第16話 楽しい一時の終わりなのに黄昏れていない"俺"と"私"



 「隼人」

 「ん?」



 「楽しいや//////」



 「……………」



 

 私は思わず言っていた。




 「」



 何だろう……、何だか素の自分を出せたような気がする……。

 


 「柚葉」

 「ん?」




 隼人が口を開く。




 「柚葉の楽しいことってさ俺と一緒にいることも楽しいの一つなんだよね?」

 「」

 



 珍しい…。

 隼人が芯をつくようなことを聞くのは何だか初めてな気もする。いつも曖昧にしていたからな……。




 「柚葉はさ…………その……」




 隼人は言いかけた言葉を止める……。




 「な、何?」

 「………いや、何て言うか……恥ずかしいわ……」

 「え?」

 「………だからぁ……………その…柚葉の本心っぽいことを聞けてなんか……嬉しくて照れるんだよ////////」

 



 そう赤らめた顔を私から背ける…、




 「………………う、嬉しいの?」

 「おう」

 「ほんと?」

 「まぁ……//////」

 「」





 バッ!!!!!





 「!!!……柚葉?」





 私は勢いよく立ち上がっていた……、





 「少しお手洗い借りていい?」

 「お、おう」




 そして、隼人の顔を見ずにお手洗いへと向かう…。





ーーー




 「………だからぁ……………その…柚葉の本心っぽいことを聞けてなんか……嬉しくて照れるんだよ////////」



 俺は思わず柚葉に言っていた。柚葉が本心をぶつけてくれたからなのか分からない……けど……、



 「少しお手洗い借りていい?」



 柚葉は俺の顔を見ずに手洗い場へと向かう……。



 




 「」






 キモ過ぎたかなぁ〜〜〜〜〜????????



 俺は頭を抱える。

 いや、どこがキモいかってのは説明が上手くできないけどなんか……ちょっとカッコつけた感じが……と言うか話の流れで柚葉の後に俺の思ってることをぶつけた感じがなんか男としてダサく感じちゃうんだよな…………。



 でも"あの顔"………、"自分の求めていた返事が来て嬉しい"みたいな笑顔だったからこっちも思わず嬉しくなっちゃったんだよな………。





 あーーーもうっっ!!!!!





 なんか体が痒いわ!!!





 「"楽しい"……か」





 そういや"俺の方"から柚葉に対してプラスな言葉は言ったことあったっけ?

 いつも、柚葉の方から言わせてる気がするな……。

 



 "ありがとう"ってちゃんと伝えたいよな……、





 いや……、












 "好き"だって伝えたいな。









ーーー








 ジャーーーーー……




 「………………」




 私は洗面所で顔を洗っていた。今日は特にメイクはしてないから大丈夫…………だから顔を洗っている。




 「……………ヤバい…」




 私は呟く。








 いや、本当にヤバい。え、ええ、え?だって、なんか今のこの感じだと思わずキスしたくなっちゃうんだもん//////!!!!





 だって……、





 "好き"だとも言いたくなってしまってるんだもん!!!!!!


 でもあながち流れとしては不自然じゃないよね?だって、好きな異性の幼馴染の家のリビングで2人きりで本心を伝え合う………そして、そのご家族が帰ってくるまで時間がある………流れで"イクとこ"まで行けるか?





 ……いやいやいやいやいやいやいや!!!!





 流石にそれはダメだ。調子に乗り過ぎだ。驕りすぎてる。流石にダメだな……………、まず私達はちゃんと全てを伝え合えていない。




 私は少し顔を洗ったことで冷静になっていた。




 ちゃんと伝えたないとダメだよね………、




 "自分の全て"を………。





 だから思う。

 隼人もまだ自分の本当に私に対して思っていることを言えていない。時々、辛そうに……後味が悪そうな顔をする……。私がそうさせてしまっているのかもしれない……。だから、いずれ私の方から全てを曝け出そうと思う……いや、流れで向こうになれば向こうでいいけど………言い訳じゃないから!!!!




 ともかく!!




 今は伝えるべきではない。隼人は"このこと"より優先することがまだあるから……、





 "ある筈"だから…。









ーーー








 ガチャ。





 「たっだいま使わせていただきましたー」




 柚葉がそう言いながら入ってきた。




 「…………あれ?シャワー入ったの?」

 「え?」

 「あ」

 「………はぁ?」

 



 やべ。こんな短時間で入れる訳ないか…、いやそもそもシャワー入るとは言ってないし、しかも手洗いって言ってたし、つーか、髪の毛が少し濡れてるだけでシャワーって決めた俺がやべぇ……。




 「何でシャワーだと思ったの(笑)?」

 



 柚葉が悪意あるニヤけ顔で近づいてくる……。




 「い、いやだって、髪の毛が濡れてたから」




 あー、こんなことを正直に言う俺もバカすぎるわな……。




 「それだけでシャワーって決めたの?安直って言うか決めつけ過ぎじゃね?」




 あーうるせうるせ//////分かってるよ//////!!!




 「隼人君はそんな姿の私を見てオカズにしたいと〜?」

 「お、お前………可愛いからって言っていいことと悪いことがあるぞ……」

 「あ、私を可愛いって認めてくれてるんだ?」

 「話を逸らすな!」

 「んーーーー、でも隼人が言い出したことだからな………イジりたくなるなーー?マジで♡」

 「強調しないで……なんかマジで恥ずかしくなってきたから………//////////」

 「まぁ、そんなに私のシャワー浴びてる姿を見たかったらお風呂ごっこしちゃう?」

 「いつぞやの"おままごと"のくだりをもってくんな!!」

 「えー?でも、隼人が言い出したんじゃーーん」

 「だから、俺は質問しただけなんだよ!!」

 「何でそんな質問する思考に至ったのかが考える上でのミソだから」

 「だから……!!!!!!……ぐっ……!!!!」




 変態に言い返せず俺は口篭る……、あーいやいや、もう認めたよ……今は俺の方が変態だってよ!!!!






 そんなこんなでわちゃわちゃしている間に時間は経っていった…………。
















 「じゃあ、そろそろ帰るね」

 「あ、もうこんな時間か………じゃあ今日は蜂蜜ありがとうな」

 「おう!!!」



 そう、ニコッと笑う柚葉……。





 「………一緒にさ……ホットケーキ食べれて楽しかったよ」

 




 「」





 「…………ん?」



 柚葉が急に俺を見つめて黙る。

 あれ?なんか琴線に触れた……?



 「…………隼人」

 「!!!………お、おう………」

 「"あーん"したことは2人だけの秘密な♡」




 そう人差し指を口元に置き、ウインクする柚葉……。




 「…………ははっ……分かってるよ」




 俺はそう笑顔で返した。





 あーーーー……





 今日は何だか長い一日だったな……。





ーーー








 スタ… スタ…





 「〜〜〜〜〜っ……//////////!!!!!」




 私は小柳こやなぎ家の外で今年一の声を出さない悶絶をしていた。

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