幕間 ヒロイン、恋を自覚する

 ……ど、どうにか切り抜けられたかな?


 動機が激しくて、心臓が痛い。


 私は絵里に連れてられて、ひと気のない場所に行く。


「絵里、迷惑かけてごめんね。そういえば、絵里も実行委員だったって思い出して。絵里なら、上手く誤魔化してくれるって」


「まったく、私でよかったわよ。あいつが勇気ある人っていうのは知ってたし。それより……ようやく自覚をしたの?」


「……そ、そうなのかな?」


「いや、私が知るわけないでしょ」


「うぅー……だってわかんないもん」


 あの日から、私は少しおかしい。


 雨に濡れて帰ってから数日後……遊びに来た絵里から話を聞いてから。






 ◇



 下着姿を見られてから、少し気まずくなってしまった。


 よくよく考えたら、別に吉野君は悪くない。


 ただ……やっぱり、恥ずかしいもん。


 そんな中、あんな出来事もあって……私は少し落ち込んでいた。


 そんな時、絵里が心配してきてくれた。


「やっほー、元気?」


「うーん……元気に見える?」


「いや、私には見えない。ただ、他の人は気づかないかもね」


「はは……それなら頑張ってる甲斐があるかな。とりあえず、お茶でも飲む?」


「そうしようかね」


 家の中へと招き、私の部屋でお茶をする。

 そして、いつも通りたわいのない会話をしていると……。


「んで、何かあったん?」


「んー、少しショックなことがあって……私の陰口を言ってるところに遭遇しちゃった。その後、雨にも降られるし散々だったよー」


「雨の日……陰口……もしかして、あの日のこと?」


「えっ? どういうこと?」


「いや、タイミングは違うけど似たような場面を見たから」


 そして状況を説明すると、同じ日ということが判明した。


「あれを聞いちゃったわけね」


「うん……もちろん、わかってはいたの。全員から好かれるなんて無理だし。それに、私の自己満足な部分はあるから」


「まあ、あんたは八方美人だから。それについては、昔から注意してるし」


「うっ……はい」


 絵里には、みんなにいい顔をすると嫌な人もいるって言われた。

 そういうことを直接言ってくるから、私は絵里を信頼している。


「でも、あんたは悪くないよ。それだけは間違いない。絶対に、救われてる奴はいるし」


「……えへへ、ありがと」


「それに味方もいるじゃん。そうそう、なんか陰口言ってた奴らに注意した男子がいたよ」


「えっ? ……誰だろ?」


「一番後ろの窓際に座ってる奴だったよ。気弱そうで地味な感じだったけど、きちんとあんたのことを擁護してた」


「……吉野君だ」


 うそ……あの時にいたの?

 すぐに逃げ出したから、気づいてなかった。

 ……どうしよう、すっごく嬉しい。


「へぇ、吉野って言うんだ」


「あ、あのね……この間言ってた気になる人なの」


「……なるほど。じゃあ、見る目あるじゃん。結構、良い啖呵切ってたから」


「……どうしよう? 胸が痛い」


「ははーん……自覚したか?」


「わ、わかんない!」


 その後、私は根掘り葉掘り聞かれることになるのでした。



 ◇



 ……あの時は、本当にわからなかった。


 でも、本当のお題を……好きな人ってお題を見た時に浮かんできたのは——吉野君の優しい顔だった。


「本当はわかってるんじゃない?」


「……うん、そうかも」


 どうやら、私は……吉野君のことが好きみたいです。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼっちの俺が何故か学園のアイドルと仲良くなった件 おとら@五シリーズ商業化 @MINOKUN

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画