第6話 夢は見てもいいよね?神様




 「で、決められた?」




 大柳柚葉おおやなぎゆずはは俺、小柳隼人こやなぎはやとに直接聞きに月曜日の夜の7時頃家に来た。

 因みに今は玄関だ。



 「……忙しいんだからわざわざ家に来なくても………」

 「隼人の顔を見たいからさ」




 そう首を傾げながら笑う………、




 「」




 何でだろう……、



 柚葉の笑顔には安心感があるんだよな………多分、俺だけが感じるんじゃない……誰もが柚葉の笑顔を見ると少し、心境に変化が起こると思う……、





 "だから"かな。





 柚葉が俺と2人でいる時にこうやって笑うのは俺を安心させるため。人と関わるのが苦手な俺がここまで幼馴染だからって柚葉と話せているのは柚葉が気を使っていてくれてるということだ。俺を使ってやりたいことをやってるのは……"アレ"だけど…ともかく、俺が関わりやすいように柚葉は常に気を使ってくれているんだ。




 これが天性のお人好しなのかな……。






 「やっぱ柚葉は変態だよ…」

 「はー?いきなり何よ?」

 「俺みたいのと一緒にいれて"楽しい"とか"面白い"って思えるのは柚葉だけだよ。だから変態なんだ」

 「自分が特別な存在とでも思ってるのかな?」

 「いや、逆だよ」

 「え?」




 「柚葉が特別なんだよ」




 「」

 「そして優しい」




 なんかここで言うのはキモいけどさ……やっぱ口に出して伝えたくなるんだよね……。柚葉は"特別"だって。



 もっとキモくなるけど付け足すと……、




 俺にとっての特別……なのかも。

 俺の中でとても大切にしたい人物……だから……あれだけ一緒にいちゃいけないって思ってるのに……、








 隣にいてほしいって思っちゃうのかも。






 「そ、それで?隼人は明日は来れる?」

 「……………行くよ。柚葉が迷惑じゃなきゃ遠目で見させてもらうね」




 俺はそう答える。

 



 「」





 "その時"の柚葉の顔を俺は忘れないだろうな……。





 「是非、見ていってね!!!」




 笑顔でとても"嬉しそう"に笑う。


 やっぱ変態じゃん……、


 俺見て"そんな"笑顔になれるなんてさ。






 そうして行くことが決まった。














 「おー、良かったじゃん隼人ー」

 「…………まぁ…」

 「それじゃあ明日はオシャレしないとね!!」

 「」





 俺はリビングにて母親の小柳美月こやなぎみづきに明日のことを話した。母さんは妹似だ……あ、逆か。妹の桜が母親似だ。




 「でも……柚葉ちゃん………とても良い子よね」

 「そりゃあそうだろ…アイツは純粋で心が綺麗すぎるんだよ……だから、心配でもある。悪い奴に捕まらないか……」

 「それじゃあ、あなたが守ってあげなさいよ」

 「なっ////////!!!!?」

 


 「"彼氏"としてさ?」




 そうウインクしてくる母親……、





 「……………逆だよ"これ"も」

 「え?」

 「柚葉に近寄るんじゃなくて俺が離れればいいんだよ」

 「」

 「ずっと一緒にいたいけど俺みたいな存在はいずれ柚葉の未来の障害となるよ……、柚葉はこれから大変になっていくんだよ?もっといろんなストレスや悲しいことを沢山経験していく。その時に俺みたいなただの日常の人間関係で悩んで、逃げた奴が柚葉を支えていけるとは思えない」

 「……………」




 「だけど俺もズルいからさ………夢はみたいな。柚葉とずっと一緒にいられる夢をさ」









 畜生。



 分かってるんだよ……俺は後ろ向きだって……まだ成長もしてないって………、妹の桜が俺に…




 『柚葉ちゃんが何でいつも"お兄に会い"に来てると思うの?』




 って言ったことだって何でなのか分かってる気がするんだよ……。

 柚葉も俺と一緒にいるのが楽しいって言ってくれた……、




 『"ずっとこのままでいようね?"』




 


 畜生……あの時、"気づいていた"んだよ……。でも俺は……俺は柚葉の足を引っ張る存在だから………。











 「子供作りてーー……」



 俺は自分の寝室のベッドに横たわりながら呟いた。

 子供欲しいわ……、

 柚葉と俺の子供ってどんな子に育つんだろ……、

 できれば柚葉似が良いな。幸せに育ってほしい……。




 「やっぱ最低だな………畜生」




 

 だから俺は夢を…自分の中の想像だけに留める……。好きなだけ"一番叶ってほしい"未来を……。




 夢は見てもいいよね?神様。

 








ーーー





 「それじゃあお兄ちゃん!隼人は明日来るって言うから一緒に来てね!!」

 「分かった」

 「時間とかはお兄ちゃんと隼人で決めていいよ。隼人のライン持ってるよね?」

 「持ってる」

 「それじゃあよろしく!!」

 「おう」




 私は兄の大柳大輝おおやなぎたいきに伝えることを伝えて自室に戻った。

 大柳家は高級マンションで暮らしている。一応、私、お兄ちゃん共に芸能人だからだ。






 ボフっ!!






 私は自分のベッドに寝転がる。





 「」



 そして、考えた。



 「隼人…………喋れるかな…?」




 それは隼人と明日の現場で話せるかと言うこと……。




 「」



 やっぱさ……その場の出来事はその場で語ったらとても伝わるんだよね……。

 でも、





 隼人はそんなに喋りたくないかもしれない……。



 今は目立ちたくないよね……。だから、学校に行けてない訳なんだし……。





 「隼人は私のことを本当はどう思ってるんだろ…」




 私が隼人の家に頻繁にお邪魔するようになったのは2ヶ月前くらい……。隼人が不登校になったのを知ってから行くようになった。訪れるようになった1番の理由は……、






 私と関わるのを怖がってほしくないから。




 だって……、辛いじゃん。

 隼人は隼人なんだし、私は私なんだからさ……私を怖がらないでほしいんだよ……自分勝手だけどさ……他の全ての人が怖い存在に見えても私だけは味方だって思ってほしいからさ……。



 何だろこの気持ち………、




 隼人が不登校になった時から何故か胸にずっとモヤモヤがある……。なんて言うか……自分の大切なものが壊れていく様を見ることしかできない、"後悔"みたいな。



 だって、隼人はカッコいいんだよ?



 いつも私の我儘に付き合ってくれて、ウザかろうがキモかろうが一緒に笑ってくれて……とても、




 幸せなんだよ?





 何だろ……上手く言葉にできないけど……、

 私のヒーローなんだよ。

 


 私を笑わせてくれる……守ってくれる……凄い人……。





 


 だからさ……、













 ボロボロ…ボロ…





 「うぐっ!!…………ぐっ!!!……えっ……!!!」

 




 私、隼人が不登校になったのを知った時に何故か凄い泣いちゃったんだよ?



 だって、私も辛かったんだもん。







 自分の……






 自分の"好きな人"がここまで背負い込んでいたなんて気づけなくてさ。



 だから…




 私は隼人を支えるって決めたんだ。






 続

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