第33話 嬉しくない訳がないじゃん。
「それじゃあ、そろそろ帰るね」
俺は柚葉にそう言いその場を去ろうとしていた。
「あ、あ…はい」
「柚葉?」
「ん?」
「どうしたの?」
「い、いや……何でもない……」
「………」
この時、俺は混乱しまくっていた。
足臭いはショックだった。
でも、その後に……、
『隼人の足の臭いは好きだから!!!いや、寧ろ隼人が好きだから!!!!』
言ったよな???
俺の聞き間違いじゃなきゃこう言っていたよな?
足臭いで頭が一杯だったけど何言ったかは一応聞いていたぞ?柚葉は俺が好きなのか?
ーーー
ヤバい……頭が回らない……どうしよう……、
私言っちゃった?好きって言っちゃったよね?でも隼人普通そうだし………本当に聞いてなかったってことなのかな?
どうしよう………、
「柚葉」
「ん?」
「本当に帰るよ?」
「…………え」
「」
「帰るんでしょ?なんか居座りたい理由でもあるの?」
あ、なんか私冷たい?
「…………帰っていいの?」
「寧ろ帰りたくないの?」
「…………なんか……足臭いって言われてどうしても帰りたくないんだけど。なんか、靴履いて外に出るのが怖いんだけど……と言うか靴の匂いを嗅ぐのが怖い」
「それは本当にごめん。でも、本当に隼人の足を臭いって思ったことはないから!!!」
「本当?」
「本当だよ!!嘘じゃない!!」
「……………」
ーーー
俺は何とか嘘の理由を取り繕ってもう少し柚葉の本心を聞き出そうとしていた。正直、足が臭いから帰りたくないってのは無茶苦茶な理由な気がするけど………。でもいくら俺でもそこまで足の匂いを気にするほどネチネチ気質ではない。だけど、柚葉の好きを深掘りしたい気持ちもある。
でも………、
「じゃあ、帰っていいのね?」
「だからなんで私に確認するのよ(笑)」
「………………」
「あ、じゃあ一緒に散歩する?」
「え………」
「一緒に話しながら帰る?」
「………話す?」
「そうそう。家で話すよりも歩きながら話したほうが……」
「いや、いいよ」
「え?」
「暑いし柚葉の肌に悪いよ。話すんだったら家の中で話そう?」
あ、でも今は夕方だしそこまで日は差してないか?でも、暑いのは変わらないしな………。
「………………」
「………」
俺と柚葉は暫く無言でいた。まぁ、なんか気まずいもんな………。
「そのさ………さっきの話に戻るんだけど」
「ん?」
柚葉が切り出した。
「裏の話。隼人が"裏は何だと思う?"って言ったじゃん?」
「言ったな」
「隼人っていずれは私とは関わらなくなるとかって考えてた?」
「」
ーーー
「隼人っていずれは私とは関わらなくなるとかって考えてた?」
私はこう聞いていた。一応、裏だから質問形式で聞けばいいからあの時、言っていたことを今質問しても全然不自然じゃないよね?だから私は質問していた。
「………どうしてそう思うの?」
「何となく……隼人は私とずっと関っていたいと思ってくれていたのかなって気になってね」
「……………柚葉は俺とずっと関わっていたいって思ってたのかよ?」
「質問を質問で返さないでよーー?」
「……………まぁ、少しはあったけどね」
「え?」
「俺は柚葉といずれ関わらなくなるような人間だとは思っていたよ」
「………………」
ーーー
俺は柚葉にこう言っていた。
何でそう思って質問してきたのかは分からない。けど、嘘をつくのは柚葉に失礼だからちゃんと正直に答える。
「俺は柚葉とはいずれ関わらなくなる人間で多分、話さなくなるんだろうって思っていたよ」
俺最低かな……。
「……………何で……そう思ったの?」
柚葉は低い声音で質問してくる。
「そりゃあそうだろ。俺だぞ?俺みたいな人と関わるのが苦手で根暗で特に特徴がない俺だぞ?それとは正反対だろ柚葉は」
「」
「俺は柚葉とは関わらなくなる人間だろって思うのは何らおかしくないだろ」
「嘘」
「え?」
「嘘つかないでよ。そんな理由だけで私と関わりたくないなんて思ってる訳じゃないでしょ?」
「………………」
「本当は何で私と関わらなくなるなんて思ってたの?」
何を思って嘘だって決めつけてるんだよ………。
「…………嘘ではないけどな」
「それじゃあ更にその奥の本心を教えてよ」
「」
なんか柚葉のお母さんの木乃葉さんと話してるみたいだな………、柚葉には変な隠し事は通じないのかもな…………、
分かったよ。
「柚葉が俺の元から去るのが怖かったんだよ」
「」
「俺と関わるにつれて俺と一緒にいるのが楽しくなくなって"隼人はつまらない人間だ"と思われて、俺の側から離れられるのが怖かった。それだけだ」
「」
「これが裏……ってか、本心な」
「……………」
あーー……何で正直に言っちゃったんだろ俺……。俺の馬鹿。
「それが本心?」
「そうだよ。柚葉とは一応腐れ縁としてずっと一緒にただ笑ってあいたいって思った。それだけだ」
「……………」
ーーー
私は隼人から聞き出した。
"俺の側から離れられるのが怖かった"。
「」
や……、
やや………、
やったああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!!!!!
「そっかそっか、そーなんだーー(笑)?」
「な、何で嬉しそうなんだよ?気味が悪いんだけど」
「えーーー?だって本心聞き出せたから!!隼人の新たな私に向けての一面を見つけられたから!!」
「」(な、なんか急にテンションが上がり出した。イカれたか?)
「オラっ」
ドスっ!!!
「いって!!!!」
私は隼人を軽く蹴る。
「隼人は学習能力がないんだね。だから、バカにする視線は向けるなって言うの」
「で、でも、そんないきなりテンションの起伏がおかしくなると"どうしたんだコイツ"とはなるだろ?」
「…………それは認める」
「…………どうしてそんなテンションが高いんだよ?」
「秘密♡」
私はウインクで返す。
「」
でもそれは嬉しいことでしょ?
だって……だって隼人が私に新しい内面を見せてくれた……お母さんにしか見せてなかった一面を多少無愛想ながらも私に見せてくれた。
嬉しくない訳がないじゃん。
しかもそれは私と一緒にいたいって気持ちだった。喜ばない訳がないじゃん!!!!
「まぁ、ともかく第一歩が踏めたな」
「え?」
「あ、こっちの話」
ーーー
あー、柚葉に思わず本心言っちゃったよ…………、茶化されないかな………。
「そっかそっか、そーなんだーー(笑)?」
あれ?
「隼人の新たな私に向けての一面を見つけられたから!!」
なんか嬉しそう?
俺は思わず拍子抜けだった。でも……、
俺も不思議と嬉しくなっていた。
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