第40話 バイト探し
その翌日の土曜日、俺はゲームをすることなくリビングで項垂れていた。
そんな俺を、姉さんが怪訝な目で見てくる。
「さっきからどうしたのよ?」
「いや、少し疲れちゃって……」
「昨日からゲームのし過ぎよ。というかテストも終わったし、解放されたんじゃないの?」
「それはそうなんだけど……バイトって色々あるんだね。ゲームの後に色々と調べてたら疲れちゃって」
昨日、色々と検索をしていたら目が痛くなった。
時給、最低勤務時間、制服や靴貸出ありとか。
あとはコンビニから、ありとあらゆる場所でバイトが募集されていた。
そして……それに対するバイトの口コミとか。
「そんなの当たり前じゃない。なに、バイトがしたいの? 私はやることさえやれば、反対はしないわよ」
「したいというか……今しかできないのかなって。あと、お金が色々と必要になるかと思って」
「まあ、高校三年になったらバイトはほとんど出来ないわね。へぇ、あんたがゲーム以外にお金を欲しがるなんて……松浦さんかしら?」
「ま、まあ……なんか、明日お出かけしようって誘われて。どうやら、買い物をしたいみたい」
今更、姉さんに嘘を言っても仕方ないので正直にいう。
すると、めちゃくちゃため息をつかれた。
「はぁ、誘われたね……そこは自分から誘いなさいよ」
「うぐっ……頑張ります」
「あら、頑張ります……ふふ、良い傾向だわ。そうね、実際に色々見て回るのが良いんじゃない? そういう目線で持って店に入るとか」
「あぁー、そっか……正直言って、文字ばかり見ててもわからないよね」
「当たり前じゃない。ほら、ぐだぐだ言ってる暇があったら行動よ」
「……よし、そうしてみる」
このままダラダラしてても仕方ないので、俺は着替えをして家を出て行く。
そして駅前に行き、コンビニやスーパーや百貨店などをみて回る。
改めて観察すると、そこには色々な人が働いていた。
年齢も違うし、やる仕事内容も違いそうだ。
「みんな凄いなぁ……俺と年齢は変わらないのに働いてる人も多いし」
当たり前の話なんだけど、そもそもそういう認識がなかった。
これまで、あまりに人と関わってこなかったから。
「ただ、自分が働くとなるとピンとこないなぁ……何が一番いいかな? 人見知りを直すためには、接客業が良いとは思うんだけど」
そんなことを考えていると小腹がすいてくる。
時計を見ると、三時になろうとしていた。
「何処かに入っておやつでも食べるかな? ……そういや、ここから近かったよな」
そして俺はというと……松浦さんが働いているファミレスまで来ていた。
前に食べたパンケーキは、めちゃくちゃ美味かった。
……あと、松浦さんに会いたかったのかもしれない。
「ここに入る? 別に狙った訳じゃないけど……というか、キモいよね」
これじゃ、まるでストーカーみたいだ。
俺がそう思い、踵を返そうとすると……扉から出てきた人と目が合う。
それは、Gパンにパーカーというラフな格好をした松浦さんだった。
「あれ? ……吉野君だっ!」
「ま、松浦さん!? えっと、これは違くてですね……」
「えー! くるなら言ってよー! 私、バイト上がっちゃった!」
そう言い、タタッと俺の方に駆け寄ってくる。
ラフな格好だというのに、彼女が来てるだけで何故かお洒落に見えた。
「いや、だから来るつもりはなくて……」
「それじゃあ、どうしたの?」
「実は散歩してたら小腹が空きまして……そしたら、パンケーキ美味しかったなと」
「うんうん、ここのやつ美味しいよねー! ……それじゃ、一緒に食べよっか?」
「でも、今帰るところなんじゃ?
「平気平気ー、これは決まりです!」
「わわっ!?」
俺は松浦さんに強引に手を引かれ、店の中に連れて行かれるのだった。
ちなみに、会えて嬉しかったことは内緒である。
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