第36話 あーー、やっちまったよな……。



 「ふぁあ〜〜」

 「どうしたのよ?柚葉おねむ?」

 「ちょっとね。今日の朝、メールしててさ」



 私は伸びをしていた。今日は月曜日。そして朝から隼人とメールをしていた。そして今は……学校だ。



 「んーーー」

 「メールって言うのは例の幼馴染の子?」



 長い黒髪のロングをいじりながら可愛いくて綺麗な顔を崩さず無表情に赤野莉珠あかのりずが喋る。



 「ま、まぁ………そうだよ」

 「本当を喋っちゃうんだ?」

 「え?」

 「誤魔化すのかと思ったら全く誤魔化さないで素直に言っちゃうんだ(笑)?」


 

 私の幼馴染の桐乃由芽子きりのゆめこも私をイジってくる。



 「やっぱバカなんだね(笑)」



 中肉中背の山里美琴やまさとみこともはっきり言う。



 「そ、そんな分かりやすく言わないでよ」

 「でも柚葉は天然キャラじゃん?そりゃあ言いたくなるよ(笑)」

 


 由芽子は笑顔で美琴の言うことを肯定してくる……。



 「………………うぐっ……」



 学校では私はいじられまくるキャラなんだよね………。でも、それが心地いい。



 「ねぇ、柚葉」

 「ん?」

 「メールの後は何かした?」



 莉珠りずが質問してくる。



 「え?何もしてないけど?」



 嘘です。

 メールの後に実は……。





ーーー




 カリカリ……。

 シャーペンがノートの上を走る音が聞こえる。



 「……………」





 俺は勉強をしていた。今は数学をしている。





 「…………ほぉ……」



 因みに範囲は数三の微積の所だ。一応、事前学習ってことでやっていた。



 「そろそろ切り上げるか……」



 俺はそう呟いて椅子から立ち上がり、伸びをした。



 「………………」



 俺は今日の早朝の柚葉とのメールのことを思い出していた。



 「…………あーー……俺のバカ…/////////」





 数時間前…。






 [それじゃあそろそろ切り上げる?]



 俺は頃合いを見て柚葉にそう送った。



 [そうだね!この後、ちょっと散歩したいから切るよ]

 [散歩するの?]

 [そそ。偶にするんだよね]

 [そうなんだ]

 [隼人も来る?]

 



 え。




 [折角だし行こうよ!!]




 


 という訳で俺は柚葉と早朝に少し散歩することになった。












 「……………」



 俺は大柳家のあるマンションの前で柚葉を待っていた。今は4時半ごろ。




 「あ、隼人!!」

 「!!柚葉……おはよう…」

 「おはよう!!待たせちゃってごめんね!」

 「いや……それは………いい」



 俺は柚葉の姿を眺める。



 上が白で下が黒のスポーツウェアを着ており、なんだか新鮮でありまた新たな発見ができた。へそら辺をチラ見せさせていてウエストの細さと腹筋が目立つ………。そして何より……、



 「隼人……そんなに私の胸部を見てどうしたのかな?」

 「!!!!!!」



 気づけばそこに目がいってしまっていた……。恥ずかしい……。



 「いや別にエロいとかそう言うのは思ってないから安心してくれ/////////」

 「安心してくれって………見ていたことは認めるんだ?」

 「う、うるせ///!!」



 必死に抵抗ができるわけもなく情けないことに柚葉の言ってた通りに胸元に目がいっていた……。情けない………//////。




 「それじゃあいこっか!!」



 無理矢理今の雰囲気を変えて柚葉が声を上げる。



 「だな」



 そして散歩を始めた。






ーーー





 「それでは大柳………おい起きろ」

 「ぐかっ!!」




 私は数学の教師の円井まるい先生に起こされた。




 「何で寝てるんだ」

 「朝、ちょっと早かったんです」

 「仕事か?」

 「いえ、普通に目が覚めてメールしてました」

 「じゃあ寝るな」

 「すみません」



 私は素直に答えた。



 「」(柚葉って本当に素直だなー)




 由芽子がそんなことを思ってそうな顔を向ける。




 「………………」



 そして私は頬杖をつきながら"朝の散歩"のことを思い出す。



 






 「柚葉」

 「ん?」

 「柚葉はさ……将来もやっぱこの仕事を続けていくの?」

 


 歩いてる時に隼人にこう質問される。



 「んーーー……そのつもりだよ?」



 はっきりとは答えられなかった。それほど"厳しい世界"というのもあるし。



 「そっか……」

 「そういえば隼人さ」



 今度は私が話しかける。



 「ん?」

 「柚葉が俺の元から去るのが怖い的なこと言ったよね?」

 「…………言ったな」

 「何でそう思ったの?」

 「……………柚葉はもっと成長して色々と忙しくなるにつれて俺と関わる余裕がなくなってくんだろうなと思ったから」

 「……………」




 隼人はそう答えた……。




 「例えばどんな感じで?」

 「え」

 「どんな感じで忙しくて、どんな風に成長して、隼人と関わらなくなる未来が出来上がってったの?」

 「………………」

 「答えられないじゃん」

 「………そんな具体的には答えられないよ」

 「それじゃあ隼人も考えられてないじゃん」

 「」

 「勝手に決めつけないでよ」

 「……………ごめん」



 あれ……私怒ってる?



 「想像だけで決めつけられと腹立つからさ。だから何かあれば一度私に話しかけてよ」

 「………分かった」

 「………………」









 「…………………」




 私は朝のこのことを思い起こしていた。

 


 そして……、




 更に"その後に起きてしまったこと"に私は少し……。







ーーー







 「………………」





 昼頃。俺は昼飯を食べていた。今日はお母さんが昨日のカレーの作り置きをしてくれていてそれを食べていた。




 「……あーー……やっぱ頭から離れねぇー……」




 俺はその出来事に思いを馳せていた。









 「よし、それじゃあそろそろ帰るか!!」

 「だな」




 俺は柚葉と帰り道を歩いていた。大体30分ぐらい歩いていた。




 「そういえば今日さ………何かやりたいことある?」

 「え?やりたいこと?」

 「今日は隼人の家に寄れるからさ何かやってほしいことはないかなって!!」

 「えーー………特にはないな。いつも通りにお前がやりたいことをやるでいいよ」

 「でも散々やってきたからな……。何か隼人がやりたいことをやろうよ」

 「え………んーーー………」




 俺は考えた。その時のことだった。




 俺は上を向いた時に躓いた。





 「あ、隼人!!!」




 柚葉が咄嗟に俺を支えた。



 ムニュッ!!!



 「あ、ごめんごめん……悪かった…………な」

 「」




 あれ、何だろこの感触……俺は何を触ってるんだ?



 そう。





 「………………」

 「あ」





 柚葉の右胸を揉んでいた。





 「あ、ごめん」

 「……………」





 そこから柚葉はひとっことも喋らなかった。









 あーー、やっちまったよな……。





ーーー





 私は4時限目の授業中、窓の外を見ていた。





 あーー……。









 隼人の触り方……優しかったよな。

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