第5話 モデルの幼馴染に"撮影現場に来て"と誘われた…




 「ねぇ、隼人」

 「ん?」




 今、俺と柚葉は俺の家で寛いでいる。

 今日は日曜日であり、柚葉の仕事も用事もない。

 なので、ダラダラタイムだ。




 「次の火曜日さ……雑誌の撮影なんだよね」

 「おおー、頑張って」

 「でさ……今までは恥ずかしいからさ……誰も呼んだことはなかったんだけど…






 次の撮影、観に来てくれる?」






 「……………え?」




 俺は一瞬唖然としてしまった。




 「え、観にくるというのは……」

 「雑誌の……撮影////////」

 「え………水着?」

 「何でその思考に至んの?」

 「」




 柚葉は冷たい視線を送る。





 「そんな私のエロい姿を見たいの?私はあなたにとってのただのオカズ?」

 「い、いや…………ともかくだ!!!!!なんの撮影?」

 「普通のファッション雑誌だよ。公共の広場で午後一番にあるんだけどさ………どうかな?」

 「………俺、職質されちゃうよ……流石に不登校とはいえさ……」

 「あ、それは大丈夫。お兄ちゃんと一緒に来てくれれば大丈夫」

 「!!………大輝たいき君と?」




 大柳大輝おおやなぎたいき……柚葉の兄。


 大学2年生であり、柚葉と同じくモデルをやっており、身長は196cmの長身だ。ともかくデカい……だが、無口で人と話すのがあまり得意ではない。どちらかと言えば俺よりの人と話すが話題がなく、何を考えてるか分からないタイプの人間だ。



 で、



 俺との決定的な差はともかく身長だ。



 「そういえば大輝君は元気にしている?」

 「元気だよー。よく、隼人のことを聞いてくるんだよ?」

 「」

 「やっぱ仲良いよねー?」



 そうニヤける柚葉。



 「………でも、大輝君とはここ最近は会ってもなければ話してもないし……」

 「良いじゃん。口数が少ない男子同士で一緒に来てよー(笑)」

 「…………そもそも、大輝君は大輝君でめっちゃ人気あんじゃん。しかも背が高いから目立つし。だから……」

 




 「それじゃあ隼人は来たくないの?」

 




 「!!…………い、いや……見てみたいよ……生で仕事してる所なんか滅多に見れないしさ……どんな感じなんだろうって思う…」

 「それじゃあ来てくれてもいいじゃーん」



 イジりを楽しんでる目をしてるなー。


 

 「…………考えとくわ」

 「はいはい(笑)」



 


 最後までニヤけてるけど俺が来てくれるって思ってるのか?





 コンコン…




 「「!!」」




 すると俺の寝室のドアがノックされる。




 「お兄〜〜。入っていい?」

 「あ、桜か。どうした?」



 ガチャ。



 「柚葉ちゃんこんにちわ!」

 「桜ちゃん!!!」



 2人は抱き合った。


 そう、小柳桜こやなぎさくら。高校1年生で俺の妹で身長160cm。見た目は黒のショートボブの透き通った白い肌で顔はまぁ悪くない。なんと言うか柚葉が清楚な美人系だったら桜はラブリーな可愛い系……?……なのかな。まぁ、あまり自分の妹を可愛いとは言いたくないけど実際はモテるらしいからそう言っとく。




 「桜ちゃん抱き心地サイコー」

 「柚葉ちゃんめっちゃ柔らかーい」




 そうスリスリと抱き合う2人……。

 こんな百合も悪くないな。

 


 けど、自分の妹もいるから出来るだけ勃たないようにしないとな…。



 つーか、こんなこと考えてる時点でもう兄貴として終わりだよな。プライドどうこうの話じゃねーわ。





 「それでお兄」




 桜は柚葉と一頻り抱きついた後、離れて俺に顔を向けた。




 「なんだよ」

 「そういえば洋楽のCDいくつか持ってたよね?」

 「それが?」

 「聞いてないんだったら貸してくれない?」

 「何で?」

 「なんかラジオで聴きたいなってさ」

 「…………分かった」

 「サンキュー」





 そう言ってCDを取ると桜は柚葉に挨拶して出て行った。





 「……隼人」

 「ん?」


 「ちゃんとお兄ちゃんしてるんだね」


 「」

 「『youtubeで聞けよ』とか、『Apple Music入れろよ』とか、『部屋入ってくんじゃねーよ』とかって言わなかったね(笑)」

 「………いくら不登校でもそんな自暴自棄にはなってないから。家族に当たるなんてことはしないよ」

 「それで私にはめちゃめちゃ怒るのにねー?」

 「柚葉は別だよ……////////」

 「何で?」

 





 「…………そ、それが俺とお前にしかない関係だから//」






 「」

 「………………」

 「つまりは私達だけの特別な信頼関係って意味かな?」

 「もう言わない」

 「」










 




 そして、隼人の寝室の外では……



 「うわーーーー………何であの2人っ………踏み込めよ……!!くっつけるじゃん!!!!」



 桜が焦ったそうに聞き耳を立てていた。

 そもそもCDの件は桜にとってどうでも良かった。

 ただ、2人がイチャつくのを見たかったからお邪魔しただけだ。









 「それじゃあ、今日は帰るね」



 時間は午後6時となり、柚葉は帰ろうとしていた。



 「おう。じゃあまたね」

 「またね!!火曜日のことは考えておいてよ?」

 「明日の夜までには連絡するでいいんだよな?」

 「そうそう!!」

 「…………分かった」





 そして、俺は柚葉を見送った。










 「お兄バカなの?」

 「は?」






 見送って自分の寝室に戻る時に桜が俺にこう言ってきた。





 「何が?」







 「何で柚葉ちゃんとくっつかないの?」







 「」

 「お互い好きなんでしょ?付き合いなよ!!!」

 「………………ダメだよ」

 「はぁ?」

 「俺は柚葉とはいずれ関わらなくなる関係なんだよ。柚葉は俺みたいなやつとくっつくなんて………」




 スパンっ!!!




 俺は桜に頭を叩かれた。





 「そんな弱腰なんだ?そりゃあ不登校も治んないわけだわ」

 「それを言うなよ…………」

 「まず、物事をはっきりさせないと治せるもんも治んないままなんだよ。柚葉ちゃんが何でいつもお兄に会いに来てると思うの?」

 「……………」

 「それが分からないんだったら少なくとも次の成長はないよね」

 「…………ん?ちょっと待て」

 「は?」








 「"お互い好き"?え……柚葉は俺が好きなの?」








 「………………はあぁぁ?????」

 

















 ガチャ…




 「ただいまー」



 柚葉は家に帰ってきた。



 「お帰り」



 すると、爽やかだがどこか暗い声が返ってくる。



 「あ、お兄ちゃん!!帰ってきてたんだ!!」

 



 そう、柚葉の兄、大柳大輝おおやなぎたいき……身長196cmで足が長く、優しそうな見た目で黒のマッシュパーマで、細く、筋肉が浮き出ている引き締まった体躯をしている。




 「今日さ、隼人に伝えたんだー。火曜日の撮影を見に来てって!!」

 「そうか」

 「明日までにはどうするか伝えるってさ」

 「そうか」

 「お兄ちゃんと一緒に来るように言っといたから!」






 「…………そうか」






 大輝は隼人以前に全然喋らない。





 続

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