第23話 何かあっても最後は君と…



 スタ… スタ… スタ…



 「……………」



 俺、小柳隼人こやなぎはやとは今、高校からの帰りだ。



 「」



 今後についての相談だ。俺は……俺は今の高校を辞めようかと考えている。親には本当に申し訳ないけど……でも、これ以上通えそうにないと思うからだ。



 実際、俺の通ってる高校は割と偏差値が高く進学校と呼ばれる場所だ。



 なので、そんなに問題ないと思っていた。けど……人間はどこにいようと変わらないんだと感じた。勿論、いじめとかそんなくだらないことをする人はいなかった。でも、俺自身がこの環境にいることに耐えられない神経になってしまった。普通に義務的な話でも話せないくらいに相当病んでしまっていたからだ。だから……、




 通信制高校に転学しようか考えている。




 その提案をしてくれたのはお母さんの美月みづきだ。



 しばらく前……。





 「隼人」

 「何?」

 「高校はこれからどうする?」

 「……………分からない」

 「…………そっか……」

 「でも、このままじゃダメだとは思ってるよ」

 「…………あのさ……私も色々調べてみたんだよね」

 「……………」

 「もし、このまま通おうとするのが辛いのだったらさ………通信制高校にしてみない?」

 「」



 母さんはそう話す。



 「高卒認定試験も調べてみたんだけどやっぱリスクあるからね………だから、通信制に通ってみるのが良いのかなって思ってさ」

 「………………」







 「…………」




 それで俺は悩んでいる。転学するのだったら早めにした方がいいからな………どうしようか……。



 そして、その話を担任の横山和俊よこやまかずとし先生と言うおじさん先生に相談した。






 

 「良いんじゃないか?」

 「」

 「まぁ、俺からしたらもう一度通ってほしいっていう気持ちはある。けどさ、お前の精神や親御さんの気持ちを考えたらやっぱその転学って道もありだと思うんだよな」

 「………………」

 「まぁ、ゆっくり決めろと言いたいがもうそろそろ覚悟決めないといけないからな………まぁ、考えてみろよ」

 「……………はい」

 「俺の座右は"一度教え子になった奴はずっと教え子"だからな!お前がどう選ぼうと俺はお前の考えを応援するからよ!!」

 「」






 「…………凄い良い先生だよな横山先生って」



 俺はそう考えながら帰路に着く。








ーーー






 「お願いします!!!付き合ってください!!!」

 「」





 私、大柳柚葉おおやなぎゆずはは告白されていた。それは同学年の男子にだ。私の通っている高校は隼人の所ほどではないが割と勉強ができる所だ。




 「………ごめんなさい」




 私は頭を下げる。




 「他に気になる人がいるんです」

 「」



 そうはっきり言う。













 「バカ」

 「うぇっ?」



 私は親友の桐乃由芽子きりのゆめこに頭を叩かれる。




 「何でバカなの?」

 「また、ドライな感じになってたよ?」

 「…………ちゃんと優しく言ったつもりだったんだけど……」

 



 普段の私は隼人と一緒にいる時とは違って少しクールに周りから見えているらしい。クールかは自分では分からないけど、でもちょっと無愛想な所があるらしい………、そしてテレビでは天然キャラとして扱われていて色々と自分って変わってるんだなと感じる。




 「全くさ……それでもってクラスでも天然キャラとしてなんだから………柚葉は何色あんだよ」

 


 由芽子は呆れながら笑う。



 「……………でも、私は別に変えている気はないよ?」

 「だから天然キャラとして扱われているのよ」

 「扱われるってなんか物みたい(笑)」

 「まぁ、柚葉はそんなキャラなのは昔からだからね……で、"小柳隼人"は柚葉を一番、可愛くしてくれる男の子だからねー?」

 「ちょっ!!声大きいって……//////!!」

 


 由芽子は私と一緒の高校に通う、同性の親友だ。





 「で?通話はどうだった?」

 「え………」

 「昨日、ビデオ通話したんでしょ?」

 「……しました」

 「どうだった?」

 「……楽しかった////// ♡」




 私は自然と顔が赤くなりながら伝えた。




 「そっか……初めておめでとう」

 「い、いや、初めてって訳じゃ……」

 「好きってちゃんと自覚してのビデオ通話は初めてじゃないの?」

 「い、いや!!!前から自覚してるから!私は隼人が好きってずっと自覚してるよ!逆に隼人の方が自覚し……あ」

 「ほーーー(笑)?やっぱ隼人は柚葉のことが好きなのね」

 「」





 由芽子に担がされた……あ、嘘。泳がされた……あ、これも違うか……促された?んーー、まぁいっか。ともかく、言わされた……////////


 


 由芽子は私が知ってる中で一番ずる賢い。












ーーー





 コンコン。




 「はーーい」



 ガチャ。



 「今日も来ちゃいましたーー」

 「来たな」

 「え、汚い?」

 「違う。来るって意味での"来たな"」

 「あー、なるほど!」

 「ははっ…やっぱ変態だな」

 「変態じゃなくて"おバカ"なでしょ?」

 「どっちでも良いわ」



 そんな風に柚葉が家に来ると途端に騒がしくなる。

 やっぱ、悩んでる日は柚葉に来てもらいたいや…。




 「昨日の電話はなんやかんや楽しかったよねー」

 「そうだな……………あ」

 「ん?」




 俺は電話の最初の光景を思い出す。




 「あ、あーー………////////」




 ムネ、オオキカッタ。




 こんな言葉が頭によぎりまくる。偶然胸の谷間を見てしまったことに俺は動揺が隠せなくなった。


 「隼人?どしたの?」


 柚葉は不思議そうに俺の顔を見てくる………、いやいやいやいや!!!!お前が一番恥ずかしがってくれよ!!思い出せ!!!忘れんなよ!!!



 「いや、なんでもない」



 そんな思い出せなんて言える訳もなく……俺は誤魔化す。



ーーー



 「昨日の電話はなんやかんや楽しかったよねー」

 「そうだな……あ」

 「ん?」



 あ、隼人…思い出してるかも……。私のオッパイを見たこと……//////



 「あ、あーー……////////」



 あー思い出してるわこれ……。

 よし、



 誤魔化せ!!



 「隼人?どしたの?」

 「いや、なんでもない」


 私は必死のポーカーフェイスで乗り切った。

 


ーーー




 「あーー、そういえば電話と言えば隼人がやたら紳士だったよね」

 「え?私に粗相なことを言わせないようにしてさー?」



 そうニヤついて俺を見てくる。



 「あーー、そりゃあ……異性からは聞きたくないから……」

 「"めちゃめちゃ可愛い"」

 「」

 「そう言ってたよねーー?」

 「言ってないよ」



 俺は誤魔化そうとする。




 「"うわー、そういえば言ったわー"って顔に出てるよ?」

 「で、出てない//////」

 




 やべぇ、柚葉が鋭い……いや、俺がチョロいのか。




 そんな風に俺達はいつものように笑いあっていた……。

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