第29話 今頃になって恥ずかしくなっちゃった…//////




 俺と柚葉はしばらくリビングで駄弁っていた。




 「それじゃあそろそろ水着タイムと行くか」

 「……」



 そして柚葉がそう声を上げる。



 「マジで水着姿見せてくれるの?」

 「見たくない?」

 「い、いや……」

 「あーでも……襲われたくはないな…」

 「お、襲わねーから!!!」

 「えー?ほんとー(笑)?」

 「流石に幼馴染だからってそんな変態行為はしない……あ、お前も変態か」

 「そこで思い出したように言わないでくれない?本当に変態みたく思われちゃうから」

 「実際変態だろ」



 俺は本心を言う。



 「やっぱ水着姿見せるのやめようかな」

 「あ、そう?」

 「いやいやそこは、"嘘嘘ごめんごめん!!変態じゃないから!!"とか否定して水着見たさの空気を醸し出してよ!!男子としては超夢物語なことなんだよ?私の水着姿が見れるなんてさ!!」

 「……いやだって……マジでどう反応すればいいのか分からないからさ……だからどうしようってさ……」

 「そこは素直になりなよ?」

 「素直になったら色々まずい」

 「え、マジで襲うつもりなの?」

 「ち、違うから!!別に襲うなんてことはしねーよ!!でも……あ、どうなんだろう……」

 「んーー……じゃあ水着はやっぱ写真にする?」

 「え?だから…」

 「あ、そういう写メで送るとかじゃなくてさ、今から寝室で水着に着替えてくるからそれを私が撮ってきてその写真を直接私のスマホで隼人にみせるってこと」

 「……手間かかり過ぎじゃない?」

 「思った。面倒だ」

 



 そして俺は覚悟を決めた。




 「柚葉。いいよ、やっぱ直接見せて」

 「!!!」

 「やっぱ下心を全部なくすことはできないけどさ……それでも柚葉が見せたいって言ってくれてるんだからちゃんと見たいなって俺も思う」

 「……いいの?」

 「俺は俺を抑えつけるから!!」

 「どういう意味だよ(笑)」

 「ごめん、俺もよく分からない……」

 


 まぁ、柚葉の水着姿は確かに男子達からしたら夢物語な姿ではあるよね……。




 「でも本当に見せてくれるの?」

 「勿論。流石に誰にも見せずに終わるなんてつまらないことはしないよ?どうせ遅かれ早かれ見られるんだし……それで隼人は最初に見る権利があるから見せるってなだけね」

 「見る権利とは?」

 「……そこは気にしないでいいよ」

 「いや一番気になるんだけど……」



 俺は見ていいのか……。

 最初に……、




 ん?




 「それじゃあいつもは新しい水着を買った時は最初、誰に見せていたの?」

 「え?お母さん」

 「それなのに今回は俺でいいの?」

 「だからいいんだって!!隼人は私の水着を見る権利があるんだって!!」

 



 俺は一つの仮説に辿り着いた。




 「"俺に見せたい"の?」

 「」

 「つまりは一番は俺じゃなきゃ嫌ってこと?」

 「……」



 あーやべ、何聞いてんだ俺……。別にそんなことはどうでもいいよな……。




 「見せたいけど?」

 「」

 「私は隼人に一番に水着姿を見てもらいたい」

 「……え?」




ーーー

 

 

 「見せたいけど?」



 あ…。



 「」

 「私は隼人に一番に水着姿を見てもらいたい」



 私……、


 「……え?」





 何言ってるんだぁ〜〜///////////??????



 


 なんか隼人がウジウジしてるからちょっとムッとしちゃったよ……?だから…思わず口に出しちゃった……。とは言え……、流石に……なんかキモいかな?




 「」



 やばい、隼人の顔が見れないよ…。どうしよう……いくら一番に見せたいとは言えもう少しオブラートに包んだ言い方の方が良かったかな…?



 「柚葉」

 「ひゃっ、はい!!!!」

 「……俺を揶揄いたいの?」

 「」




ーーー



 「……俺を揶揄いたいの?」

 「……ん?」

 「俺を赤くしてやっぱ性的な目で見られたいんでしょ(笑)?」



 俺はこう言った。



 「……」




 ドスっ!!!




 「うげっ!!」




 俺は柚葉からかなり強めの手刀を脳天に喰らった。そして……、



 「とりあえず水着着てくるからここで待ってて!!!!」



 頬を膨らましながら俺にジト目を向けて少し拗ねながら柚葉は言ってきた。



 「お、おう……」



 バタン。

 そして、ドアが閉まる。



 「……はあぁーー……危ねぇ……」



 俺はへたり込んだ。




 嘘だよ?

 柚葉の顔を見れば揶揄ってるのか本気なのか分かるよ。

 柚葉は本気で俺に水着姿を一番に見せたいって思っていた。何故なのかは分からない……けど……、


  "初めてを俺で体験したい"


 と前に言っていたからそれに繋がると思う。つまり……、



 柚葉は俺を信頼している……。そう受け取ることもできる。一番にして良い相手だって……。分かるんだよ……でもさぁ……俺の心の準備ができてないんだよ……。






 "好きな人"の水着……、どんなもんなのか……。




 そして……、





 「……あれ?」




 30分経つのに柚葉がやってこない。




 「どうしたんだろう…」



 ティロンっ!!



 「ん?」



 柚葉からラインが来た。



 [ごめん。急に恥ずかしくなっちゃった]



 「」



ーーー



 

 どうしよう。

 あれだけ見せる見せるって言いまくっていたのにいざ見せるとなると凄く恥ずかしくなってきたんだけど…。



 私は自分の寝室でベッドに顔を埋めていた。



 どうしよう……なんて言おう……水着姿なんて異性の男子に見せようとして見せるの今回が初めてじゃん……。



 「……とりあえずラインしよ」




 フォンっ。



 [ごめん。急に恥ずかしくなっちゃった]



 私はそう隼人にラインを送った。



 ティロン!!



 返事が来た。


 [それじゃあ無理に見せなくていいよ。見せたい時にまた見せてよ]

 「」




 違うよバカ!!!!隼人が見せてって言ってよ!!!アホ隼人!!!いくじなし!!!隼人が見たいんだったら私は見せるんだからさ!!!



 いや……、ちょっと自分勝手過ぎるかな……。でも……、





 あ。



 

ーーー




 [でもどうしても隼人に一番に見せたいんだよね]

 


 そう柚葉からラインが来る。

 やっぱそんな見せたいのか……。




 [だからさ……隼人が私の寝室のドアを開けて?]



 「え」



 [隼人から見に来てよ]

 [えーとつまりは俺が柚葉の寝室に入って見に行くってこと?]

 [そういうこと]

 


 「」





 はあぁ…!!!???




 


 と言う訳で今、柚葉の部屋の前にいる。

 


 「……」



 勇気が出ねーよこれ……。なんて言って入るのが正解なんだ?いや、その前にノックして返事があったら入るで良いんだよな?うわー……何これ……なんかこうまでして見せたいのかと思うと少し執念みたいの感じるよ……。




 コンコン。




 俺はノックした。




 『はーい。どうぞ』




 その声を聞いて俺は……、




 ドアを開けた。

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