第52話 ハプニング
ぬぉぉぉ!? 傘持ってきてない!
自転車に乗った瞬間、 いきなり大雨が降ってきた。
何処かに雨宿りをするよりも、家に帰った方がいいと思って急ぐ。
結局、家に着く頃にはびしょ濡れになってしまう。
「か、鍵……! と、とにかく、風呂場に直行しないと」
幸い、洗面所は玄関のすぐ横だ。
そこまで濡らすことなくいけるはず。
俺は靴を脱いで、最小限の動きで洗面所を開ける。
「あっ、お姉さ……ふぇ?」
「………はっ?」
目の前には振り向き様で、下着姿の美少女がいた。
足は引き締まってお尻はぷりんとし、背中がめちゃくちゃ綺麗。
大きな胸は、横からでも綺麗なラインを描いていた。
その女の子……松浦さんと目があったまま固まってしまう。
「………」
「………松浦さん?」
「キャ——キャァァァァ!?」
「わぁ!? ごめんなさい!」
俺は慌てて洗面所の扉を閉める!
すると、ドタドタと姉さんが階段から降りてきた。
「なに!? なにが……あんた、覗いたの?」
「い、いや! そんなつもりは!」
「ふぅ……そうよね、こっちもイレギュラーだったし鍵はかけなかったし。ただ、いいって言うまで外にいなさい」
「えっ? お、俺、びしょ濡れ……」
「私がその間に、謝っておくから……なにか文句が?」
「い、いえ! お願いします!」
俺は濡れたまま、外へと引き返すのだった。
俺はと言えば、ずっと頭から映像が離れませんでした。
それから、数分後……玄関の扉が開く。
「ほら、あんたもお風呂に入りなさい」
「ほっ、やっと入れる。というか、どうして松浦さんが?」
「それは後で本人に聞きなさい」
「それもそっか。とりあえず、シャワー浴びてくる」
姉さんが敷いてくれたタオルの上を渡って洗面所に向かう。
すると、何かいつもの違う香りがした。
多分……松浦さんの香りだ。
というか、さっきまでお風呂場にいたってこと?
「……俺は変態かっ」
罪悪感と煩悩を振り払って、俺は思い切りシャワーを浴びるのだった。
◇
お風呂から出て、リビングに行くと……松浦さんがいた。
その顔は怒っているのか、困っているのか複雑な表情を浮かべていた。
「す、すみませんでした!」
「むぅ……恥ずかしいけど怒るのも違うし、裸ってわけじゃないし……許します」
「ほっ、良かった」
ひとまずは許されたらしい。
ただ、色々と疑問があるけど。
「まあ、私も悪かったわ。まさか、あのタイミングで帰ってくるとは思わなかったから。あんた、今日は遅かったのね?」
「教室で居眠りしちゃってさ。それで、起きたら一時間くらい経ってたみたい」
「あんたも慣れないバイトとかで疲れてるのかもね」
「よ、吉野君、教室にいたの?」
「えっ? そういうことになるね」
「そ、そうなんだ……グスッ」
すると、その目から涙が溢れる。
「ど、どうしたの!?」
「もしかして、泣いてた原因はあんたなの?」
「ち、違いますっ。ごめんなさい……もう、大丈夫ですから」
「……ひとまず、二人ともテーブルに座りなさい。今、お茶が用意できるから」
その言葉に従い、俺と松浦さんは向かい合って座る。
俺は目が中々合わせられず、視線が宙を彷徨う。
すると、姉さんがお茶を持ってやってくる。
「あんた達、二人にして視線が泳いでるわよ」
「うぅー……」
「し、仕方なくない?」
「ふふ、若いって良いわね。それで、説明だけど……私もよくわかってないわ。ただ仕事帰りに、雨に濡れてた松浦さんを連れてきたって感じ」
「仕事帰りに……?」
姉さんの仕事場は、俺が通う学校の途中にはある。
ただ、そこは降りるような駅はなかったはず。
「す、少し走りたくなったの。そしたら、雨が降ってきちゃって」
「あぁー、体育祭もあるからかな」
「そ、そう! ……あの、私、帰りますね」
「今日はその方がいいわね。多分、落ち着かないだろうし」
姉さんの言う通りなので、俺も賛成する。
そして雨も止んでいたので、玄関で松浦さんを見送った。
ただ……結局、あの涙はなんだったのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます