第13話 "あーーん"するだけで俺はウブだと思わされる…。




 「それじゃあ、牛乳とお茶、どっち飲む?」



 俺は柚葉に質問する。



 「ホットケーキは乳製品と相性がいいから牛乳!!」



 柚葉は元気にそう答える。

 只今、ホットケーキを作り終えて食べようとしている所だ。



 「あー、じゃあカフェオレと牛乳は?」

 「あ、カフェオレあるの?」

 「あるよ」

 「それじゃあ、カフェオレ!!!今日は甘いの食べるから!!!」

 「養蜂場でも食べてきたんじゃないの?そんな甘いの食べて大丈夫?」

 「帰ったらエアロバイク漕いで筋トレするから問題ナッシング」

 「……………」




 ピースサインを俺に向けてする柚葉………。



 意識はしてるんだな。




 そして……、





 「じゃあ食べるか」

 「あーはいはいはい!!いただきますの掛け声は私がする!!!」

 「別にいらないだろ」

 「折角だからしたい!!!」

 「…………」



 小学生の給食かよ……。

 まぁ結局…、





 「それでは手を合わせてください!!」

 「」

 「感謝を込めて……いただきます!!」

 「…………いただきます」

 




 このようにして号令をかけた。




 

 「そ・れ・じゃ・あ〜、楽しみの蜂蜜をかっけましょうか〜〜♬」

 「なんかあげる本人がとても嬉しそうにしているな」

 「だって美味しいんだもん!!!本当に美味しいんだからね!!!」

 


 そうズイッと俺の方に身を乗り出してくる。

 因みにテーブルに向かい合って座っている…。

 なので、乗り出してきた時にほんのりとホットケーキ意外のとてもいい匂いが漂ってきた。




 「それじゃあ……かけてくれよ」

 「はーーい!!!」



 そうして柚葉は容器に入った蜂蜜を俺のホットケーキにかけていった。



 「うわーーー!美味しそー!!!!」

 「……………」




 なんか柚葉のテンションがやたら高いな……。




 「柚葉……なんか……どうした?」

 「え?」

 「テンションおかしくね?」

 「えーーー?別におかしくはないよー」

 「でも、いつもよりバカ面……いや、アホ面だからさ……」

 「訂正が訂正になってないんだけど?普通にディスってるんだけど?」

 「ごめんごめん(笑)。でも本当にそうだからさ」

 「…………んーー、特に細かい意味はないよ?ただ、美味しいものを一緒に隼人と食べれるのが楽しいってなだけ」

 「え」





 それでそこまでテンションが高いのか?




 「もっと言っちゃうと自分の頑張ったことを周りに教えられるのが嬉しいの!!」

 「何だ……そんなこと……変態だな」

 「いやそこは"子供だな"でしょ?何で変態なのよー?」

 「そんな小さい子のようなことをその16歳になってもやろうとする……つまり、変態」

 「何ひとつ理解できない理論で笑う(笑)」

 「俺も自分で言っていて意味が分からなくなってきたわ」

 


 そして、柚葉は蜂蜜をケーキにかけようとする。



 「あー、待って」

 「ん?隼人どうしたの?」

 「折角だから"かけてない"のと"かけたやつ"で食べ比べたい」

 「あー……それじゃあ市販の蜂蜜とも比べてみない?」

 「今、蜂蜜は切らしてて家にはないよ」

 「分かったー。じゃあ、食べ比べよっか♡」



 


 ということで今、俺達はテーブル前にいる。





 トローリとバターの乗ったケーキの上から蜂蜜を柚葉が垂らす。



 「どうですか?この出来は」



 そんな風にドヤ顔をする柚葉……。

 何を誇らしげにしてんだよ……。



 「私が作ってきた蜂蜜。つまり私の至高の模作品」

 「しょうもねーな」

 「そこは"模作品の意味、ちょっと違うよ〜。柚葉のおバカさん♡"くらい言ってよね」

 「それ全部ひっくるめてくだらないと思ったからこの一言」

 「辛辣っすね」

 「本当のことじゃん(笑)?」

 「……………隼人の意地悪」



 そうプクぅと頬を膨らましジト目といつもの拗ね方な柚葉。




 「まぁ、とにかくさ……とても美味しそうだね」

 「!!!でしょでしょ!!?」




 速攻で機嫌を直す柚葉……、

 チョロいなやっぱ。純粋無垢で素直、そして優しくて可愛い……、非の打ちどころがなさすぎるくらいな聖人だよな本当に……。だから怖いよ。犯罪に巻き込まれないかさ…。




 「隼人隼人!!」

 「ん?」

 「ほら食べてよ!!!あーーーん」

 「」




 そう言って柚葉はナイフで一口サイズに切り、それをフォークで刺して俺の口元に運ぼうとしている………、



 ん?




 「ほら、あーーーん」



 さも当たり前かのようになんの邪心もなさそうな顔でやってくる柚葉……、



 いやいやいやいや!!!



 「べ、別に自分で食べられるから大丈夫だよ//////」

 「えーー………」

 


 柚葉は少し顔を逸らす…、



 「私が食べさせたいんだよねー(笑)。だって……私が作ったやつだから」

 「」



 そう、髪の毛を触りながら少し照れるように顔を赤く染める柚葉……。



 「……………そ、それじゃあお願いしようかな……」

 「!」

 「あ、あーん……してよ////////////」




 俺はめちゃめちゃ赤くなっていた。




 「…………………ぷふっ!」

 「!!」

 「そんなにお願いするんだったら仕方ないよなーー。それじゃあしてあげるよー(笑)♡」



 そう、"悪魔の耳と尻尾を生やした"柚葉が意地悪く笑う………。




 俺で遊んでるなコイツ…。



 「それじゃあ食べさせるよー?いい?」

 「いいよ」






 そうして柚葉は俺の口元へと一口サイズのケーキを運ぶ。






 「」




 モグっ。




 「」

 「どうだった……!?」

 


 柚葉は聞いてくる。




 「……………ん。美味しかった」

 「」

 「なんて言うんだろう……やっぱ作り立てのやつって市販とはまた違った感じがするって言うのかな……とても甘く感じたよ」

 「………………」

 「柚葉?」

 「そっか…………そっか!!!」

 「」



 急に声を張り上げる柚葉。



 「美味しかったんだね!!」

 「まぁね」

 「………それじゃあさ……次は私にあーんしてよ」

 「」

 「やってあげたんだからお返しお返し♡」

 「…………」





 ブアッっっっっ!!!!!!!!





 「しないと……ダメ?」

 「ダメ」

 「えーー………/////////」




 俺は激しく心が高鳴っていた。いや、されるのはまだしもするのはなんか1人の男として……その、ちょっとさ……分かってよ!!!恥ずいんだよ!!!まぁ、妹や母さんにされるのとはまた違う恥ずかしさがあるんだよ!!!




 だって……、




 柚葉の口元がどうしてもエロいんだもん!!!





ーーー



 

 「しないと……ダメ?」

 「ダメ」

 「えーー………/////////」




 あー、私何言ってるんだろ……隼人を困らすどころか自分まで困らせてる……、


 正直、あーんはしなくたっていいのに……、



 ただ…ただ……、




 隼人との思い出を作りたいだけなんだよねぶっちゃけ(笑)。




 だから、印象に残ることをしようと考えた上で"あーん"しか思いつかなかった。





 私の思考回路…終わってるな♡(笑)。

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