第44話 待ち合わせ

あの後は大変だった。


姉さんに説明したら、なんか怪しいところじゃないのとか聞かれたり。


松浦さんがいるし、有名なチェーン店だと説明したら平気だったけど。


確かに自分でも急展開だから仕方ないとは思う。


そして、翌日の朝……俺は姉さんに土下座をしていた。


「急にどうしたの?」


「お、お金を貸してください!」


「あぁ、今日は松浦さんとお出かけって言ってたわね。まだ貯金とかあるんじゃないの?」


「いやぁ……それが課金とか、松浦さんと遊んでるうちになくなりまして」


家にいる分には、ほとんどお金はかからない。

ネット代は払ってもらえるし、ありがたい事に携帯代も払ってくれている。

だから、今まではたまに課金するお金があればよかったんだけど。

……外で遊ぶって、めちゃくちゃお金が減ることを知りました。


「まあ、それはそうよね。むしろ、お小遣い少ないのに頑張った方よ。ところで、お父さんに連絡する? そしたら、お小遣いくれるかもしれないわよ?」


「し、しないよ! そもそも、女の子と出かけるとか言いたくないし」


「まあ、恥ずかしいし私でもしないわね。仕方ない、家計からではなくて私のお金を貸すわ」


「あ、ありがとうございます!」


「ひとまず、二万円にしとくわね。返すのは少しずつでいいから、バイトを頑張りなさい」


そうして姉さんの財布から、直接お金を渡された。


「あれ? 一万円多いよ?」


「それは私からのお祝いよ。アンタにしては、よく頑張ったじゃない。そのお金で、松浦さんに何かしてあげなさい。女の子に恥をかかせるような男はダメよ」


「姉さん……ありがとう! それじゃ行ってきます!」


財布にお金を入れて、俺は家を出て待ち合わせ場所に向かうのだった。






早めに駅前の待ち合わせ場所で待っていると……すぐに松浦さんがやってくる。

なんと今日は……下は紺色のスエットに、上は黒いパーカーを羽織っていた。

コンビニでも出かけるような格好だけど、松浦さんだと輝いて見えるから不思議だ。


「あっ、私の方が遅かったかぁー」


「いやいや、ほとんど同時だよ。そもそも、まだ約束の三時前だし」


「それもそっか。どっちが早く来るか気にしてたら、どんどん待ち合わせ早くなっちゃうよね」


「それは言えてるかも。ところで、物凄いラフな格好なんだね?」


「変かな?」


「いや、そんなことないよ。ただ、普段からお洒落なイメージだったから」


無論、人のことを言える立場ではないのは重々承知の上である。

かくいう自分もジーパンに黒いパーカーだし。

……あれ? これってペアルックなのでは?


「今日は沢山着替えるから脱ぐのが楽な方がいいかなって。それより……えへへ、ペアルックみたいだね?」


「お、俺、着替えてくる! いや、すぐそこで洋服を買えば!」


「だ、大丈夫だって! あれれ? 私とペアルックはご不満ですか?」


「そ、そんなことはないけど……」


な、なんだ? この全身がむず痒い感じ。

よくわからないけど居た堪れない!


「コホン……まあ、狙ってないとは言え少し恥ずかしいのは事実です。というわけで、レッツゴー!」


「何もというわけになってないよ!? そもそも、今日は何処に行くか何をするかも聞いてないんだけど……確か、お買い物とだけ」


「そうそう、今日はお洋服を見に行くよー。そこで気に入ったの買って、着替えちゃえばペアルックもなくなるし」


「ああ、だからさっき着替えるのが楽って……」


洋服か……でも、丁度良いかもしれない。

俺自身も、これから外に出るなら洋服は買っておいた方が良い。

なにせ、GUIやユニクロぐらいでしか買ったことはない……しかも、無難なのばっかり。

それに、松浦さんの好みを知る良い機会かも。


「そういうこと! ほらほら、いこー!」


「わわっ!? わ、わかったから引っ張らないでぇぇ!」


松浦さんに手を引かれ、駅ビルの中へと向かうのでした。


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