第36話 激闘を超えて

「アンナ!アンナ!」


…アリスの声がする。少し目を開けると日差しが目に入って、とても眩しい。


パチパチと木が燃える音が聞こえて目を開くと、アリスが焚き火に燃料を足していた。


そうだ…昨日あのあと消えかけていた焚き火を再点火させて…周りを囲んで2人で寝たんだった。

焚き火の反対側で眠るクロエを見て、そんなことを思い出す。


「なんで外で寝てるの?雪降ったら危ないわよ」

「いやぁ、ごめん。毛布敷いてるから大丈夫かと思って…」


途中で寒くなって毛布で簀巻きすまきになっていたのを取り払って、身体を起こす。確かに雪が降ったらそのまま下敷きだったな…天気が良くて助かった。


「あ、それ…」

「え?もしかして、燃料じゃなかった?」


アリスの手には昨日粉々になった木の皮の、木っ端が握られていた。どうやらほとんど燃やし終わったあとらしい。


「…ううん、大丈夫。全部燃やしちゃって」


サマリロからずっと一緒に旅をしてきた木の皮が、最後に私たちの身体を暖めてくれるらしい。こいつにも結構世話になったな…


地面に転がっていて固まっていた身体を解すと、背中に猛烈な痛みが走る。右手とお腹は大丈夫なようだが…背中は激烈に痛む。


「…ごめん、背中に回復魔法かけてもらっていいかな。昨日滑って転んじゃってさ」

「えぇ?もう、なにやってるのよ…」


アリスが背中に触れて少しすると、暖かい感触がやってくる。それから少しづつ楽になっていくのを感じて…とりあえず、痛みは引いた。


「ありがとう、助かったよ」

「おじいちゃんじゃないんだから、背中を痛めるとか辞めてよねほんと…」

「あはは、せめておばあちゃんが良かったなぁ」


くだらない話をしながら、ゆっくり立ち上がる。右腕に少し違和感はあるが…折れてはいないようだし、とりあえず大丈夫そうだ。


さて、クロエを蹴り起こすか…と思ったが、私達の話し声を聞いて起きたようだ。うっすらと開いた目がこちらを見ている。


「…アリス、私もちょっと…」

「えぇ!2人して何やってるのよ!」


回復魔法をかけられているクロエを横目に、馬に餌をやる。あともう一日か、今日の夜にはモンタニカにたどり着くだろう。


──

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