第24話 もう頼ってるんだよ。誰よりもさ。




 「俺さ……高校を転学しようかなって思ってるんだよね」



 ある日、俺は柚葉にそう告げる。



 「あ、そうなんだ。頑張ってね」

 「…………え?」

 「ん?」



 なんかあっさりしすぎじゃないか?



 「えーーと……転学するつもりなわけ……」

 「だから頑張ってね!!」

 「」




 あ、あれー?柚葉……何だか……




 「隼人が行くって決断したんでしょ?だから応援するよ?」

 「……………」

 「どうなろうと……………あれ……」

 「ん?どうした?」

 「いや………全然支障がないと思うことなんだけどさ……通信制に行くようになったら私とはどうする?」

 「」

 「このまま隼人の家に通ってちゃダメかな?」



 そっか………柚葉は不登校の俺の為ってことで毎日来てくれていたんだ………。


 でも………、



 「いや、このまま来てよ」

 「いいの?」

 「いいの。来てほしい」

 「……………」

 「退屈だからさ」



 そうだ……もう柚葉が来てくれる生活に俺は………。



 「いいの?」

 「いいんだよ」

 「………………」



ーーー



 私は悩んでいた。隼人とこのまま一緒にいたいのは本当だ。でも…………、このままだと私の体が大丈夫なのかと言うこともある。この前、熱を出したのも多分、無意識に笑顔で言おうと無理をしていたのもあるのかもしれない………いや、楽しいのは本当だけどね………でも、隼人に気を使っていたのも本当かもしれない。まぁ単純に仕事で風邪を移されたって言う線もあるかも………。





 「いや、このまま来てよ」

 「」





 私がふと言ったことに対して隼人は目を見てこう答えた。





 「いいの?」

 「いいの。来てほしい」

 「……………」

 「退屈だからさ」



 その声はどこか言い訳をしているような後味の悪い感じがあった。



 「いいの?」

 「いいんだよ」

 「………………」



 私はしばらく隼人を見つめる。



 「……………な、何だよ?俺の顔に何かついてる?」



 そして顔を赤くしだす隼人……。



 「なんか隼人っておバカっぽいよね」

 「はぁ?」

 「あ、ごめん。口滑った」

 「本心かよ。うわ、なんか急に言われて凄いムカついてきたんだけど」

 「いやいやーー、でも実際そうなんだからさー?」

 「だから急に毒舌になんな。なんか困惑するから」

 「はいはい(笑)」




 おバカっぽいってのは私で言う……


 "素直だな"って言葉を言うための私の照れ隠しな言い方ね//////// ♡





ーーー




 「因みにどうして通信制高校に?」



 柚葉はふと疑問を言ってくる。



 「正直、高卒認定試験の方が俺には楽だよ?」

 「だよね。隼人だったら勉強はできるんだからそっちの方が楽じゃないの?」

 「だからなんだよね………」

 「え?」

 「今の俺は柚葉や家族……身近な人達の前だとちゃんと話せてると思うんだけど、知らない人と話すのにはなれてないと思うんだよね……それだからバイトなんてもっての外だと思う……今のままだとさらに人間関係を拗らせちゃう気もするんだ…」

 「…………なるほどね……つまりは少しは高校生のコミュニティーで話せるようにしたいってことか」

 「そう。通信だといつも通う訳じゃないし、少数だしね。たまにスクーリングって大勢で行う授業もあるけど……ともかくそれに、いろんな理由を持って通ってきてるからまた、普通の通学制とは違った学びがあるかもしれないし」

 「そっか……………」

 「まぁ、お母さんがそう提案してくれたんだよね」

 


 やっぱ凄いよな………、親って。

 ちゃんとあまり話さない俺のことを見ているし…。




 「それじゃあ、友達作るというよりはまず、いろんな人と少しは関われるようにってことなんだね!!」

 「そうだ」

 「……………カッコいいなー」

 「え、カッコいい?」

 「カッコいいよ?自分のことをちゃんと考えて、人の意見も受け入れた上で自分ができるようにしたいことを見据えて動けてるんだからさ」

 「…………そっか……」




 俺は少しは成長してきているのかな……。




 「それじゃあ今の高校は辞めるってことなんだね」

 「まぁ、そうなるよな………」

 「じゃあさ!!今からお菓子買ってくるよ!!」

 「え???何で?」

 「隼人がまた一歩進んだパーティー!!!」

 「い、いや………まだ完全決定した訳じゃ……」

 「でも、高校は一応辞めるか転学しようとは考えたんでしょ?」

 「まぁそうだけど………まだパーティーしようってほど決意が決まった訳じゃないから。もう少し考えさせて」

 「……………そうだよね……ごめん。少し舞い上がってた」

 「」




 自分のことのようにここまで俺のことで喜んでくれるなんてさ………。




 「それじゃあ今日は軽くジュースで乾杯だね」

 「…………まぁ、それくらいだったら…」




 と言う訳で俺達はオレンジジュースで軽く乾杯した。




 

 「そうだよな」

 「何が?」

 「いやこっちの話」




 柚葉は教えてもらえる【権利】がある。




 「………………隼人」

 「ん?」





 「まず何か思いついたことがあったら私を一番に頼っても良いからね!!!」





 「」



ーーー



 私は隼人は家で休ませて、コンビニにジュースを買いに行っている間に考えた。



 "通学制の高校"を辞める。



 それは凄い決断だと思う。修学旅行や文化祭とか通学制でしか味わえない雰囲気を経験しないこと……。何と言うか私が味わうことを隼人は一生味わえないと言うこと………。それを言ったら逆でもあるからキリがないけどさ。




 でも、




 "それほど隼人は辛い思いをしていたんだな"…。



 そう考えてしまう。




 だから………、



 「それじゃあさ……隼人のタイミングがいい時にどうするのかできれば教えてね?」


 

 隼人を支えると決めた私には隼人がどうするか真剣に一緒に考えなきゃいけないと感じた。ただのお節介って言う人もいるだろうけどさ……。



 「…………当たり前だろ」

 「」



 私は知らないといけない【義務】があると思った。



 「まず何か思いついたことがあったら私を一番に頼っても良いからね!!!」





 こんな私を本気で好きって言ってくれた隼人を私は助け続けたい。




ーーー




 





 午後6時半。




 「あ、そろそろ帰ろうかな」

 「おう、分かった」



 柚葉と俺は軽くオンラインゲームをしていた所だった。軽くつっても1時間くらいやってたけど。



 「それじゃあまたね!!」

 「柚葉」

 「ん?」

 「今日は俺も送るよ」

 「」



 あれ?俺何言ってるんだ?



 「え?急にどうしたの?」

 「い、いや……別に細かい意味はないよ?ただ、家まで送り届けるよってこと」



 俺はあたふたしながら前髪を掻き上げながら決まり悪そうに顔を背ける。



 「…………じゃあ、お願い!!」



 そう柚葉は笑顔で肯定してくれた。











 「もう6月後半かー」

 「…………だな」




 初夏の夜は暑い。もうそれだけだわ。




 「そういえば柚葉はテストの方はどうなの?そろそろ期末の時期だよね?」

 「」




 あ、なんか急に悪寒が……。




 「………まぁ、赤点で補習なんて真似にはなってないよ?ちゃんと平均点以上は取れてますのだ!!」

 


 胸張って言えることではねーな。



 「あ、夏休みも近いもんな……」

 「…………まだ長いよ」

 「まぁ、それもそうかもな」




 そんな話をしながら柚葉を俺は送っていった。




 



 柚葉……。さっき言ったことに一つ言わなかったことがある。一応、全てのことの考えてる段階のことは柚葉に一番に教えてるんだよな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る