第66話 大好きなお兄ちゃんでも"これ"はいいのかな//?



 「あ、お待ちしておりました!!」

 「こ、こんにちわ」



 俺はある場所に訪れていた。そこは……、



 「あなたが隼人君ですね?」

 「は、はい!」



 通おうと思っている通信制高校のキャンパスだ。ここは俺の家の最寄り駅から20分くらい電車に乗り、その駅の近くの7階建てビルの3階にある。ビル自体が大きいのでなんて言うか一階だけしかないと言っても普通に大きい。




 そこへ、母さんの美月と一緒にやってきた。



 「それではこちらへ」



 俺達を案内する先生は物腰が柔らかそうだけど元気そうな見た目をした30代前半くらいの女性の先生だ。





ーーー





 「お兄ちゃん」

 「ん?」



 私、小柳柚葉は今家にいた。



 「その……夏休みにさ、夏祭りに行くんだけどさ……」

 「それがどうした?」

 「浴衣着ようと思ってる」

 「いいんじゃないか?で、それがどうした?」

 「……私、見た目変わった?」

 「」



 私がこう聞くのには理由がある。



 昨夜……。





 キュッ!!



 「あれ?」



 私は試しに浴衣を着ようとしたんだけど……。



 「」



 なんか……、




 浴衣きつくない?






 「お兄ちゃん。どうかな?」

 「どうと言われても…」




 私は大輝たいきお兄ちゃんに近寄る。




 「もう言っちゃうね。私……太ったかな?」

 「」




 リビングのソファーに座るお兄ちゃんに近づいて今、肘掛けに私は膝を乗せてお兄ちゃんが倒れかけている状態だ。つまり詰め寄りすぎてる状況。



 

 「どうかな?」

 「……別に太ったとは思わない。見た目はずっと変わらない」

 「本当?」

 「本当」

 「……それじゃあ抱っこしてくれる?」

 「え?」

 


 私は更にお兄ちゃんに詰め寄る。もう床ドンみたいな感じになってる(笑)。



 「私を持ち上げてほしい」

 「……いいの?」

 「隼人以外の異性にこんな話をできるのはお兄ちゃんかお父さんしかいないから」

 「……」

 「抱っこが無理だったらウエスト周りを触ってほしい」

 「」




ーーー




 大柳大輝おおやなぎたいきは追い詰められていた。




 え。妹を抱っこ?触る?

 


 良いのか?これ?



 一応家族と言ってももうすぐ17歳になる大人びた体つきの妹だ。寧ろ大人の女優クラスの美人過ぎる妹だ。いくら家族といえど、"一線"というのがある。だから、どう対処すれば良いのか分からないでいた。




 "やだ"。




 この一言で片付けようと思えばできないこともない。



 けど……、





 今の妹が頼ってくれている。そして、兄に触れられることを嫌がってない。




 「」



 そしたら……しても問題ないか?



 大輝は狭間に立って悩んでいたが少々煩悩に吸い寄せられていった。



 あ。



 勿論、妹が"壁を越えた好き"とかそういう重度なシスコンという訳じゃない。ただ……、




 今の妹に頼られて嬉しいって気持ちが強いだけ。



 んーー……。





 少々、他の人だったらなんて言うか考えよう。



 父親の碧志あおし



 「どこを触ればいい?お尻はダメで脇もダメで、首元はいい。だよな?初めから分かってる。分かってるからやらせてもらう」



 あ、なんかセリフがダメっぽい。なんか犯罪者になりそう。



 母親の木乃葉このは



 「えーー?私はか弱い女の子だよー?柚葉を持ち上げるなんて力がある訳ないでしょ(笑)?全くおバカさん♡」



 あー、地味にウザい。なんか弄り方に棘がある。やっぱオバさんだ。




 それじゃあ……隼人はやとはなんて言うんだろうか。一応隼人に見せる為に聞いてるわけだからまず、柚葉が聞くわけないのは分かっている。けど、もし柚葉にこう尋ねられたらどう答えるのかイメージしてみよう。なんか楽しくなってきたな。



 柚葉の彼氏の隼人。



 「え……いいの?……犯罪者とか言わない?」



 これはまず言うな。



 「んーーー……柚葉がやってと言うんだったら……どうしてもって言うんだったら……やるよ」



 あ。



 

 「まぁ、別に変な所を触ったりはしないから(笑)。したら蹴っ飛ばしてよマジで。でも……なんか緊張するから触り方がおかしくなったらごめん。だから、やめてほしい時はちゃんと言ってね?」




 模範だな。



 隼人はこう言うな。なんかセックスの前の決まり文句みたいな感じだけど恐る恐る言いそうだな。



 


 あ。





 思考が飛んでた。とにかく、柚葉にはなんて答えれば良いのか……それは……あー、なんか父さんの言いそうなことが地味に面白いから笑いそうだな。



 「お兄ちゃん?」

 「」




 大輝は我に返った。




ーーー




 「お兄ちゃん?なんか凄い無言だったけど何考えていたの?」

 「……何でも」

 「いやらしいことだったら少し軽蔑するからね?」

 「ごめん。ちょっと考えてた」

 「……もう(笑)……それで?触ってもらえる?」

 「後からクソ兄キモいとか思わない?」

 「え?思わないよ。お兄ちゃん大好きだし」

 「」

 「とにかくさ……ちょっと触ってよ」

 「…………分かった」



 そして、私はお兄ちゃんに触られようとしていた。





ーーー




 「良い先生だったねー」

 「そうだね」



 俺は母さんと帰りの電車に乗っていた。


 

 「スクーリングってあのキャンパスじゃない所でもやるんだってね」

 「パンフレットにも書いてあったじゃん」

 


 俺達は先程訪れた、鹿塚山火かづかやまひ高等学校のキャンパスの帰りだった。



 「今日はいなかったけど偶に訪れてくる子達もいるんだっね!!友達になれるといいね」

 「まずは話せるようになるとこからだよ」



 確かに、先生は良い人だ。でもそれは俺が元通っている通学制の高校の先生もそうだ。元担任の横山和俊よこやまかずとし先生だってとても良い先生だ。




 けど、




 問題は生徒との関係なんだ。

 


 「」



 同級生とかの歳の近い人との接し方を勉強しないと前には進めない。俺の一番の課題だ。仲が良い人だけと関われるだけじゃ今後困るからな。




 俺はそう思いながら窓の景色を眺めていた。



ーーー



 「それじゃあ……触るぞ?」

 「いいよ」



 私はお兄ちゃんにまずウエストを触ってもらおうとしていた。



 プニ。




 「はうっ…/////!!」

 「ん?」

 「あ……」




 私はお兄ちゃんの触られ方に少々"反応"してしまった。




 「あれ……なんか変だった?」

 「大丈夫……くすぐったかっただけだよ/////」

 「」



 


 どうしよう。思った以上になんか変な感覚だった。





 「それじゃあ触っていいの?」

 「続けて」




 ムニっ。




 「はぐっ!」



 

 キュッ。




 「ひゃうっ!!」




 プニィ。




 「うにゃっ/////!?」




 「……静かにしてもえるか?」

 「ごめん」




ーーー




 大輝は思った。






 "めちゃめちゃ喘ぐじゃん/////"。

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