。
「……」
キーンコーンカーンコーン。
「」
俺は授業終わりだかのチャイムに酷くビビった。マジで心臓に悪かった。余韻に浸っている時のこういうのってダメだよな。
ーーー
「柚葉」
「ん?」
私は人通りがない廊下で由芽子に声を掛けられる。
「なんか元気がないね」
「え、そう?」
「そんな風に思う」
「……由芽子はどう思う?」
「何が?」
「隼人と文化祭行くの…大丈夫かなって」
「……」
「ゆーのは解決してきたんだけどさ、由芽子が琥太郎と周る時はどうフォローしよっかなって」
「」
私の後出しの本命のセリフに由芽子は動きが固まった。
「ん(笑)?」
「フェイントかけないでくれない?本気でビビったんだけど…」
「ごめんごめん(笑)」
「てか、そんなことより隼人と行くの?」
「行こうかなって」
「…」
「由芽子はどうする?琥太郎と周る?」
「それはどっちもの文化祭で?」
「そうそう」
「…そう考えてる」
「それじゃあ琥太郎の高校の文化祭は誰と行く?」
「それなんだけどさ……柚葉と隼人が着いてきてくれる?」
「え」
「それだったら琥太郎も幼馴染が来たって周りに言えて固くなんなくて済むだろうし」
「あ、それで途中から別れるんだったら別れる的な?」
「そういうこと。一応、琥太郎に会うまでは幼馴染の友達で行く」
「なるほど…」
由芽子も意外と周到だ。
「それじゃあそれで」
「あ…」
「ん?どうした?」
「……いや、何でもない」
「」
そうして私達は教室に戻ろうとした。
「そういえば昨日、隼人に高校見に行ってみればって言ったんだよね」
「それって私達のとこ?」
「そことコタのところ」
「職質されない?」
「大丈夫だよ!隼人だったらそこら辺のことは考えてるだろうし」
「…そうかな…」
ーーー
「……デカかったなー」
俺はそう呟きながら柚葉達の高校を後にした。
「影心高校って名前からしてカッコいいよなー」
そんなことを呟きながら歩く。
"影"に"心"って何だか厨二心が燻られるんだよな。それにおいて進学校でスポーツ強豪ってカッケェな。
俺の通っていた通学制の高校の名前は
「……コタの高校ってどんな所なんだろ」
俺はそう言いながら次の行き先へと向かう。
ーーー
「え?マジ?」
「マジマジ」
昼休み、琥太郎が手洗い場から自分の教室に戻ると教室が少し浮き立っていた。
「ん?なんかあった?」
友達の
「ヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウヤロウ…」
「」
京介はブツブツ呟いていた。
「京介どうした?」
同じく友達の
「あぁほら、隣のクラスの
「あー、スタイルがいいあの人か」
「そうそう。その子が告白されて付き合ったんだよ」
「マジで?……ん?あー…京介のタイプだったもんなそういや」
「そうそう。その付き合った事実が今、暴露されたんだよ。だから京介が興奮してる」
「うわー、可哀想だな」
「ああ???」
琥太郎が呟いたことに京介は凄まじい形相を見せる。
「まぁ、次があるから…若いんだし恋愛なんてしようと思えばできるから」
綾人は京介を宥める。
「……まぁ、確かに特に話したりとかは少ししかないけどよ…本気で好きだったんだよ……だから悔しい…」
「」
「自分の本心と目を背けて後回しにしていた自分が悔しい」
「……」
京介の言うことに琥太郎は何も言えなかった。
形は違えど、"由芽子と同じ経験をしている"ってことだからだ。
「京介」
「ん?」
「ちゃんとは言えないけどよ……今の経験以上に辛い経験をしないよう頑張ろうぜ」
「」
琥太郎は京介にそう言っていた。
「なんかムカつくんだけど…」
「悪い…」
「琥太郎…どうした?」
「え」
「いつものお前だったらネタにするくらい笑いそうなのに」
「え、俺ってそんなことしたことねーけど?」
「そういう印象」
「」
そして時間は流れる。
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