第39話 テスト後

それから四日間はテストに集中した。


流石の俺も一週間前からパソコンやゲーム機を封印し、家に帰って勉強をして寝るを繰り返す。


そして……ようやく全てのテストを終えた。


「終わったー!」


「違う意味で終わったァァァ!」


「遊ぶぞー!」


「だァァァ! 絶対に赤点だっ!」


喜んでいる人、悲しんでいる人と様々だ。

とりあえず言えることは、みんな解放されたということだった。

ぶっちゃけ、俺も早く帰ってゲームがしたい。


「吉野君、お疲れ!」


「松浦さん、お疲れ様」


「さてさて、結果はどうかなー?」


「多分、悪くはないかと思う」


「私もかな。これでバイトもできるし、遊んたりもできそう」


そこで松浦さんからラインの通知が来る。

次はいつ遊べるかなということだった。

俺は明日以降ならいつでもと返事をする。


「明日以降……うん、了解です。それじゃ、今日のところはバイバーイ」


「うん、さようなら」


友達のところに行く彼女を見送り、俺も急いで家に帰るのだった。







……ウオォォォ! 楽しいぃぃぃ!


コントローラーをぽちぽちと押して、迫り来るモンスターを撃退する。


「……だめだ、少しテンションが変だ」


でも、この久々にゲームをできる感覚は何者にも代えがたい。

しかも午前で終わっているので、夜まで自由にゲームができる。

明日から土日だし、流石に姉さんもうるさいこと言わないし。


「まあ、楽しいは楽しいんだけど……なんだろ」


少しの寂しさというか、別に無理してるってわけでもないんだけど。


「松浦さんに会えないからなのか」


多分、今頃クラスのみんなと打ち上げでもしているのだろう。

当然、俺は誘われる事はない。

というか、自分から拒絶してるから当たり前の話だ。


「……変わらないといけないのかなぁ」


ここんところ、色々な事で悩んでいた。

ずっとこのまま、ゲームばかりやって家に篭ってて良いのかって。

先生も言ってたけど、二年の後半になったら受験モードになる。


「今しかできないことがあるって……後悔しないようにか」


もし松浦さんと関わることがなかったら、きっとこんな事も考えなかったに違いない。

多分、一人ぼっちのまま卒業して……特に思い出も残らない寂しい高校生活だったはず。


「それで、先生みたいに闇を吐いて……あの先生みたいに消化しきれず、変な方向に行きそう」


幸いなことに、俺は松浦さんという女の子と仲良くなれた。

逆にそれがあるから、


「松浦さんと仲良くならなかったら、きっとそのまま気づかずに過ごしていたよなぁ」


現実で誰かと遊ぶ楽しさ、それを共有できること。

ゲームとは違った楽しさが、そこにはあった。


「かといって、今更グループに入れてって言えるようなら苦労はしない」


それに、入れてもらったところで上手く立ち回れるはずがない。

松浦さんに頼んだら、きっと力になってくれるとは思うけど。


「……でも、それは何か違う気がするし」


松浦さんにはもらってばかりで、全然返せてない。

そういえば、何かお礼とかしたい。


「ただ、お金がないし……」


そんなことを考えていると、松浦さんから電話がきた。

多分、学校で言っていた次に遊ぶ予定のことだろう。


『吉野君、お疲れー。さっきの件だけど、明日はバイトがあるから日曜日とかどうかなー?』

「お疲れ様です。俺の方は全然平気だよ。松浦さんがしたいこととかある?」


出来るだけ、彼女の希望を叶えてあげたい。

まあ、俺に何が出来るかって話だけど。

そのまま、返事を待っていると……。


『実は、お買い物に行きたくて……それに付き合ってくれる?』

「俺で良ければ……」

『ほんと? じゃあ、その日はお買い物に行きますっ』

「了解です。時間とかは後でかな?」

『うん、バイトが始まる明日の昼までには連絡するねー!』


そして、少し待って通話が切れる。

俺は椅子に寄りかかり、上を見上げた。


「明後日に買い物……何を買うんだろ?」


そもそも、一緒に行っても俺には買えるものがない。

それでは、松浦さんもつまらないだろうし。


「……やっぱり、バイトが一番かなぁ」


人見知りコミュ障と、人と関わることに慣れないと。

そんな理由でバイトして良いのかは謎だけど。


「でも、そうすればお金も入る。松浦さんとも、色々遊べるかもしれない」


何より、バイトができるとしたら今くらいの時期だけだろう。


俺はパソコンのゲーム画面を閉じて、バイト情報の検索をかけるのだった。


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