第47話 俺は"食べ物の恨み"というしょうもないことで怒る。




 「さて……次はどうする?」



 俺は床に座る柚葉にベッドの上に座りながら言っていた。



 「…………何をどうするの?」

 「そんなの決まってるだろ」

 「………………」



 俺達はあることを話していた。



 「もう思いつかないんだけど……」

 「嘘いえ。お前は分かっているはずだ」

 「分かりません」

 「分かる」

 「分からない」

 「………」



 柚葉は俺に澄んだ目を向ける。



 「え、本当に分からないの?」

 


 俺は黒い瞳を向ける。



 「分かりません……ぷふっ(笑)」

 「」

 


 俺は柚葉に怒っていた。それは………、






 柚葉に取っておいたイチゴパフェを食べられたからだ。






 少し前…。







 コンコン…。



 「あ、はーーい」



 ガチャ。



 「お邪魔しまーす」



 柚葉はいつものように俺の寝室へと入ってきた。



 「テスト勉強の方は大丈夫?」

 「大丈夫大丈夫!!心配する必要ないよ!!それに2教科は90点台取れるから!!」

 「保健体育と家庭科だろ?」

 「いちいち突っ込まないの!!」

 「でも、主要教科でもいい得点取れないと推薦は難しいんじゃないの?」

 「え」

 「柚葉は大学行くんだったら推薦とかも視野に入れてるでしょ?」

 「………まぁ……よく分かったね…」

 「芸能人はそうかなって思った」

 「……………そーなんだよなーーー……」



 いきなり柚葉はグダーーとしゃがみ込んだ。



 「そうなんだよ隼人ーー……私が大学行くんだったら一般はレベル高くて難しいしさーー……でも大学には行きたいじゃん?だからAOを一番考えてるんだよね……」

 「柚葉も考えるんだな」

 「当たり前だよぉー…………頑張んないとさ?仕事優先だけじゃやっぱダメだし」

 「……………」

 「……まぁ、テストは頑張るから!!で、どうしようもなくなった時は隼人に頼るから!!よろしくね!!」

 「………まぁ、どうしてもの時は任せとけ」

 「おー、頼りなるぅ〜🎶」



 柚葉はそう軽口を叩いてくれる。

 俺のことを敢えて聞いてこなかった……、本当に気遣いができるんだよな柚葉は。



 「あーー……喉乾いたな」

 「それじゃあ冷蔵庫の扉の左の棚にお茶入ってるから勝手に飲んでいいよ」

 「え、いいの?」

 「おう。それでその奥の右の棚にプリンあるから食べていいよ」

 「プリン!!?いいの!!?」

 「あー、いいよ」

 「分かった!!ありがとう!!」



 そう言って柚葉は軽快に歩きながら俺の寝室を出て行った。



 「あーー…………」



 俺は伸びをする。



 「進路かーー……」



 そう呟く。

 思いつかねーな……、でも俺も大学には行きたい。でも……どんな職種に就きたいかにもよるからな…。



 「ん?」



 俺はスマホにラインが来てることに気づいた。そして、俺はこんな思いに耽ってる場合じゃないと気付かされた。そのメールは母さんの美月みづきからで……、



 [そういえば隼人のイチゴパフェの場所を冷蔵庫の右の棚に移動させちゃってたー。ごめん♡]



 「」



 そして急いでリビングに行ったが既に手遅れ……。




 モグモグ。



 「あ、はやと〜。プリンじゃなくてイチゴパフェだったじゃ〜ん」



 口元に生クリームをつけて、プラスチックの容器を持ちながら柚葉は食べていた…、




 イチゴパフェを。








 そして現在に至る。




 「ともかく、プリンじゃなくてイチゴパフェだったら"あれ?"って感じて質問なりしてきてよ!!」

 「………ごめん」

 「俺も甘い物を食べるのが嫌いではないからさ、ちょっと落ち込んじゃうんだけどさ……でも、本当に楽しみではあったんだよ」

 「………はい」

 「とにかく………流石に聞きもしないで勝手に食べた柚葉に罰を与える」

 「ぷふっ(笑)」

 「何故笑う?」




 「いや……やっぱなんかくだらないって思ったから」




 「お前……」




 プニィ!!!!!!




 「!!!」


 俺は柚葉の両頬を摘む。


 「何がくだらないだと?お前には俺の安らぎの気持ちが分からないのかよ?イチゴパフェだぞ?美味いんだぞ?コンビニの期間限定のチョコも入ってるんだぞ?俺は猛烈に甘いのを食べたい気分だったんだぞ?だからその思いで食べたこれはどんな味がするんだろうってお前には分からないのか?」



 俺は捲し立てながら柚葉の頬を引っ張る。



 「ごめ!!ごめんっふぇ!!!」



 そして俺は離す。



 「ごめん。くだらないは言い過ぎだよ」

 「そうだ。言い過ぎだ」

 「そっか……期間限定だったんだ……」

 「まぁな」

 「…………それじゃあまだ残ってるから食べる?」

 「え?」

 「一応そこの方にイチゴとチョコは残ってるよ?クリームは多分ないけど」

 「」




 そして柚葉はそれを持ってきた。




 「あー、クリーム少しあったな」

 「」




 と言う訳で俺はその柚葉が散々口をつけた容器を渡された。



 「」

 「本当にごめん。今から新しいの探してくるから待っててくれる?」

 「……………」

 「それじゃあ待っててね」

 「い、いや待ってよ!!」

 「え?」

 「え………え?食べていいの?」

 「え……あー、食べかけはやっぱいや?」

 「そ、そうじゃなくてよ…………なんて言うか……いいの?」

 「何が?」



 い、いや何がって……え、気づいてないのか?



 「間接キスになんないかコレ?」



 俺は素直に言う。



 「え?……………あーーー……それじゃあ食べたくない?」

 「い、いや……そういうわけじゃないけど……」

 「食べたくないんだったら捨ててもいいから!!ともかく少し探してくるね!!」



 そう言って柚葉は俺の寝室を飛び出した。



 「……………」



 俺は思う。




 "え〜〜〜〜〜"…と。




 どうしようこれ。

 そして俺はその容器に少し残ったパフェを見る。



 「」



 柚葉も口付けしたらイチゴパフェの味すんのかな?



 俺は更に柚葉から渡された柚葉が口付けたスプーンも見つめた。



ーーー





 私はラッキーだった。




 偶々、3つ目のコンビニで残り一個の所の期間限定のイチゴパフェを見つけられたからだ。



 「」



 私は小柳家に向かっていた。



 「あーー…………」



 そして先程のことを思い返す。



 「やっちまったーーー/////////」

 


 何をかって?そんなの決まってる……。



 「完全に間接キスだわあれ〜」



 あー、私のバカバカバカ。完全に間接キスじゃん。なのに、不思議そうな顔しちゃってさーー……。あーー……どうしよう……なんて言って渡せばいいんだろ……いや、その前に隼人はあの私の食べかけを食べているのかな?そしたらヤバいな………完全にキスだわ。あーー……。





 私はそんなことを考えながら小柳家に向かった。









 「ただいまーー…」

 「あ、柚葉ちゃん!!」

 「あ!!隼人君のお母さん!!」



 私は更なる偶然で小柳家に着いたら隼人のお母さんの美月みづきさんと玄関で鉢合わせた。

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