第4話 "ずっとこのままでいようね?"



 コンコン…



 「隼人ーー」

 「はい、開けていいよ」



 ガチャ



 「どーうも(笑)」

 「何だよ。嬉しそうな顔してるな」



 今日はとても嬉しそうな顔の大柳柚葉おおやなぎゆずはが入ってくる。




 「何だよ」

 「学校行ったんだってね」

 「………」



 そう、俺は今日、自分の高校に訪れた。担任と会うためだ。一応、通学時間を避けたみんなが授業を受けている時間帯に面談室へ行ったって感じだ。



 「大したことじゃねーだろ」

 「いやいやー。一歩前に進んでるじゃん?」

 「……………」

 「それじゃあ今日はパーティーだね!!」

 「………」

 


 と言う訳で柚葉が買ってきたお菓子で2人だけのパーティーが開かれていた。



 「あーむっ!おいしー♡」



 柚葉は嬉しそうにポテトチップスを食べる。



 「…………」

 「隼人ー?食べないの?」

 「柚葉は普通にお菓子をそんな食べてるんだなって」

 「」

 「大丈夫なの(笑)?」

 「ぐっ…!!!……パーティーって言ったのにそんなこと言われると一気に食欲失せたんですけど…」



 

 頬を膨らまして俺を見つめる柚葉……



 可愛い。




 「…………ふふっ」

 「」



 俺は思わず笑ってしまった。



 「何で笑うのー?隼人デリカシーなーい」

 「だって、面白いんだもん。そりゃ笑うでしょ」

 「…………ふふっ」



 そう柚葉まで笑った……



 

 「ねぇ、隼人」

 「ん?」

 「隼人は何かやりたい事はないの?」

 「やりたいこと?」

 「ぶっちゃけさ、隼人は頭が良いでしょ?だからやりたい事も叶えられるくらいの努力ができるし、強かさも持ってると思うんだよね」

 「…………どうかな………」




 やりたい事か……。




 「分からないな…」

 「……………」

 



 やりたい事……今、連想させるのは……





 「ん?」

 



 俺は……、


 いやいやいやいや!!!!!!


 考えるな考えるな………、




 俺は………、





 柚葉とは"関わらなくなる人間"なんだ…。





 『隼人とこうやってくだらないことで遊べて…喋れる時間だよ?』




 「」


 「隼人?大丈夫?」

 「大丈夫………だよ……あのさ……」

 「ん?」

 「…………柚葉は俺にどうなってほしい?」

 「え?………んーーー……もっと強くなってほしいかな」

 「強く?」

 「そっ。自分はもっとできる……誰よりもやればできる……失敗したって頑張れる……そんな心を持った人になってもらいたいなって!」



 「」



 そう笑う柚葉に俺は……



 「頑張ってみるよ」

 「頑張れ!」



 


 そんなやり取りの後、俺達は喋っていた。







 「でもさー」



 ある所で柚葉が声を強めた。



 「何だよ?」

 「私と隼人はずっとこのままな気もするんだよねー」

 「えらく矛盾してない?強くなってほしいんでしょ?」

 「いや……だってさー?昔から私と隼人はこのような関係じゃん?私の変な事にいつも隼人が付き合ってくれるみたいな」

 「あー、自分が変態だって認めてるんだな」

 「女子に変態とかって言わないの」




 ジト目で柚葉が見てくる……。




 「そ、それで?このままって思う根拠は?」

 「根拠も何も……ただの第六感かな?」

 「やっぱ変態だ」

 「どうしてそう結びつけるのよー?」

 「なんか色々と」

 「隼人の方が変態じゃん!!私を変態と決めつけてその変態な私を見て楽しんでるんでしょ?立派な変態だ!!」

 「ぐっ!!!」

 「『ぐっ!!!』とか言わずに反論してよ……本当にそうだって認めちゃってるじゃん………」


 「「……………」」



 俺達は暫し見つめ合い……



 「「ぷふっ!」」

 






 そして笑い合った。









 カチャカチャ!!カチャ!!!



 「そらっ!それっ!!とりゃあっ!!!」

 「」



 俺と柚葉はお菓子を食べた後はゲームをしていた。

 因みにレーシングゲームだ。


 

 「とりゃ!!そりゃっ!!!」




 そんな可愛い声を上げながら柚葉は俺にボロ負けしまくってる。




 「あー!!!惜しい!!!もう一回ねっ!!!!」




 そして、負ける度にこう言う。負けず嫌いなんだ柚葉は。でも弱い。





 【GOAL!!】




 「あーー!!!!」




 テレビ画面に終了のテロップが出て柚葉は15度目の負けを味わった。




 「隼人手加減しなさすぎ」

 「柚葉が本気でやれって言ったんじゃん」

 「だからって普通は女子には手加減するのが男の子って感じじゃん!レディーファーストでしょ?」

 「舐めてんのか?勝負に男も女もないんだよ(笑)」



 俺は何となくカッコつけた。いや普通にダサいって分かってるけどね?



 「うわーー、性格悪っ」

 「どうとでも言いなされ」



 ………やっぱ誰かとゲームするのは楽しいな……




 いや、




 柚葉だからかな……。





 「…………それじゃあそろそろゲームもやめよっか」

 



 柚葉はそう言い、コントローラーを置いた。



 「楽しかったよ!」



 そう満面の笑顔で柚葉は笑う……。



 「それなら良かった」

 「それじゃあさ……隼人にご褒美をあげるよ」

 「え?」




 ご褒美?




 「この私にこんだけ恥をかかせることができたんだから何か良いものをあげないとねー(笑)」



 お前が自分からやりたいって言ったんだろ……。



 「それでご褒美とは?」

 




 「私に一つ命令をしていい権利を授与します」




 

 「」




 え?………命令?




 「私ができる限りの命令をして良いよ?」

 「…………そ」

 「隼人は私と長ーーーーく一緒にいるから私が出来る最大限は何か分かるよねー?」

 「」

 「とんでもない命令は何か?分かる……よね♡?」




 畜生!!!



 つまりはそういうことだ。



 変な命令をしたら蔑まれると言うこと……いや、柚葉の蔑みもなんか悪くないな………いやいや…今のは嘘。




 「だからそれを踏まえて命令をしていただきます」

 「」



 命令か………、




 あ。




 「それじゃあ……思いついた」

 「お、何なにー?」

 






 「指切りをしよう」







 「え?指を切るの?」

 「違うから!!何でそんな古典的なボケをするの?ただの約束事の時の指切り」

 「良いツッコミだね♡」

 「…………」

 「…………それで…私にボディータッチをしたいんだ?」

 「………そうだよ」



 俺は開き直った。



 「俺の願いを誓わせることができるし、その上、柚葉も命令できる」

 「!!!…………"可愛い"ね♡」

 「うるせっ」



 


 そして俺達は"ある約束"をして指を絡めあい……




 「指切り拳万嘘ついたら針千本飲ーます♬」



 そう言って約束をした。




 

 俺の命令は、



 "2人とも良い所は死ぬまで貫くこと"




 そして柚葉の命令は…、






 「"ずっとこのままでいようね?"」






 だった。


 どういう意味かは聞かなかった…。




 



 そして、俺達は遊んだ。





 

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