第47話 関所

「着いた…んだよね?」

「…多分そのはずだけど…」


雪原地帯を抜けて3日後。おそらく目的地の関所に辿り着いたはずなのだが…

確かにアリスの話のとおり、小さな街がある。軽く見て回っている感じ、各ギルドの小さな支所や、宿屋。商人向けの卸問屋などがあるようなのだが…


「…あまりにも、静かね」

「うん…」


時刻は昼前。道沿いに並べられた屋台も看板を下ろしているし、外を歩いている人は1人も見かけない。

なんだか…嫌な感じだ。


「…とりあえず、店に入ってみようか。アリス、私は馬車を止めて来るから…」

「この辺りで待ってるわ。荷物は?」

「とりあえず手に持てるものだけ…私のカバンも持っててくれる?」


アリスが自分の荷物を持って、御者席を降りる。私のカバンも渡して、馬を進ませる。

とりあえず…どうするかな。宿屋を探すか…?


馬車を進ませること数分。大通り沿いに何かあるかと思って進んでいると、おそらく関所と思われる大きな門があった。


とりあえず、衛兵にでも聞いてみるか…そう思って馬車を進めてみたところで、門の中の、おそらく待機所か何かから、5人の衛兵が出てくる。

あんまり見ない柄の鎧だな…と思いつつ、話しかけようとするが、様子がおかしい。


怒り肩で、ずんずんとこちらへ進んでくる。馬を止めて様子を見ると、向こうのスピードが早くなった。明らかに走ってきている。

そして、後ろの3人は腰から下げた剣に手をかけているように見える。


「これはやばいか…?」


とりあえず馬車を下りる。とりあえず心当たりは無い。となるとここは、勘違いだと説明するか、逃げるか…


馬車には荷物が積んであるし、逃げるとアリスが捕まる可能性がある。となればここは降伏しかない。

両手を上げて降参のポーズを取ると、そのまま剣を抜いた3人に取り囲まれる。


「…なんですか?」

「荷物検査だ。麻薬のな」

「麻薬…?」


心当たりがない。

そんな話をしている間に残りのふたりが馬車を開けて…そして大声で叫ぶ。


「確保!麻薬の運び屋だ!」

「え?」


剣を下ろした衛兵に腕を掴まれ、そのまま地面に叩きつけられる。

筋力の差がありすぎる私はなんの抵抗もできず、ただされるがままに押さえ付けられる。


ほかの4人が馬車の中を改めはじめ、私はただ1人に押さえつけられている。全く心当たりがないのだが…


「なにかの勘違いでは無いですか?」

「…」


衛兵は口を聞くつもりはないらしい。

とりあえず、誤解を解かなくては…最悪、押し潰される。


ふと、顔を上げる。地面に這いつくばった私の目線の先。曲がり角の奥で、アリスがこちらを見ている。


「逃げろ!」


言うが早いか、動くが早いか。私が大声で叫ぶのと同時に、曲がり角のアリスが顔を引っこめる。


大声に気付いた衛兵が私の体から降りて、アリスの方へ走り出す。すかさず足を掴んで、転倒。鉄で出来ているであろう鎧が大きな音を立てる。

私は大丈夫だ。少しでも遠くへ、逃げる時間が稼げれば…


──

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