第39話 テスト後
それから四日間はテストに集中した。
流石の俺も一週間前からパソコンやゲーム機を封印し、家に帰って勉強をして寝るを繰り返す。
そして……ようやく全てのテストを終えた。
「終わったー!」
「違う意味で終わったァァァ!」
「遊ぶぞー!」
「だァァァ! 絶対に赤点だっ!」
喜んでいる人、悲しんでいる人と様々だ。
とりあえず言えることは、みんな解放されたということだった。
ぶっちゃけ、俺も早く帰ってゲームがしたい。
「吉野君、お疲れ!」
「松浦さん、お疲れ様」
「さてさて、結果はどうかなー?」
「多分、悪くはないかと思う」
「私もかな。これでバイトもできるし、遊んたりもできそう」
そこで松浦さんからラインの通知が来る。
次はいつ遊べるかなということだった。
俺は明日以降ならいつでもと返事をする。
「明日以降……うん、了解です。それじゃ、今日のところはバイバーイ」
「うん、さようなら」
友達のところに行く彼女を見送り、俺も急いで家に帰るのだった。
◇
……ウオォォォ! 楽しいぃぃぃ!
コントローラーをぽちぽちと押して、迫り来るモンスターを撃退する。
「……だめだ、少しテンションが変だ」
でも、この久々にゲームをできる感覚は何者にも代えがたい。
しかも午前で終わっているので、夜まで自由にゲームができる。
明日から土日だし、流石に姉さんもうるさいこと言わないし。
「まあ、楽しいは楽しいんだけど……なんだろ」
少しの寂しさというか、別に無理してるってわけでもないんだけど。
「松浦さんに会えないからなのか」
多分、今頃クラスのみんなと打ち上げでもしているのだろう。
当然、俺は誘われる事はない。
というか、自分から拒絶してるから当たり前の話だ。
「……変わらないといけないのかなぁ」
ここんところ、色々な事で悩んでいた。
ずっとこのまま、ゲームばかりやって家に篭ってて良いのかって。
先生も言ってたけど、二年の後半になったら受験モードになる。
「今しかできないことがあるって……後悔しないようにか」
もし松浦さんと関わることがなかったら、きっとこんな事も考えなかったに違いない。
多分、一人ぼっちのまま卒業して……特に思い出も残らない寂しい高校生活だったはず。
「それで、先生みたいに闇を吐いて……あの先生みたいに消化しきれず、変な方向に行きそう」
幸いなことに、俺は松浦さんという女の子と仲良くなれた。
逆にそれがあるから、一人が寂しいということに気づいてしまった。
「松浦さんと仲良くならなかったら、きっとそのまま気づかずに過ごしていたよなぁ」
現実で誰かと遊ぶ楽しさ、それを共有できること。
ゲームとは違った楽しさが、そこにはあった。
「かといって、今更グループに入れてって言えるようなら苦労はしない」
それに、入れてもらったところで上手く立ち回れるはずがない。
松浦さんに頼んだら、きっと力になってくれるとは思うけど。
「……でも、それは何か違う気がするし」
松浦さんにはもらってばかりで、全然返せてない。
そういえば、何かお礼とかしたい。
「ただ、お金がないし……」
そんなことを考えていると、松浦さんから電話がきた。
多分、学校で言っていた次に遊ぶ予定のことだろう。
『吉野君、お疲れー。さっきの件だけど、明日はバイトがあるから日曜日とかどうかなー?』
「お疲れ様です。俺の方は全然平気だよ。松浦さんがしたいこととかある?」
出来るだけ、彼女の希望を叶えてあげたい。
まあ、俺に何が出来るかって話だけど。
そのまま、返事を待っていると……。
『実は、お買い物に行きたくて……それに付き合ってくれる?』
「俺で良ければ……」
『ほんと? じゃあ、その日はお買い物に行きますっ』
「了解です。時間とかは後でかな?」
『うん、バイトが始まる明日の昼までには連絡するねー!』
そして、少し待って通話が切れる。
俺は椅子に寄りかかり、上を見上げた。
「明後日に買い物……何を買うんだろ?」
そもそも、一緒に行っても俺には買えるものがない。
それでは、松浦さんもつまらないだろうし。
「……やっぱり、バイトが一番かなぁ」
人見知りコミュ障と、人と関わることに慣れないと。
そんな理由でバイトして良いのかは謎だけど。
「でも、そうすればお金も入る。松浦さんとも、色々遊べるかもしれない」
何より、バイトができるとしたら今くらいの時期だけだろう。
俺はパソコンのゲーム画面を閉じて、バイト情報の検索をかけるのだった。
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