第42話 皿完成!

それからルカが形を直して、乾燥させて…また何枚かは割れてしまったが、無事に宣伝になりそうな皿が完成した。

次は本格的に作るとのことで数十枚の皿を用意して、ルカが形を直し、アリスが絵を描き、私が買ってきた染料で色をつけたり。

そうして同じものはひとつも無い、それぞれに個性のある皿の原型が何十個も完成した。


「いいね。腕がいいじゃんか、ルカ」

「ありがとよ…形を直すのなんかやった事ないけど、普段あれだけ皿に触ってるからそれっぽくできて良かったよ」

「アンナの色付けもオシャレでよかったわよ?」

「あはは、ありがとう。アリスの絵も可愛らしくて最高だ」


それを先程の穴の周りに並べて、火をつけて。

それらの作業が終わったのは、もう日が暮れて夜になりかけていた頃だった。


「とりあえず、明日まで乾かすよ。朝一で持っていけばいいか?」

「そうだね。とりあえず広場に…」


…場所取りとか、どうしよう。その辺の下調べを何もしてなかったな…

それに野菜の下処理とか、水の調達とか…やらなきゃならない事が他にもいっぱいあるのを忘れていた。


「ルカ、明日はここで待っててくれたらいいよ。明日取りに来る」

「ん、分かった」

「行こうアリス。明日の準備が沢山あるよ」

「ええ!頑張りましょ!」


ルカの所を後にして、そのあと向かったのは魔法ギルドの前の広場。

広場に沢山ある出店の中のひとつに入って、店主に話を聞く。


「スープをふたつください」

「あいよ。お嬢ちゃん達、最近よく見るね」


女性の店主と世間話をしながら、スープをふたつ受け取る。ひとつをアリスに渡してから、本題を切り出す。


「この辺りで出店を出したいってなったら、どこに話を聞いたらいいですか?」

「ん?嬢ちゃん商人かい?」

「ええ、フランシスカから来た旅商人です」

「へぇフランシスカ…遠くから来たんだねぇ」


再び世間話が始まる。商人というのは話が好きな人が多いみたいだ。

私自身も別にそれを苦痛とは感じないが…話が上手だとかというのも商人の素質に関わってくるのだろうなと思う。


「そんな訳で、向こうのベンチに座ってるおじさんがここらを仕切ってるから…あの人に話を聞いた方がいいかもね」

「わかりました。ありがとうございます」

「いいよ。若いのにしっかりした子だねぇ」


軽く会釈をしてから、先程教えてもらった男性のところを尋ねる。男性は頭にバンダナを巻いて、タバコをふかしているようだ。

この人もタバコか…それなりに稼いでいるみたいだな


「ごめんください。お話いいですか?」

「あん?…なんだい、嬢ちゃん」


先程買ったスープをアリスに持ってもらって、少し離れたところで待っていてもらうように伝えた。

煙に有害性があるという話を聞いたことがあるし…シンプルに臭いからだ。私は別に嫌いでは無いが、スープに匂いが移るのはさすがに不愉快だし。


「フランシスカの方から来た旅商人です。明日1日だけここに店を出して路銀だけ稼いでからいきたいのですが…」

「旅商人?ギルドは?」

「商業ギルドに入ってます」


身分証を見せると男性はしばらく中を確認してから、頷いた。


「構わねぇよ。ここに長居してる連中を代表して取り仕切ってるだけで、俺の土地でもねぇしな」

「あはは、ありがとうございます」

「店はどうするんだ?出店の用意があるのか?」


まぁ、そこだよな。

販売をするところ、商品を飾るところ、火を使うところに食材を調理するところ…正直馬車だけでは明らかに難しい。


「それが、その辺の持ち合わせがなくて…」

「ははは、なんだそりゃあ。他の街ではどうしてたんだ?」

「うーん…ここが初めてなんですよね」


サマリロでは商品を売らなかったし…というか、アダムのいない所で商品を作ることが初めてだし。


男性は少し考えたあと、先程の女性店主のテントを指差す。


「あの横なら誰も使ってねぇから使うといい。テントを貸してやることは出来ねぇが…」

「なんとかします。馬車は着けても?」

「ああ、大丈夫だ。水は向こうの井戸を使うといい」


男性が指さした先には、井戸がひとつ。どうやらここらの商人は皆使っているようだ。

となるとピークの時間帯は避けた方が身のためだな…水を汲むのも時間がかかるだろうし。


ともすれば、先に仕込んでおくか…

男性に礼を言ってその場を離れる。


「アリス、明日の仕込みをしよう。手伝ってくれる?」

「当然よ。私達のお店だもの!」


…随分と乗り気になってくれたようだ。

いや、最初から乗り気で居てくれていた。

明日はきっと、なんとかなる。なんとかしてみせる。


──

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