第3話 俺の生きる理由は"お前"と会うためなんだよ?



 俺、小柳隼人こやなぎはやと…、




 只今、夜で午後8時半を迎えている。




 あー、最近外に出てないな……





 ティロン!!





 ラインが来た。






 [はーやと。外見てー]




 幼馴染のモデル、大柳柚葉おおやなぎゆずはからのメールだった。



 「ん?」

 


 俺は窓の外を見る。



 「」



 すると、家の前に柚葉がいた。



 スタ… スタ… スタ…



 俺は家の外に出た。



 「あ、ヤッホー」




 そう笑顔で手を振ってくる……


 あー、白のTシャツに青のデニムパンツ……カジュアルでエロい。




 「こんな夜にどうしたんだよ」

 「仕事からの帰りでさー!明日は日曜で午後から仕事で余裕があるからさ……会いにきた」

 「……………」

 「今日は一度も外出てないでしょ?少しは外の空気を吸おうよ」

 「」

 「ちょっと近くの公園まで歩かん?」




 そうニッと笑ってくる。




 「」





 笑顔可愛いと思っちゃうのは仕方ないよね……

 だって可愛いんだもん。







 スタ… スタ… スタ…



 俺達は歩いていた。



 「でさ、ドラマで共演する◯◯さんってとてもいい人なんだよ?ドラマではウザキャラが板につく人なのに」

 「なるほど…」




 このように柚葉は仕事のことも楽しそうに話してくれる。




 「あー、柚葉が主人公の娘の高校生役になるやつか」

 「あれ?知ってたんだ?」

 「偶々、調べたら出てきた」

 「サブキャラだけどね」

 「凄いじゃん」

 「時間があれば観てよね!」




 俺も一応、柚葉の経歴を追っているファンの1人だからな……、


 でも……、




 「そっかーー(笑)」



 柚葉は笑いながら伸びをする。

 何だろうか……



 

 「俺も追いついてきてるんだな」

 「え?」

 「昔は柚葉の方が背が高かったけど今は一緒くらいだなってさ」

 「隼人が伸びたんだよ」

 「まぁ、そうだよな……」



 柚葉は身長175cm……で、俺もそれくらいだ。



 「それで、成長していってもいるんだよね」

 「……………」




 「ここも大きくなってるってことなのかも」




 トンッ




 柚葉は俺の胸に拳を当てる…。

 



 「…………ん?ここって?」

 「心」

 「そうか?自分の中ではそんな成長してるようには思えないけどな」

 「そりゃあ本人は分からないよ。でも見てくれている人がいる……それで見た人が言うんだから少なくとも変わってきてはいるってことだよ」




 柚葉は微笑む……。

 

 俺って成長してるのかな……だって、辛いことから逃げてばっかだって言うのに何が成長したって言うんだろ……。



 


 そして…、





 俺達は近所の公園まで歩いてきて、そこにある木でできた長椅子に座る。


 

 「あ、虫除けいる?」

 


 柚葉が鞄から取り出す。



 「あ、いる」



 6月だしな…そろそろ蚊とか出てくるもんな…。

 それで俺は自分に吹きかけた。




 数分後……



 「………」

 「………」




 俺達はしばらく無言で座っていた。



 

 「失敗したな」

 「え、何が?」



 突如、柚葉がそう呟いたので俺は質問した。




 「シャボン玉かフリスビー持ってきたら遊べたのに……」

 「………」

 「この流れじゃ話すことしかできない……失敗だ……遊べたのに……無念……やらかした……くぅっ!!」

 「」



 何か色々と耳障りがいいような言葉並べてるけど要するに後悔してる訳ね。柚葉はカッコつけたがるからな……。



 「隼人。これから何するか決めてよ」

 「うぇっ?俺?」

 「そう、男がここからはエスコートしてよ。私はやるだけやりましたから」

 


 そう、豊満な胸を強調する様に腕を胸の下から組む。



 「えーー……」

 「当然でしょ?男なんだからビシッと決めてよ」

 「凄い開き直ってるな………別に話すだけでも俺は楽しいよ?」

 「それじゃあ私だけしか楽しめないじゃん」

 「…………え?何で柚葉だけ?」




 「隼人の反応を見れてとても楽しいのは私だけじゃん」




 「」

 「つまりは私を下心がある目で見て色々妄想する隼人を見て楽しめるのは私だけなんだからさ!」





 そうニヤけながら淡々と話す柚葉。





 「」




 カアアァァァァァァ!!!!!!!




 「べ、べ別に柚葉のことをそんな見方で見たことはないよ////////!!!!」

 「えーーー?私はその隼人を見て興奮すんのになーー(笑)?」

 「ど、どんな風に?」




 こ、興奮………どんな性癖なんだ?

 俺でヤッてるってことか?

 ヤバい……もうパニクってきた……

 つーか、勃ってきた……




 「"あー隼人、免疫無さ過ぎー(笑)。中学生かよー"みたいに笑いそうになってるってこと」

 「」

 「まぁ、私は可愛いからさ私で強くいろんなことを妄想すんのは構わないけど責めて私が見ていない所で発情してよねー。流石に何度吹き出しそうになったことか……」

 「」



 あー、やっぱ柚葉にバレてたんだな。

 なんか恥ずい。


 まぁそういうことだから、俺も柚葉で楽しんでるってことなんだけどね……。


 そして、


 しばらく他愛もないことを話す。





 「でさ……突然いい?」

 「ん?」





 急に柚葉のトーンが変わる。




 「隼人は私のことはどう思ってる?」

 「え?」

 「正直に言うよ。隼人が不登校になった時からほぼ来れる時はいつも隼人の家にお邪魔しているけどさ……隼人は迷惑だとは思っていない?」


 

 「」



 「"なんかしつこいなー"とかさ……」

 「」

 「もう2ヶ月近く経つんだけど……隼人は私といて"怠い"とか"来んなよ"とかって思ってる時があるんだったら時間は調整して行く日程とかを決めるからさ…」




 「何でそう思うの?」



 「」



 俺は思わず口調が強くなっていた。



 「柚葉が来てくれるからいつも楽しいんだよ。柚葉が来てくれるからいつも楽しみがあるんだよ。柚葉がいるから………生きていたいって思えるんだよ」

 「」




 「…………大袈裟じゃない。俺の生きる理由はお前と会うためなんだよ?」




 「」

 「………………あ」



 俺は"ブアッっっっっっっ!!!!!!"となった。



 「つ、つまりはそういうことだから////////!!!柚葉が来ること自体はいつでもウェルカムだから!!」

 「」



 だって……"いずれ会えなくなる"んだしな……。

 柚葉は有名になっていってもっと"幸せ"になる……。

 俺みたいなのとは関わらなくなっていくんだよ……、

 それで俺とは別々に……、



 



 「嫌だ」

 「!」

 「…………あ」




 俺は思わず声が出ていた。

 何が嫌なんだ?



 

 いや、そんなの………




 「隼人」

 「ん?」

 「私が一番好きな時間を教えようか?」

 「え………」





 「隼人とこうやってくだらないことで遊べて…喋れる時間だよ?」





 「」

 「私は隼人がいなかったらそもそも私じゃないから」

 「どういう意味だよ」

 「さぁ?自分で考えたら?」

 「……ははっ……何?俺のこと…………」

 「…………何?」

 「…………何でもない」




 やべ、口が滑りかけた……。

 流石に聞きたいけどなんか聞けないわこれ…。




 「まっ、隼人が日頃のストレス解消にもなってるってのもあるんだけどね」

 「それは俺もだ」

 「ん?欲求不満の解消かな(笑)?」

 「うるせ」




 そしてこの夜は結局、喋るだけで終わった。






 

 楽しかった……な…。

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