第31話 女子更衣室に入ることよりレベルの高いことしてね?



 「それじゃあこれから何する?」

 「……別れる?」

 「やだやだ!!折角家に隼人を連れきたんだから何かしたい!!」



 水着を見せ終えた後、私は隼人とリビングでゲームをしていた。因みに格闘ゲーム。



 「何かするって言ってももう15時前だよ?」

 「まだ15時前じゃん?」

 「……それじゃあ柚葉は何したい?」

 「んーーー……あ」

 「何?」

 「お風呂ごっ」

 「だからそれは無理だって言ってんの!!!」


 "お風呂ごっこ"って何をするつもりなんだよ……。

 一緒に湯船に入ったりってことか?流石にヤバすぎんだろ……。

 

 「いや、流石にそんなことしないよ?」

 「え?」

 「一緒に裸で入るとかそんな大胆な真似はしないよ?」

 「」

 「流石に変態さんでしょ……」

 「……だよねだよね!!!?当たり前でしょ?そんな裸でやるなんて思ってないから!!!!」

 「何で焦ってんのよ(笑)?」

 「ぐっ……!!!!!!!」

 「まぁ、冗談はともかく……何かしたいよねー」

 「……何かしたい……話すだけじゃダメなの?」

 「話せば話すほど隼人のポロが出まくってるけどいいの?」

 「え?そんな出てる?」

 「出てるじゃん。現に今」

 「……」




 確かに出まくってるわ……。

 恥ずい…。




 「んーーー……なんかないかな……」

 「ないんだったら無理にする必要ないんじゃない?これから…」

 「嫌だ」

 「」

 「隼人といる時間は私にとっては特別なの!!だから、適当に過ごしたくない」

 「……」



 柚葉がそう声を強めて答える……。



 「特別ってのは俺を散々弄べるおもちゃだから?」

 「」



ーーー



 「特別ってのは俺を散々弄べるおもちゃだから?」



 隼人はそう普通に聞いてくる。

 


 「……」




 はぁーーーーー。

 


 「バーーカ」

 「!!」



 私は思わずそう言っていた。



 「バカってのは俺のことかよ?」

 「隼人と私自身に言っている」

 「何で俺にも言ってるんだよ!」

 「」



 隼人はマジで言ってるのかな……。

 まぁ、そりゃそうだよな……。

 まだ私から好きなんて言ってはないもんな…。そもそもお母さんに言っていた"好き"もちゃんと異性としての好きとは限った話じゃないしな……。


 あーー……なんか思い通りの返事が来ないと少し焦ったくなるわ…。



 「まぁ、今はおもちゃだよね」

 「はぁ?今はって?」

 「今後おもちゃ以上になりたかったらもっとお互い成長してからってこと!!!」

 


 私はそう答えた。



ーーー



 「まぁ、そうだな。でも俺は今のままでも十分なんだけど」


 俺は"本心を混ぜて"答える。


 「何で?」

 「だって楽しいから」


 これは本心。


 「」

 「そして柚葉を見て"あー、コイツバカだな"って見て"俺はマシ"だって安心できるから」



 ドスっ!!



 「ガッ!!!!」



 そう笑顔で"嘘の方"を言ったら柚葉からの肩パンを喰らった。

 

 痛かった。




 「だから蔑みの目はするな」

 「だって、本当のことじゃん」

 「隼人の本当でしょ?」

 「」

 「私の本当じゃないじゃん」

 「え?じゃあお前の本当はなんなの?」

 「前にも言ったからもう言わない」



 あ、確か俺から性的な目を向けられることが好きなんだっけ?いやそもそもは俺といることが楽しいんだよな……、本当に変態だ。



 「まぁ、とにかくこの話はおしまいね」

 「はいはい(笑)」

 「なんか嬉しそうだね」

 


 柚葉はジト目で俺を見る。



 「まぁな」

 「……そんじゃあ本当に何する?」

 「……」



 マジで思いつかないな……。



 「あ!!じゃあ、これしない?」

 「何?」

 「シャボン玉」



 柚葉は名案見たく言う……。





 「……んーー……なんかないかな」

 


 ドスっ!!!!!



 「うがっ!!!」

 「無視すんなコラ」



 そう俺に手刀を放つ柚葉。



 「いやだって……この歳で楽しい?」

 「普段やんないから楽しいと思うけど?」

 「……そうかな……」



 んーーー……シャボン玉……か。



 「あ、そういえば私言ったよね」

 「え?」

 「シャンプーだと大きいシャボン玉が作りやすいって」

 「言ってたなそういや」

 「どう?やんない?」



 柚葉が凄いやりたそうな顔を俺に向ける。目を輝かせてる……この感じ久しぶりな感じだな……。



 「シャンプーってどれを使うの?」

 「家にある奴を少し使えばいけるよ!!」

 「そんなしょうもないことに使って怒られないの?」

 「大丈夫大丈夫!!すこーーしだから!!最悪、新しいのを買えばいいんだし!!」

 「……で、どこでやる?」

 「んーー……よし!!」



 と言う訳で今……、



 


 大柳家の風呂場にいる。






 「私が"お風呂ごっこ"って声に出していたからそれがジンクスになったね!!」

 「……そっすね」



 あーー、何なんだよ……、

 これが柚葉がいつも裸でいる所……。



 女子更衣室に入ることよりレベルの高いことしてね?俺……。しかもめっちゃいい匂いするし…!!あ、柚葉の匂いか?つか水着見た上でこんな場所にいたらもう……なんか今日はグッスリ眠れそうだわ。



 「隼人ー、そんな発情してないで早く動画撮ってよ!!」

 「は、発情……そんな声を上げて普通に女子が言う言葉じゃねーだろ!!」

 「え?じゃあしてないの?」

 「……教えない」

 


 因みに今の状況は柚葉が風呂場の椅子に座り、シャンプーを手に塗りたくってアワアワにして、俺はそれを動画で撮って大きいシャボン玉を作れるかを証明しようとしている所だ。



 「大きかったら私の証明は本当になるってことね?」

 「そうだな」

 「だから私の命令聞いてね」

 「はぁ?」

 「それじゃあ行くよーー?」

 「」




 柚葉の濡れた足……綺麗だな。

 あ、なんか胸の谷間でシャボンを作るみたいなのも見たことある気が……やめろやめろやめろ、考えるな俺。




 「フーーーーー」




 柚葉は丸めた人差し指と親指の輪っかにかかったシャボンの膜を優しく……吹いた。




 フワァぁ……。




 「」



 その泡はとても大きく、とてもウネウネ動いていた……。まるで生き物のように割れないよう飛び続けたいみたいな意志を感じるくらいだ……。



 「」



 柚葉も意外にも興奮しないで静かに眺めていた。



 パッ!!!!



 そして消えた。




 「……隼人見た?」

 「見たよ」

 「私……シャボン玉に命吹き込んでいた」

 「」


 "はああぁぁぁぁ?????"




 いつもだったら呆れながら柚葉の言う蔑みの目を向けていただろう…でも、不思議なことに柚葉の言うことに少し賛成している自分がいることに俺はなんか歯痒かった。普段からおバカだって言っているこの柚葉に。本当に16歳児の柚葉に。





 ドスっ!!!!!!




 「ごっ!!!!!!」

 「だから蔑みの目はやめろ」




 俺はアワアワの柚葉の手刀を喰らった。

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