第12話 道中
「そういえばアンナ、あなたの事、もっと聞かせてくれない?」
フランシスカを出て2日が経った。アリスの計算では、明日には首都へ到着するはずだ。
夜は馬車の中で馬の餌の藁をベッドにして、二人で眠った。藁のベッドは宿屋の物には遠く及ばなかったが、最初の野宿より格段に快適であった。
「私の事って?」
「名前はアンナじゃない?それはそれとして、今までの人生とか、そういうのが聞きたいの!」
「…あんまり山もオチもないよ?」
「いいのよ!それで!」
それから私達は、ゆっくりと話をした。村での生活、両親のこと、村での交友関係や日々の生き方…
「あまり社交的ではなかったからね…村の人との仲は良くもなく悪くもなく、って感じだったよ」
「それでよく作物とか貰えたわね?」
「…まぁ、同情なんじゃないかな。両親が早くに他界したということに…それに両親は村の人と上手くやっていたようだし」
そう、同情だったと思う。思い返してみれば私は随分と、人の情に包まれ、人の情に救われてきた。
その村に…仇を返してしまったのかも知れない。
「でもきっと、アンナの人柄もあったと思うわ。だってとっても賢いもの!」
「…あはは、そうだといいね」
それでも私は、これまでの数日間を決して後悔していない。恩を仇で返していようが、この子の命とは関係の無いことだ。
…ただ少し気になる事とすれば…私はこの子に、同情をしているのか、ということ。
私の今までの行動は、同情の産物だったのか?苦しい思いも辛い思いも、育った村を逃げ出して、私は…
考え事は留まることを知らない。私は何も知らないのだ。この世界のことも、アリスのことも、私自身のことも。
もっと知識をつけなければならない。色んなことを理解できるように。
「じゃあ次はアリスについて教えてよ」
「私は…そうね」
馬車が石にのりあげて、車体が大きく揺れた。2人の体が一瞬大きく跳ねて、再び元の位置へと戻った。
その様子がなんだかお互い面白くて、話を忘れて笑いあった。こんな風に楽しい時間が、長く続きますように…
──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます