第47話 プレゼント
あの服は、俺が選んのでサイズはわかる。
後は、新品の袋に入ってるのを持っていけば良い。
俺は緊張しつつも、それをレジへと持っていく。
「あ、あの、これをお願いします」
「ふふ、先ほどの彼女さんにプレゼントですか?」
「い、いえ、彼女ではないですかけど……はい」
き、緊張する……!
女の子にプレゼントなんて初めてだし、そもそもこんなことして良いのかな。
「きっと喜びますよ」
「そ、そうですかね? なんか重くないですか……?」
「何でもない男性ならあれですけど……平気だと思います」
「それってどういう……」
「早くしないと女の子が着替えてしまいますよ」
「あっ……急がないと」
俺は松浦さんが出てくる前に慌てて会計を済ませるのだった。
その後、店員さんも協力してくれて何とか間に合った。
何も知らない松浦さんが試着室から出てくる。
「ごめんねー、待たせちゃって」
「へ、へ、平気!」
「だ、大丈夫? 身体震えてるけど……」
「だ、大丈夫」
なんと情けない。
こんなこと初めてだし、そもそもこれで良かったのかわからない。
……でも、後には引けない。
「そう? 少し時間かかりすぎちゃって疲れちゃったかな。店員さん、これと同じサイズありますか?」
「もう、用意しております」
「わぁ、ありがとうございます。それじゃ、それを買いますね」
「男性から既にお代金は頂いております。それでは、私はこれで失礼いたしますね」
そして、店員のお姉さんがウインクして去っていく。
当時に、松浦さんが目を丸くして俺に振り向いた。
「……どういうこと?」
「えっと……これ、迷惑じゃなければ」
「……私に?」
「そ、そうです」
俺が袋を差し出すと、恐る恐る松浦さんが受け取り中身を見る。
すると、その目が見開いた。
「わぁ……! さっきの服!」
「一応、もうお金は払っておいたから。俺からのプレゼントってことで……」
「ええー!? そんなの悪いよっ!」
「その、いつもお世話になってばかりだから……そのお礼っていうか」
あぁー、こういう時ってなんて言えば良いんだろ?
経験がないから、全くわからない。
……俺の正直な気持ちを言うしかないかな。
「そんなつもりで遊んでないよ?」
「うん、それはわかってるんだ。だから、これは俺の押し付けだよ」
「押し付け……えへへ、意外と強引なんだね?」
「そうそう、受け取ってくれるまで動かないから」
きっと、彼女のことだから遠慮してしまう。
でも、これは俺にとってけじめだ。
このままでは、あまりに情けない。
「そういうことなら……受け取るね」
「ほっ、良かった……」
「あのね……すっごく嬉しいっ」
袋を胸に抱き、花が咲いたように微笑むのだった。
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