第23話 仕事
それからは早いもので、応接室…?の扉を出て直ぐに現れた執事が手早く契約を済ませ、あっというまに仕事を受けさせられた。
しかも契約の際に指をナイフで切って指印を押させられたし…
そして手早く屋敷から出た私達は、近くの広場のベンチに腰掛け、一時の休憩を取っている。
「…すまないね、内容も説明せずに」
「いやまぁ…断れない空気だったのは分かりますから」
リンドから手渡された契約書を読みながら、説明を聞く。
サマリロから出て少し東にある農村「チェスプリオ」。つまり昨日言っていたリンドの生まれた村で、「オーマ」という植物の葉っぱを大量に馬車に積み込む。
そこから北へ向かい、フランシスカのさらに北、ファーレス領の北端である「モンタニカ」に届けるらしい。
リンドは自分の商会の人達を率いて別の農村を経由して同じくモンタニカへ届ける。
そしてその2ルートの期限が、14日以内との事だ。
「と、まぁこんな仕事な訳だけど…お願い出来るかい?」
「ええ、大丈夫ですが…馬車の中身はどうしたらいいですか?野菜とか、お皿とかなんですが…」
なんでもオーマは香料として使われるらしく、匂いがキツイ。それから葉っぱの量も少しでも多くしたいため、中は空にしておいてくれと執事に言われていた。
「…彼の気まぐれとはいえ、僕が連れてきてしまったからね…仕方ない、とりあえずウチで買い取るよ」
…それは、有難い話…なのか?
結局アダムに託された事は町外での宣伝活動だったはずで、ここでリンドに買い取られてもそれを満了したことにはならないような…
「アダムの荷物だろう?心配なら、フランシスカに寄ってから北へ上がっていいからさ」
「でも…期限は?」
「少しくらい遅れても、僕たちと同じ荷物が大量に運び込まれるし…それにさっきはああ言ったけど、14日もあればモンタニカには十分着ける。君達は馬車1つだからもっと早いだろうし」
つまり、期限は少しくらいなら過ぎても良いと…
それならばとりあえず大丈夫か…アダムに会って謝って、返金すれば許してくれる…と思う
「じゃあ早速、君の馬車を取りに行こう。それで、チェスプリオにはいつ頃出発する?」
「あー…」
アリスに確認を取らなくては…
「少し、外してもいいですか。荷物は持って行って貰っても大丈夫なので…」
「そうかい?分かった。またお金を渡すから、夕方に商業ギルドで落ち合おう」
──
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