第41話 魔法について②
「結論として、アリスは回復魔法。ルカは土魔法しか使えないってことだよね?」
「まぁ、そうなるな」
ルカが貰ってきた火を家から少し離れたところに穴を掘って、その中で木と一緒に燃やす。
その周囲に先程の土器の元を置いて、急速に土器内の水分を飛ばしている。
「じゃあ自分の身体が魔力を何に変換してるかって、どうやって分かるの?」
「それが分からない。もうやってみるしか無いんだよ」
なんだそりゃ…つまり世界中の魔法使いはたまたま自分の身体に合う魔法を見つけたって事なのか。
「しかも、身体が魔力を変換できてない可能性だってある。その能力が備わってないのかもしれないし、やり方のコツを掴めてないのかもしれない」
「もしくは作用できるものが空気中に含まれてないとかな…基本的にはその機能は遺伝だって言われてるから、親の使ってた魔法をそのまま使えることが多いんだ」
そうか、遺伝…だからアリスやルカは自分の使える魔法が分かりやすかったと。
じゃあ私は…何かあるのか?両親との記憶にそのような物は…あまり印象にない。
「スラム街の子供達が魔法を使えないのはそれが大きい。自分が使える魔法が分からないんだ。親が分からないことが多いからな。魔法が使えれば最低限仕事は出来るからスラムに住むことも少ないし」
「なるほどね…」
私の両親について知っているであろう人達は皆死んでしまっただろうし…
私の魔法使いへの道は果てしなく険しい…というかほぼ不可能ということだ。残念。
「ついでに魔法ラジオとか通貨についてはどうなってるのか聞いてもいい?」
「そうだな…魔法ラジオは電気魔法らしい。何人もの魔法使いが同時に電気を発生させて、それをあの塔から飛ばしてる。電気は空気中の魔力に伝播して遠くまで届く…らしいからな。使えないから知らねえけど」
「通貨は回復魔法以上に特殊だって言われてる。作り方は魔法ギルドでもひと握りしか知らないんだ」
なるほど…基本的に何人もの魔法使いが協力してやってるんだな。
つまり魔法ラジオを作る人と、それをファーレス領内に飛ばす役割の人がいるってことだ。すごいな…
「魔法ラジオ自体…つまり電気を受け取る方の仕組みは簡単だ。電気が干渉しやすい棒で受信して、中のパーツを振動させて音を出してる」
「魔力が伝わりやすい金属ってのがあってな…まさに俺が今使ってる棒なんかはそれになるんだけど」
ルカが右足のポケットを叩く。あの棒はそういう物質なのか。
「最後に言っとくと、魔法の形は人それぞれだ。同じ電気魔法でもアリスみたいに身体に作用する物とラジオの電気を遠くに送る物があるみたいにな」
「だからまぁ…多分、何かしらの魔法は使えるんじゃねぇか?あんまり、知らないけどさ」
「…ありがとう。そんなに気にしてないから大丈夫」
魔法を使えないのを気にして落ち込んでいると思ったのか、ルカなりに励ましてくれたようだ。
最初の印象は悪かったが…悪い子では無いみたいだ。
「ここまでは魔法ギルドに所属して本を読んでれば勝手に身に付く知識だ。だからもし興味があったら、魔法ギルドに所属してみるのもいいんじゃないか」
「はは、そうだね。ありがとう」
人それぞれに魔法の形があるのなら…風を操る魔法だとか、毒を生み出す魔法だとか、そんな物だってあるかも知れないという事だ。
奥が深すぎるな…魔法。こんな状況でも深く調べて見たいと思うくらいに
「…ふふ。アンナ、なんだか楽しそう」
「そうかな…まぁ、考えるのは好きだからね」
魔法が使えれば旅が格段に楽になるとは思うが…まぁ、そのうち何かの手掛かりでも見つかるかもしれないし。
「で、どう?行けそう?」
「多分ね…土同士の接着も魔力でやってるから、昔のやり方みたいに土を選ぶことはなくなった筈だけど…」
いくつかの皿はポロポロと崩れたりヒビが入ったが、それでも何枚かはお皿として使えるような硬さに収まっている。
「まぁ大体この辺りなのかな…何枚かやってみるよ」
「じゃあついでに成形と模様もやろうよ」
「いいわね!私模様も考えてきたの!」
昨日寝る前に何かを考えている様子だったのは、その為だったらしい。随分と楽しみにしてきたようだな…
時間がかかるだろうから火の後始末だけやって、もう一度店の裏に戻ってきた。コップの中の水を適度に調節しながら土に混ぜて、先程までと同じ工程で3つ作り上げる。
「多分水が抜けて縮むだろうから、大きめにね」
「わかったわ!」
ナイフである程度の細さに整えた木の枝を持って、アリスが皿に模様を描き始める。
しばらく2人で待っていると、アリスが大きな声で嬉しそうに叫んだ。
「できた!どう?自信作!」
書いた面をこちらに向けると…そこに書いてあったのは、狐の顔。
あぁ、ルナールの意味は狐だって言ってたっけ…
「アンナのお店だから、狐!どう?」
「いいと思う。でも、隣にもう1匹書いてくれる?」
笑顔でそう伝えると、アリスは不思議そうな顔をしながら、もう1匹書いた。
それを受け取ってルカに渡し、残り2つの皿も渡す。
「私のお店じゃないよ。アリスと私の店だから」
「…えへへ、そうね!」
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