第22話 不意打ちをくらう
はぁ、高校生にもなって情けない。
しかも、憧れである松浦さんの前で。
このあがり症というか、コミュ障はどうしたら直るんだろうか。
そんなことを考えていると、トレイを持った店員さんがやってきて商品を置いていく。
「さあ、食べよー」
「うん、そうだね……おおっ、ポテトがカリカリだ」
「当たり前だよー。そっか、持ち帰りしかないんだったね」
「そうそう、いつもシナシナでさ」
出来立ては熱々で美味い。
バーガーもべちゃべちゃになってないし。
「うーんと、外食自体しない感じ?」
「小さい頃から、基本的には家だね。流石に、回転寿司やファミレスとかは行ったことあるけど」
「どうしてマックだけないの?」
「昔は、親とかには体に悪いからって言われたから。その名残が残ってるのかも」
「あぁー、わかる。私も言われてたから、食べたのは中学に入ってからだったし」
「かといって、一人で入る勇気はないしね」
一人カラオケとか、一人でラーメン屋とか行ける人を尊敬する。
俺なんか、周りの目が気になって仕方ない。
こいつ一人なのとか、寂しい奴とか思われるのが……まあ、実際には関心を持ってる人が少ないっていうのはわかってるんだけど。
「私も一人では来ないかなー」
「多分、俺とは違う意味だよね。きっと目立つだろうし」
「……まあ、男の人が声を掛けてくることは多いかな。でも、今は吉野君がいるから安心」
「お、俺で良ければ頑張るよ」
「えへへ、ありがと」
そうして、穏やかな時間が過ぎていく。
今更だけど、松浦さんとお昼ご飯を食べてるんだよなぁ。
しかもゴールデンウィークにお出かけしてるし。
それが、こんなに可愛い女の子だなんて……少し前の自分では考えられないや。
「どうしたの? じっと見てきて……さっきの仕返しかな?」
「ご、ごめん!」
俺は目線を外して、慌ててハンバーガーを食べる。
マヨネーズとバーガーの相性は良くて美味い。
「あっ、動かないで」
「へっ、なに……っ!?」
気がつくと、目の前に松浦さんの顔があった。
目がおっきくて、まつ毛が長くて綺麗だ。
「動いちゃダメ、下の方を見る」
「し、下の方を……っ!?」
訳もわからず下を見ると、そこには服の上からでもわかる大きな胸が……!
な、なにが起きているんだ!?
「はい、取れたー」
「へっ? ……ありがとう」
「どういたしまして」
どうやら、俺のほっぺについてたソースを取ってくれたらしい。
……ウォォォォォォ!? そんなことがあっていいのか!?
「い、言ってくれたらいいのに」
「えへへ、可愛かったから」
「か、可愛い……?」
どういう意味だろうか?
……可愛いのは貴女の方です。
◇
その後、食べ終わり……追加で頼んだシェイクを飲みながら雑談をする。
「午後はどうしよっか?」
「ゲーセンに行きたい気もするけど、お金がかかるしなぁ。あと、夢中になって怖くなりそう」
「あるあるだね。気がついたら、財布の小銭がなくなってるパターン」
「だ、だよねぇ……」
行ったことない俺でも、それは簡単に想像がつく。
ゲーセンに行きたいけど行かない理由の一つだ。
一番大きな理由は、絡まれるかもしれないのが怖いから……あぁ、情けない。
「そうなると、カラオケがいいかも。あれなら、学割が効くから安いし」
「カラオケ……行ってみたい」
「決まりだね! それじゃ、飲み終わったしいこっ!」
片付けをして、再びビル内にあるラウンド○にいき、カラオケの場所に行く。
当然、そこには同い年の人達であふれていた。
キラキラとした雰囲気や服装、眩しい青春のオーラが目を焼く。
「ぐはっ……」
「大丈夫!? ど、どうしたの?」
「ごめん、少しダメージを受けただけ……よし、行こう」
そもそも、横には輝くオーラを放つ松浦さんがいるんだ。
この子に比べたら、なんて事はないはず。
受付に行くと、相変わらず松浦さんに視線が集まる。
そして俺にいき……はい、さっきと同じです。
ただ、俺はできるだけ下を向かないように背筋を伸ばす。
「ねえねえ、機種とかどうする?」
「機種? ……全くわからないんだけど、なにがあるのかな?」
「うんと、アニメ映像が多い方か、本人映像が多い方がいいとか」
「それならアニメ映像かな」
「それじゃ、そうしよっか」
すると、店員さんが申し訳なさそうに言う。
どうやら、混んでいて狭い部屋しか空いてないようだ。
「全然、平気ですよー」
「俺も大丈夫です」
「ありがとうございます。それでは、こちらの部屋をどうぞ」
部屋番号がついた伝票をもって、まずはドリンクバーに向かう。
俺はコーラを選び、大人しく松浦さんについていく。
そして、奥の方にある部屋の中に入って行くのだったが……俺は自分の浅はかさを知るのだった。
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