"少し変わった"世界にて

第40話 報告会




 「………………」



 俺は今、悩んでいる。



 「あーー……言っちゃったわ………」



 それは当然……幼馴染の大柳柚葉おおやなぎゆずはと付き合うことになれたことに関してだった。先程、この俺の寝室で俺は柚葉に告白した。そして、柚葉の気持ちも知り、お互いの気持ちが通じ合ったということもあり俺達は恋人になった。



 「……………さて……マジでどうしようか……」


 

 まぁ、勢いがないと言えば嘘にはなる。けど……ここまで本当になんて言えばいいか分からないくらいの高鳴る気持ちはなんなんだろうか………。



 「…………嬉しいとは違うんだよな……」





 そう………安心の方が強いわ。



 "自分の気持ちを伝えられた"……そんな気持ちが勝ってる。



 「あーー………本当にさ…………夢じゃねーよな…?」

 


 そんな気持ちが強い。



 だから悩んでいる。

 

 "嬉しい"ではなく"良かった"の強いこの気持ちについて。


 あ、しょうもないとか思った人にはマジで"俺の怒りの鉄拳"を喰らわすかもしれないくらいに悩んではいます。







ーーー






 「…………………」



 私はベッドに横たわっている。


 「あーーー…………」



 そんな声にならない声を出しながら。



 「どうしよう………」



 本当に伝えてしまったんだ。自分の言いたいことをちゃんと本人に……。



 「…………うぐーーー!!!!」



 私は枕に顔を埋めて足をバタつかせる。


 

 「……………ほんとにどうしよう………」



 何にこんなに悩んでるのか?……それは……、



 「これからどんな顔して会いに行けばいいんだろ………」



 と言うことだ。



 「隼人と恋人……つまりは……もう子供を………ん?…いやいやいやいやいやいや!!!それは流石におかしい…/////////」

 


 ヤバい……欲が出過ぎてしまった。これはダメだ。今はこの思考は封印だ。



 「…………てか、キスしちゃったなぁ……」



 私はポツリと呟く。そう、私は隼人の頬にチークキスをしてしまった………、あーーー……。やってしまったかな?でもロシアだとキスは普通だってどこかで学んだ筈……。



 「……………あ〜〜〜〜…………!!!!!」



 私は激しく悶絶しまくった。



 


ーーー





 「ねぇ、母さん、桜」

 「ん?」

 「お兄どしたの?」




 俺は夕食の時間に母さんの美月みづきと妹のさくらに話しかける。




 「どうしたの?童貞卒業したとか?」

 「こら桜!!」

 「……………」



 俺は黙る。



 「ん?お兄?否定しないの?」

 「……………」

 「あれ、もしかして柚葉ちゃんと喧嘩しちゃったの?」



 母さんも俺の雰囲気がおかしいことに質問する。



 「いや、実はさ」



 俺は覚悟を決める。






 「大柳柚葉おおやなぎゆずはさんとお付き合いすることになった」






 「「」」



 そう言い切った。



 「…………お兄……マジ?」

 「マジ」



 あまり間をおかずに桜が聞いてくる。



 「マジなんだよ。嘘じゃない」

 「………………」




 桜は黙る。




 「隼人……」

 「ん?」

 


 ギュッ!!!



 「!!!」

 「おめでとーーう!!!!」






 そう言って母さんは抱きついてきた。






 「付き合ったんだね!!!良かった………本当に良かった……!!!!」



 母さんはそう言いなが泣き出してしまった。



 「い、いや、まだ付き合い始めただけだから!!そんな泣くのは………」

 「お兄、父さんにラインしといたよ」

 「お、おい!!!」

 「それで?どこまで行ったの?」

 「お、教えねーよバカ!!!!」

 「良かった…良かったぁ……」



 母さんは横で安堵しながら俺は桜の暴走を止めていた。



 「あ、それじゃあ親戚中に教えとく?」

 「お前は何でそんな拡散したがるんだよ!!!」

 「え?めでたいことだから」

 「やめて……マジで拡散はやめて?俺が言うから」

 「えーーーー?分かった。それじゃあ明日から柚葉ちゃんのことはお姉ちゃんって呼ぶね」

 「お前……許可は取れよ?」

 「分かってるって!!ちゃんと報告もするから!!」

 「え、何を?」

 「お兄は柚葉ちゃんをオカズにしてますが本当に…」

 「お前もう喋んな!!!」




 こんな感じで報告をしたのに桜からはおもちゃにされお母さんには泣かれ、何やかんやいつもと変わらない感じの明るい空気でした。




ーーー




 「あ、お母さん。お兄ちゃん。いい?」

 「ん?ユズ?」

 「……どうした?」




 私は木乃葉このはお母さんと大輝たいきお兄ちゃんに伝えようとしていた。お父さんはまだ帰ってきていないけど、とりあえず2人には言おうと思い、今に至る。






 「私さ……幼馴染の小柳隼人こやなぎはやと君とお付き合いすることになりました」





 「「」」



 

 そう伝えた。




 「……………おめでとう」

 「」




 お母さんはほとんど間を置かずに嬉しそうに微笑みながらそう言ってくれた。




 「良かった…な」




 大輝お兄ちゃんもそう言ってくれる。




 「……………」







 ブアッっっっっ!!!!!!!!





 「だ、だから私は隼人と恋人になった訳だから!!!でも関係は前とは変わらないからね!!!?」

 「そりゃそうでしょ?」

 「!!」




 「あなた達はいつも通り一緒にいれれば幸せ……それが私達の幸せでもあるんだから!!」




 「」



 母さんはさも当然のように言う…。


 

 「それじゃあ……俺は隼人を何て呼べばいい?」

 「え?」

 「隼人は俺の義弟に……なんだろ?」

 「」




 お兄ちゃんはそんなことを真面目な顔して聞いてくる。




 「…………それは追々で/////////」

 「分かった」



 「それで?どんな風に付き合うに至ったのかは聞いていい?」



 お母さんはさっきコップに注いだお茶を飲みながら聞いてくる。



 「え、えーと…………」



 私は目を泳がした。なんか恥ずかしいし……それに……、







 「俺は寝室に戻ってる」

 「!!」






 お兄ちゃんは突然そう言ってリビングから出ていった。



 「…………」


 言葉選びは不自然だったけど……つまりお兄ちゃんは私がお母さんだけに"今は"伝えたいという気持ちを汲み取ってくれた。




 「…………それじゃあお母さん、聞いてくれる?」

 「………分かった」




 

 私はお母さんに話し始めた。





ーーー





 大柳柚葉おおやなぎゆずはの兄、大柳大輝おおやなぎたいき。大学生。身長196cm。




 「…………隼人君……いや、隼人の方がいいか?」




 彼は真面目に妹と隼人が結婚して子供を作るとこまで考えていた。




ーーー







 「もしもし」

 『あ、隼人!』




 俺はその日の寝る前の深夜。柚葉に電話を入れていた。




 「その……言葉をうまく選べないけどさ……これだけは言わせてほしい」

 『ん?』

 






 「………これからよろしくな!!」

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