第7話 歳に差があろうと男の子ははみんな一緒


 チュンチュンっ…チュンっ……



 「」



 そんな雀の鳴き声と共に俺は目が覚めた。



 「ん………」



 あ、今は6時前か……。

 早く目が覚めたな……。




 「……………」



 仕事の見学か……。

 まぁ、社会見学だよね…、



 情けねぇ…、同い年でここまで"差がある"とはっきり言って胸が痛くなる。




 まぁ、楽しんでみよう。今回はあくまで透明のただのエキストラとしての見学だしな。他のスタッフさんやマネージャーさんと話すとかじゃねーもんな…。だから緊張しなくて良いんだ……。と、言い聞かせてるけど実際問題、なんか吐きそう。




 そう思いながら俺はスマホで、



 "モデル"、"友達"、"どんな感じ?"



 と、チグハグな感じで検索して、調べ始めた。









 


 コンコン…。




 「隼人ー。開けて良い?」

 「!」




 気づけば6時半。




 母さんの美月みづきが俺の寝室のドアをノックしていた。




 「開けて良いよ」




 ガチャ。




 「隼人おはよー」

 「おはよー」

 「朝ご飯出来てるけど食べる?」

 「食べる」




 そう言って俺は起き上がった。






 「お兄、今日は柚葉ちゃんの晴れ舞台を見るんだよねー?」



 同じく食卓にいる妹のさくらがジト目で聞いてくる。



 「そうだよ」



 俺は味噌汁を飲みながら答える。



 「柚葉ちゃんの写真って絶対に可愛いもんねー?それを生で見ていいなんて……ほんとーーーーーに…ねー?」

 「強調すんな。分かってっから」

 「やだ。強調する。イジメたいから♡」

 「お前、本当に性格悪いな」

 「兄譲りだからー。それで、可愛いのは母譲りー」

 「バカなこと言ってないで早く準備しなさいよ」



 母さんが割って入ってくる。



 因みに母さんの見た目が悪くないのは本当の話。年齢は伏せるが確かに高校生二児の母親とは思えない外見をしている。なんて言うか……桜が大人びた…みたいな感じだ。




 「そういえば、大輝君が迎えに来てくれるのよね?」

 



 母さんはフライパンを洗いながら質問する。




 「そう。それで電車で移動」

 「迷惑をかけちゃダメだからね?」

 「分かってるよ」

 「まぁ、その低下したコミュ力を叩き直すチャンスだからやってきなねー」

 「うるせ」



 桜に茶化されたが実際、柚葉と家族以外と話すのは久しぶりだから緊張はしている。



 あ、父さんとは仕事の都合で別居している。




 「」


 


 母さんと桜はこんな不登校の俺でも笑って接してくれる……。



 嬉しいよ。


 






 「それじゃあ行ってきまーす」



 桜が高校に向かい、



 「それじゃあ閉じまりよろしくね?」



 母さんも仕事に向かう。



 「はーい、行ってらっしゃい」



 そして、俺は大輝君が来るまで準備していた。




 



 「んーー……私服はこれでいいかな……」



 俺は鏡を見ながら違和感がないか確かめていた。



 今は青の紺色のスエットに茶色のテーパードパンツ……そして、黒の肩掛け鞄って感じだ。まぁ、公共の場だし、不登校ではなく1人の青年として見られるために少し大人びた格好にした。




 「よし、悪くない。こんなもんだろ」



 30分使って選んだんだ。悪くない筈だ。







 ピンポーン!







 「!!」



 チャイムが鳴った。



 「来た…」




 俺は玄関に向かう……。





 










 「おはよう。隼人、久しぶり」

 「お、おはようございます!大輝君お久しぶりです!!」





 

 俺は大輝たいき君と久しぶりの対面をしていた。






 「………………」

 「行ける?」

 「は、はい!いつでも行けます!!」

 「じゃあ行こう」




 俺は大輝君を見た。





 "変わってない"。





 そう感じた……。いや、確信した。



 単語レベルでの会話。無表情。存在感の無さそうである感じ。目線の高さ。




 大輝君だ。




 大輝君は黒のTシャツに青のジーンズに黒のキャップと言う至って男らしい服装をしている……なんか少し派手めな色の服を着た俺がイキってるように見えるんだよな……。





 


 スタ… スタ… スタ…




 駅までの道中、俺と大輝君は無言だった。




 「………………」




 なんか話したい。

 気まずいとかじゃなくて、久しぶりに会えて変わってない安心感からか会話をしたいって思っていた。




 俺は大輝君とはもう保育園時代からの付き合いだ。いや、俺が物心ついた時には知っていたかも……。それくらいの付き合いだ。その頃から大輝君は物静かだった。柚葉が友達とボール遊びをよくしていたとしたら、大輝君は1人おままごとで大人しく遊ぶ……、そんな感じだった。



 俺も同じ穴のムジナだったので昔はよく、混ぜさせてもらった。



 




 「隼人」

 「!!」




 そんな思いに耽って時だ。

 大輝君から声が上がった。




 「最近は元気にしている?」

 「は、はい!体調に変わりはないです」

 「そうか…………」

 「…………」

 「隼人」

 「はい」

 






 「ちゃんと抜いてるか?」







 「」





 やっぱな…。


 マジで大輝君は変わっていない…。


 プライベートで人とあまり会話をしないから話す内容が漠然としていてストレートなんだ。だけど、これはマジでどストレートだ。





 「あはは………何でとは言えませんが……解消してますよ…」

 「やっぱ男子だな」

 「あはは……」

 「柚葉は隼人のことを性欲悪魔と呼んでいるからな」

 「」




 アイツ……余計なことを……。




 「俺もそれなりに欲求不満は解消している」

 「」






 どうやって解消してるんだろう……モデル美男の人はどうやって解消するんだろう……やっぱ……




 ヤッたことあるのかな…?






 「俺はない」

 「!!……あはは……なるほど…」



 あー、心の声が顔に出てたか……。




 「でも、仕事で一緒になった女性の方で何度かはある。直接ではなく想像で」

 「言い切りますね……」

 「大事なことだからな。スキャンダルとして世に出ないように気をつけている」

 「」





 そっか、芸能人はやっぱ文春とかに撮られるのは避けたいよな……それで、変な噂が広まったら本当に大変だろうし……。





 「だから、俺は今は彼女を作らない」




 そう淡々と語る大輝君……。

 なんか、カッコいいな……。









 ガタンゴトン……!!








 俺達は電車で移動し、目的の場所へと着いた。そこは都会の中にある広場的な場所だ。歩道がとても広く、ランニングをしている人や、小さい保育園時の子達が先生に連れられて歩いている。






 「!」




 そして俺は見つけた……。






 「あ、飲み物ありがとうございます!」







 スタッフさんから飲み物を受け取る…




 "外装"の柚葉を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る