第17話 俺は幼馴染の異性の家に行ったんだけど…




 「………………」



 さて、どうしようか………。


 俺、小柳隼人こやなぎはやとは悩んでいた。


 え?何がって?


 それは決まっている………。





 

 大柳柚葉おおやなぎゆずはの家のマンション前にいて入るか悩んでるからだ。






 理由……それは今日の朝……、



 「隼人ー」

 「ん?」

 


 俺は母親の美月みづきに声を掛けられた。



 「柚葉ちゃん……熱あるんだって」

 「……………え?」

 「多分、疲れがあるからなのかな………」

 「」

 「お見舞い行く?」

 「!!!」

 「行くんだったら予め柚葉ちゃんのお母さんに連絡するから」

 「…………分かった……行けたら行く」

 「……分かった!」

 


 お母さんは少し嬉しそうに返してきた。



 




 と言う訳で、








 「………………」



 俺は柚葉のマンション前にいた。



 「」



 やっぱ凄い綺麗だよな………、高級マンションなだけあってさ……。なんか入るのに怖気付いちゃうわ…。そもそも友達の家に行く感覚がもう覚えてないくらいだからそこで緊張してくるんだよな……。それで何段階もステージが上がった異性の超美人な幼馴染の家だぞ…?どういうことだよ……。来てしまったからには入りたいけどさ……。どうやって入ればいい?



 「あ、小柳隼人です!!」



 んーー…。



 「お見舞いに来た小柳隼人です!!」



 あーー…。



 「柚葉ちゃんに日頃からお世話になっている小柳隼人です」



 

 なんか遠のいたな。なんて言って家に入れば……そもそも、家には柚葉のお母さんもいるんだよな?それじゃあ、いつものノリは絶対にできないぞ……。したら死ぬと思わないと……。



 

 そう俺はマンションの入り口前をウロチョロして考えを張り巡らせていた……。





 「あれ?隼人君?」

 「!!!」




 俺は突如名前を呼ばれ、思わず呼ばれた方向に顔を向ける。



 「あ………」



 それは………、



 「あ、やっぱそうだー!どうもお久しぶりです。大柳柚葉の母親の大柳木乃葉おおやなぎこのはです!覚えてるかな?」

 「」



 

 そう、その方は柚葉に負けず劣らずの美人さんである……スラリとしたスタイル、黒のセミロングをして、プックラした唇……そして、人の目を引く物腰柔らかな雰囲気……、




 柚葉の母親の木乃葉このはさんだ。





 「お、覚えてます!!!いつも柚葉にお世話になっています!!!小柳隼人です!!お久しぶりです!!!」



 俺は全力で頭を下げる。



 「あ、久しぶりと言っても高校の入学式の後に会ったもんね」

 「!……確かに」

 「……………」




 そして暫く無言で俺は木乃葉さんにジットリ見られる。




 「………………あ、あの…」




 俺はその視線に居た堪れなくなり、思わず声を上げる。





 「あ、ごめんごめん!!!……本当に成長したのね……なんか感慨深くなっちゃって」

 「あ、ありがとうございます!!」

 「今、柚葉は自分の寝室で寝ているよ」

 「あ、そうなんですか………」

 「大柳家の号室覚えてる?」

 「え……あ、覚えてます……」

 「あ、それじゃあ家の中に入って待っててよ!!」

 「え」

 「今は、兄の大輝がいてくれてるから鍵は空いてるし……と言ってもホーンは押してね?」

 「…………は、はい………」



 

 俺は何も言えずに言われるがままに木乃葉さんに入り口のロックを解除してもらい、マンションの中へと入って行った。因みに木乃葉さんは柚葉のために飲み物を買いにドラッグストアへと行こうとしていたらしい。





 と言う訳で再び……、







 「………………」





 俺は大柳家の号室である、406号室前をウロチョロしていた。やっぱ緊張するんだよな……。柚葉の寝室はどんな匂いするんだろう……………、バカバカバカバカ!!!!!そんなこと考えるなバカ!!!!普通は入れないもんだろうが!!!柚葉を寝室に毎度入れている俺の感覚が普通じゃなくなっていたんだわ……、






 男性の寝室……、





 まぁ、俺は幸いそんな凄い18禁グッズとかの卑猥関連な物は寝室にないから別に誰でも入ってきてどうぞだった。但しスマホの中身は見せれないけど………、でも俺のイメージ的に普段女子が絶対に訪れない男性部屋は"染み"がありそう……。いや、物凄い偏見なので違うんだったら俺を好きなだけ罵ってくれていいです!!!…ともかく!!!普段訪れない女子の家はどんな感じなんだろう……特に柚葉の寝室なんて………最後に訪れたのは中学だっけ?


 いや、



 柚葉がモデルの仕事を始めたのが中1だから……小学生くらいの時か?それでこのマンションに引っ越してきたのも大輝君が中学の時だから………あ、そう考えると大柳家の家にまともに入ったことがあるのは5年以上前かも……。





 「」




 俺はチャイムに手を伸ばす…。


 

 「……ぐっ………」



 その手が異様に震える…。だってそうだろ!!!女子の家にお邪魔するんだから……。




 そんなこんなで数分経つ…。




 「やべぇ……心の準備が……」




 俺は項垂れている……。怖くて入れないから…。

 




 「隼人。何してんだ?」

 「!!!」





 その俺の名前を呼んだ主……、

 それは…、





 「た、大輝君………こ、こんにちは」




 そう、柚葉の兄の大輝君だった。




 「母さんから隼人がこれから入ってくるって連絡あったのに来ないから……だから確かめようとした」



 そう真顔で淡々と語る。



 「す、すみません…モタモタしちゃって」

 「それじゃあ……入って」





 そう大輝君は俺を招き入れた。





 









ーーー








 「…………少し、楽になったかな……」



 私、大柳柚葉おおやなぎゆずはは自身のベッドの上で独り言を呟く。



 「…………隼人」




 そう、私の幼馴染の小柳隼人がお見舞いに来てくれると母さんから聞いた。




 「………会えるのかな……」



 

 会いたい。

 それが本音だ。




 「でも………………」

 



 私は回らない頭で考える……。




 




 「パジャマ姿はエロくないよね……?」







 今思うと相当くだらないことを考えていたと思う。"風邪を移さないかな?"とか"来てくれて嬉しい"とかではなく、そう、自分の見た目ばっかに頭がいっていた。




 だってそうでしょ?




 今、ノーブラなんだもん。それに赤みがかった顔で汗もかいている。それに頭がぼんやりしていてなんだか夢の中にいる気分………なので隼人が興奮しないか不安。隼人の性欲に着いていける元気が今はない……。だから私は隼人が来てくれるのは嬉しい反面、ちょっと怖いの気持ちがある。







 コンコン。







 「!!」






 『隼人が来たぞ』




 お兄ちゃんの声だ………え?隼人が来た?




 ガチャ…、




 「大丈夫か柚葉?」

 「………だ、大丈夫……え?隼人……来たの?」

 「来ちゃダメだったのか?」

 「い、いやいやいや!!!ダメではないよ……」

 「それじゃあ………隼人」

 「」




ーーー




 「それじゃあ………隼人」

 「あ、入っても大丈夫ですか?」

 「おう」

 



 そうして俺は柚葉の寝室に入ろうとしていた。

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