第30話 それが私と隼人の"関係値"でしょ?



 ガチャ。




 「どうかな?」

 「」




 俺は柚葉の寝室に入った。柚葉の寝室はなんと言うかやっぱとても良い匂いがする。どこか気が抜けるような……安心感があるような……、



 そしてだ。



 俺はベッドに座る柚葉と向かいっていた……、



 水着姿の"筈の"大柳柚葉おおやなぎゆずはと。




 「何でまだ布団で隠してんだよ」

 「あ………ついね」

 「……………」



 柚葉は赤みがかった顔で俺を見てきている………。

 あーー……、終わった。



 「……………」



 俺、うまく喋れてないんだもん……。




 興奮して////////。




 「は、隼人?」

 「大丈夫です大丈夫です大丈夫です大丈夫です」



 俺は顔を背けて呪文を唱える。



 「お、落ち着いてよ…」

 「お、落ち着いてますとも!!」

 「………それじゃあ…私を見る?」

 「」




 やべぇ…"私を見る"の一言で勃起してきたんだけど……。

 つーか、"見て"だろ。



 「あ、もしかしてもう私の顔だけを見て満足して?」

 「その意味深な問いかけやめてよ!!」



 俺はそんな女子みたいな返しをする。



 「まぁ、大丈夫だって。ただの私の水着だから♡」

 「大丈夫な要素が一つもねーから!!しかも矛盾してるわ!お前の水着だからヤバいんだよ」

 「え?何で?」

 「お前はマジで俺を揶揄ってんのかよぉ………//////!!!!!」

 「ともかく一度ちゃんと見てくれる?」

 「あ…………」



 そうだよな……ちゃんと見れてなかった……なんの水着着てるんだろ……。顔しか見てなかった…。



 「ほら」



 そう優しく囁くように柚葉が喋る。



 「………………」



 俺はゆっくり布団を広げて水着姿をした柚葉を見ようと目を開ける。



 「…………あ」

 「」




 俺は見た。

 



 「可愛いかな?」



 「」










 

 水着は青のブラジリアン三角ビキニだった。










 「」


 嘘だろ?


 白く透き通る足、腕、胴体……そして、そのくびれがある腰に豊満な胸………何より……、




 整った顔を崩して目を逸らして俯き気味の、恥ずかしがる柚葉は……とても……、






 とても可愛かった。






 「それで………どうかな?」

 「………まぁ……悪くないと思う」



 俺は必死にポーカーフェイスで気取る。



 「素直になりなよ(笑)」

 「何だよ。可愛いって言ってもらいたいのかよ?」

 「あ………言っちゃったね」

 「!!……お、お前に言わされたんだよ!」

 「言い訳乙(笑)」

 「別に可愛くない訳じゃねーけど……可愛いと認めたくないんだけど」

 「どういうことよ」

 「だから……俺は可愛い…………可愛いとは思ってない」

 「何その結論(笑)。矛盾しまくりじゃん」

 「つーかお前こそ恥ずかしいとか言ってんのになんか普通じゃね?」

 「なんかあまりにもデレる隼人を見たら恥ずかしがるのがバカらしくなった」

 「…………そんな俺は恥ずかしがってたのかよ」

 「めちゃめちゃピュアってたよ?」

 「あーうるせうるせ!!とにかく!!!お前の水着姿は似合っていた!!!可愛いんじゃねーの!!!?だから着替えろ!!リビングで待つ!!!」



 バタンっ!!!




 俺は柚葉の寝室から出る。




 そして………、




 「あーーー……//////」




 廊下にへたり込んでいた。




 「…………なんか柚葉の水着姿で頭がいっぱいだわ」





ーーー



 バタンっ!!!



 隼人が私の寝室から出ていく………。




 「………………」





 ブアッっっっっ!!!!!!






 私はベッドからずり落ちて床に座り込む。




 「恥ずかしかったぁ〜〜〜…………//////////」


 そしてこう呟く。

 だって本当に恥ずかしかったんだもん……。なんか…隼人の方が緊張してるみたいな感じだったからあえて言わなかったけど私も吐きそうなくらい緊張してたんだけどね。あー、マジで隼人は期待を裏切らない反応をしてくれるな……。投げやりな返答らしく返してきたけど要は……、





 この姿も好きって思ってくれたってことなのかな//////?





 「あーーー…………着替えたくないな」




 私はまたポツリと呟く。だってそうでしょ?好きな相手が喜んでくれて"可愛い"って言ってくれてるこの姿でいたいと思うのに特別な理由なんてないじゃん。



 そして私はしばらく枕に顔を埋めていた。









ーーー







 「」



 俺は悩んでいた。



 「どうしよう」



 何故かって?そりゃあ勿論………、






 "抜き"たくてしょうがないからだ。





 当たり前だろ?

 もう我慢できないくらいビンビンなんだわ。

 だからって大柳家で行うのは流石にダメすぎるからな……どうしようかな………、



 『まぁ、大丈夫だって。ただの私の水着だから♡』




 ビクンッ!!




 大丈夫じゃねぇわな……。色々と大丈夫じゃねーわ!!!今だとおしっこしたついでに出ちゃいそうだわ……、帰ろうかな?でもなんて言って帰る?



 「あー、なんかちょっと体調悪いから帰るわ」



 もうこれしか思いつかないな。強引にこれで帰るしかねーよな?どうしよう……。




 あ。




 「家にちょっと帰るわ」




 あーいやいやいや。何、名案みたいにこれを閃いた感じにしてんだろ。凄い不自然過ぎるわ。




 「ちょっと柚葉が可愛過ぎるから気分悪い…………」



 

 ダメだダメだ……、もう思い浮かばねーわ……意味が分からなくなってきた……。




 「でも可愛かったんだよな〜〜////////」

 「何が?」

 「!!!!!!!!!!!?」

 「驚きすぎだよ」



 そう気づいたら柚葉がリビングにいた。半袖短パンに着替えていた。



 「それでそれで?旦那は何が可愛かったと仰っていたんで?」

 


 柚葉がイヤらしく笑いながらジト目で俺を見てくる……コイツめ…。



 「………ん?………何が?」



 だが俺はシラを切る。



 「いや誤魔化すの下手すぎだって(笑)」

 「いやだから何がって?」

 「意地でも言わないつもりなのかな?」

 「ん?だから何が?」



 俺は知らないふりで乗り切るしかないと腹を括りひたすら疑問形に逃げている。卑怯ではない。戦略だ。



 「…………やっぱ隼人は正直だな」

 「ん?何が?」

 「何だと思う?」

 「ん……ん?何が?」

 「隼人は顔に出すぎているよ?」

 「え………い…………ん?何が?」

 





 「柚葉可愛いって」






 「」



 その時、俺は固まった。色んな意味で……でも何故か……"下"は冷静だった。



 「やっぱ正直だなーー(笑)」

 「お、お前はそんな可愛いって自分で言って恥ずかしくねーのかよ?」

 「え?恥ずかしいよ?」

 「」

 「でも隼人の可愛いはなんか心地がいいや」

 「え?」

 「とても……なんか素直に受け入れられる。だって正直者の言うことだもん?素直に言ってくれたらそりゃあ嬉しいよ?」

 「…………お前は俺を越える変態だな」

 「隼人には言われたくないな(笑)」

 「それじゃあ俺以外の奴に正直に言われたら?」

 「…………何とも」

 「え」





 「隼人が言ってくれたから嬉しい。それが私と隼人の関係値でしょ?」




 そうニッと柚葉は笑ってきた……。

 本当に何っなんだよ…!!!




 本当に……。

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