第11話 旅立ち
行商人として生きることが決まった日から4日後…出発の朝。
「いいか、アンナ。取引の基本は?」
「裏をかかれず裏をかくこと」
「よし」
結局、13日あまりこの街に滞在してしまった。さすがに長すぎる。あまりにもリスキーなことをしてしまった。
スミス達村人も捜索で来ているか、最低でも買い出しに来る頃だ。幸いなことにアダムの店は村に持ち帰るような長期保存のできる食料品は取り扱っていなかったから、そういった姿は見なかったが…
アダムとフィリップさんに貰った餞別の銀貨と交易に使えるような日持ちのする荷物。それから幾許ばかりの私達の食料と馬の餌、アダムの店の器を数枚馬車に積み込んで、私達はフランシスカの北門の前にやって来ていた。
街は4方向に門があるが、1番栄えているのは首都方面の南門。馬車で出発する以上、村のあった東側と人混みの多い首都の方角は避けて出発するべきであると判断したからだ。
これから私達は、北側から出て西側を大きく迂回しながら進み、南の首都を目指す。
「落ち着いたら手紙を寄越せ。それから、商業ギルドに着いたらリンドってやつを尋ねてみろ。なにかの力になるかも知れねぇ」
「ええ、必ず」
「アリス、体を大事にしろ」
「ありがとう、ワイラーさん」
2人に挨拶を済ませ、馬車は進み出す。馬を操るのは初めてだが、基本はアダムに教わった通りだ。
門の出口に差し掛かったところで、もう一度お礼を言う。
「ありがとう!アダムさん、ワイラーさん!酒場の店主にもよろしく!」
街道を進み、二人が見えなくなるまで手を振った。荷台で手を振っていたアリスが私の隣に座り、笑う。
「いい人達だったわ!今まであんないい人達に会ったことないくらい!」
「うん、本当に…この恩は、なんとしても返そう」
選別に貰った雨外套のフードをアリスと自分の頭に被せる。首都に着いて身分証を発行するまで、私達の身分は怪しさの塊だ。なんとしても、上手く行かせてみせる。
アリスの屈託ない笑顔を横目に、私達の旅は再び始まった。
──
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