第15話 隼人の前での私は"楽しそうに笑えている"?
「それで"サディストの隼人"はどう思う?」
「俺……サディスト?」
俺は柚葉に思わず聞き返す。
「え?」
逆に柚葉が驚いてくる…。
「隼人はサディストでしょ?」
「え、何で?」
「だって私が頑張ってるのを見るのが好きじゃん」
「」
んーーー?
それってサディストなのか?
「私がいつだかポリ袋を被ってどれくらい息が持つか試してた時、めっちゃ興奮してたじゃん」
ギクっ。
「なんか、私が苦しそうにしてるのを見て唆られてなかったかな?」
うぐっ。
「それで極めつけは袋を取った後の私の息継ぎをジットリ興味深そうに眺めてたよねーー?」
「やめてやめてやめてやめてやめて」
「そのやめてはなんのやめてかなー?"思い出して勃起しそうなのか"、それとも"ただ単に恥ずかしいのか"、はたまた、"もう一度してほしくてなっちゃったのか"」
「やめてください本当に……冗談抜きで今言われたどれもに当てはまっちゃってるから//////////」
「うわ、軽蔑ーー」
そう冷たい目にして俺を見る柚葉……。
「ぐっ…………」
「それじゃあ本当にそんな感じだったか味わってみる?」
「え」
「もう一度、私が袋を被るからどんな心情だったか自分に聞いてみなよ(笑)?」
「お前……マジで卑怯だな//////!!!俺が断れないのを利用して俺の弱味を握ろうだなんて!!」
「あーーー、バレたか」
そうクスリといつものように俺が困惑する姿を見て笑う。
「つーか、自分を利用してまで相手をイジるお前もサディストだろ」
「いやー、それがマゾなのよねー」
「何で?」
「だって私………隼人が向ける私への性的な視線が意外と気持ちいいんだもん♡」
「」
柚葉………、
変態を通り越してやっぱ異常者だわ。
「おらっ」
ドスっ!!
「ごっ!!」
俺はいきなり柚葉からかなり強めの手刀を喰らった。
「何その目は」
「何だよ蔑みの目が嬉しいんじゃないのかよ!!」
「"性的な目"ね?バカにされてるような目は流石にムカつくからやだ」
「………とにかく、お前って自分の欲に従順なのか。だから自分の欲を満たせればプライドは捨てれる範囲であれば捨てれるのか。それでムカつくことには容赦なく怒る」
「なんか私ってチョロいみたいな言い方してない?」
「してないしてない。寧ろ感心したよ…………柚葉は頭がちょっとズレてることを知れて(笑)」
ドスっ!!!!!
「ごっ!!!!!!」
もう一段階上がった手刀を頭に喰らう俺。
「だからそのバカにする目はやめろ」
ジロリと俺を見る柚葉。
「いや!!お前こそ俺を哀れな目で見てんじゃん!!"コイツ、わざと怒らせるようなことして痛い思いしてバカじゃないの?"みたいな目をしてさ!!」
「バレたか♡」
「お前………」
「まぁ、そういう訳だから整理すると、哲也は"人が苦しむ様を見て唆られる異常性のあるサディスト"。で、私は"人を酷い目に遭わせられるなら自己犠牲をなんとも思わないサイコパスじみたサディスト"ね」
「どっちも頭おかしいのには変わらないってことね」
「そういうこと♡」
「つーかお前、自分でサディストとか言ってんじゃん!!」
「自己犠牲って言ったじゃん!!私はどっちも持ってるってことじゃん!!」
「……………ぷふっ…お前、本当にイカれてない?」
「そうその目!!!」
「え」
「その、尊敬と憐れみを持ったその眼差しが私を興奮させる」
「」
コイツはマジで頭がおかしいのか平常なのかわざとなのか………まぁ、何にしろわざとはあるだろうな……。
「あ、因みに今まで言ったことは隼人限定の事だから」
「……………え?どこから?」
「………みんなも考えてみてね♡?」
そうウインクしてはぐらかす柚葉。
なんか………少し疲れた……。今ので充分討論しただろ……。
「それじゃあ"マゾヒストはサディストに目覚めるのか!!"の討論を始めようか!!!」
柚葉は仕切り直しに声を上げる。
「お前は異種の"サディストからマゾヒストに目覚める"だからこの討論をしようと言い出したんだな。憧れてるから」
「次は足刀をこめかみに当ててみようかなー♡?」
そう言って光のない目を向けて俺をジトりと見る柚葉。
「ごめん」
怖かったので素直に謝る。柚葉の蹴りなんか喰らったらマジで脳震盪起きるわ……。
「それでそれで?話を元に戻すけど、私はその現象は全然あると思うな」
「俺もあると思う」
以上。閉廷!!
「待って待って待って。討論どころかただの賛否を確認してるだけじゃん!!!」
「いや、だって柚葉が十分見せつけてくれたしそういう人もいるんだなって理解しちゃったし」
「えーー?つまんなーーい。もっと深掘りしていこーよ!!」
「深掘り………」
何をそこまで………、んーーー……別にどちらが正しいとかない題材だからな……、どちらもサド、マゾ、サドからマゾ、マゾからサド、どちらも持つ。少なくともこの5通りは絶対ある訳だし……、それは環境によっても変わるものだし………………、
ん?
「あのさー……」
「お!!なになに!!?」
「別に全然関係ないことなんだけどさ……」
「言って言って!!!」
「【特定の人に会う時によってもサドとマゾは変わる】ってのもあるよね」
「あーー………例えば?」
「ほら、いい例として柚葉は俺の前ではサドとマゾが"入れ替わる"じゃん」
「まぁ、意識してだけどね」
「無意識じゃん」
「え?」
「だって、いじめようとして気づいたらそれが仇になって自分の奥底にある何かが刺激されるような感じなんでしょ?」
「………何でそこまで分かるの?」
「いや、あれだけ言われれば分かっちゃうよ」
「……………」
「だから、自分が特に意識する人の前だと無意識のエゴが出ちゃうってことだよね」
「…………エゴ?」
「『この人の前ではこのような自分を魅せたい!!絶対魅せてやる!!!』って強がろうと思えば思うほど自分の底にある本心が表に出てきちゃうみたいな」
「」
「……………あ」
「……………」
言い過ぎたかも…、
「つまり隼人の前で私は素でいられてるってこと?」
柚葉はふざける訳ではなく真面目に聞いてくる。
「!!…………まぁ、そうなるよね理屈上では……」
「それじゃあ、隼人の前での私は"楽しそうに笑えている"ってこと……かな?」
「………俺からはそう見える…」
「………………」
ドスっ!!!!!
「ガッ!!!!!」
ドスっ!!ドスっ!!ドスっ!!
「ちょっ!!まっ!!いっ!!」
俺は突如、柚葉から無言の手刀の連打を喰らう。
「隼人」
「ん?」
そして、手刀を止める。
「その通り」
「」
「楽しいや//////」
「」
柚葉は顔を赤らめて笑いながら言う………。
その顔はとても……とても穏やかだった。
「」
柚葉の裏表ない本心が初めて聞けた気がした。
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