第41話 急展開
……結局、店内に入ってしまった。
従業員の方には顔を覚えられたのか、ニマニマとしているし。
俺は前と同じ角の席に案内され、対面に松浦さんが座る。
「えへへ、少しタイミングずらして良かった。もう少し早かったら、会えてなかったもん」
「そ、そうだね。でも、予定はいいの?」
「さっきも言ったけど平気だよー。帰りに本屋さん行こうかと思ってたの」
「本屋さんか……それもありかもしれない」
そういや、本屋さんは確認してなかった。
俺は漫画や小説が好きだし、そういうのもありかもしれない。
しかも、あれも接客業に値するし。
「なんの話ー?」
「いや、実はバイトをしようかなって思ってまして」
「ふむふむ。確かに、今くらいしかチャンスないもんねー。私で良ければ相談に乗る?」
「ほんと? そうしてくれると助かるよ」
「うん、任せてっ。とりあえず、先に注文しちゃお」
その後、それぞれパンケーキと飲み物を頼む。
ちなみに……今回は、一人一個である。
すぐに飲み物が来て、松浦さんが一口飲んでから話し出す。
「それで、どんなバイトがいいの?」
「ひとまず、接客業っていうのは決まってるんだ。お恥ずかしいことに人見知りでさ……そういうの直せたらなって。このままだと、大学とか社会に出たとき困ると思うし。やっぱり、こういう動機だとダメかな?」
「接客業かぁ……ダメってことはないけど、そのまま言ったら受からないかも。もう少し言い方を変えてみるとか。例えば、社会に出る前に人前で仕事をすることを学びたいですとか」
「なるほど……確かに印象が変わるかも」
流石に人見知りを直したいはダメだよなぁ。
きちんとお金をもらうわけだし。
「というか……うちで働いたらどうかな?」」
「へっ? ……ここ?」
「そうそう。うち、人手不足らしいから。試験前に、私が出てたからわかると思うけど」
「飲食店か……出来るかな?」
俺の中では、結構難しいイメージだ。
お客さんから注文とったり、商品を間違えずに配ったり。
あと、怒鳴ったりする客も見たことあるし。
「大丈夫! 私が教えてあげるし!」
「……それは悪い気がする」
「そんなことないよっ。だって、先に色々と教えてくれたのは吉野君なんだから」
「でも、それは俺が松浦さんとは知らなかったわけだし」
俺はあくまでも、アキラさんだと思って接していた。
それが、恩人に対するお礼になると思ったから。
「むぅ、それはそうだけど。あと、気になるなら私にお礼してくれてもいいし」
「お礼……」
そうだ、そもそもお礼はしたかった。
だったら、すぐにでも働ける場所の方が良いかも。
それにある意味で一番、人見知りを克服するには向いてそう。
……単純に、松浦さんに会えるし。
「ねっ? 私、吉野君と一緒にバイトしたいもん」
「そ、それはどういう?」
「だって、学校ではあんまり話せないし」
「そりゃ、松浦さんが人気者だから……じゃあ、ここの面接を受けてみようかな。もし落ちたら笑ってよね?」
「ほんと!? 吉野君なら落ちないと思うけど……とりあえず、店長呼んでくるね!」
俺が止める間もなく、松浦さんが席を立って従業員専用の扉に入っていく。
呆気にとられていると、すぐに店長さんがやってきた。
「こんにちは。なんでも、バイトがしたいとか?」
「す、すみません、こんな形で」
「いえいえ、彼女が強引にって言ってましたから。確認ですが、うちで働きたいということでよろしいですか?」
「は、はい、接客業でバイトを探していたので」
「うちとしては人が足りてないので大歓迎です。ただ、そうなるときちんとした手順が必要になります。面接をするので、空いてる日にちと時間を決めましょうか」
すると、松浦さんが手を上げて話に入ってくる。
「店長、別に今からでも平気?」
「私は平気ですよ。面接をするだけなら、そんなに準備もいりませんから」
「吉野君は時間ある?」
「う、うん、今日は予定なかったし」
「それじゃ、そうしよっ。ねっ、店長?」
「松浦さんがそこまでいうんじゃ仕方ないなぁ。それじゃ、少し待っててください」
こうして、あれよあれよという間に話が進んでいく。
俺はど緊張しながら、こくこくと頷くことしかできない。
……どうやら、今から初の面接をすることになったらしい。
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