第45話 出発の朝
次の日の朝。
前日のうちに皿の仕込み、返却に来た皿の洗浄、広場の商人への挨拶、食料の買い込み等をひと通り済ませ、宿にもう一泊。
朝一番に宿を出て、ルカに別れの挨拶と皿の受け取りを済ませて、モンタニカの西門を出た。
昨日の雪が積もって来た時よりも更に街道が見えづらくなっていたが…街道の整備不良について文句を言っても仕方ないので、諦めて前へ進む。
とりあえず馬が嫌がるまでは進んで、早いところ積雪地帯を抜けたい所だ。
「ねぇアンナ、次はリーデル領に向かうの?」
「そうだね。雪はしばらく懲り懲りだ」
そう言って足元を指さしながら、2人で笑う。
上着や毛布などの防寒はアダムの助言もあって揃えていたが、靴を買い忘れていた。
雪用の靴…と言っていいのか分からないが、こういった地面にそぐわない靴を履いていたから、モンタニカでは何度も滑って転んでしまった。
次に雪国に行くことがあれば、参考にするとしよう。
「リーデル領には、関所を超えなきゃ行けないの。フィリップさんの話では、関所の周りに小さな街が出来てるって話だったわ」
「へぇ…もしかして、領を超えるのに手続きで時間がかかったりするのかな」
行ってみないことには分からないが…もしも厳重な審査の上で通れる、とかだったら時間を食われるな…別に急ぐ旅ではないのだけれど。
「もしそうなったら、どうする?待つ?」
「そうだなぁ…それもいいし、サマリロに寄って東や南に行ってもいいかもね」
フランシスカの東側にあるファーレス領最東端の街、というものにも行ってみたくはあるし。何がある街なのか全く情報がないけど…
「…ねぇ、ルカのあの紙の件、アンナはどう考えてる?」
「うーん…なんにしても、双方の話を聞かないことには私では判断できない、ってのが本音かな」
「そうね、私もそう思う」
なぜルカにエリナやマルクの話をしなかったのか。
それはルカがモンタニカにやってきたのが何年前か分からなかったから…もしかして、万が一にも、「クロエ達が勝手に住んでる」とか、「住人が存在しないから勝手に売りに出された」という可能性もあったからだ。
これについてはルカに聞くより、クロエに聞いた方が良いだろう。
その関所の街にたどり着いたら、手紙を出してみてもいいかもしれない。というか、関所が通れなかったら結局サマリロに引き返すことになるし、直接聞いても問題無いだろう。
「…ルカ、奴隷商がどうとか言ってたね」
「そうね…いつの話なのかしら」
「さぁね…ただ、結構昔の話で今はスラムも平和…くらいのオチなら、嬉しいんだけど」
…ただ、昔の話だとすると、クロエの年齢が合わない。今がおそらく私たちより少し年上くらいだから、18くらいだと見積もる。
ルカが父親に「物心、記憶力が弱い頃」だと認知されてるのを見るに…8年、なんなら10年近く前かもしれない。
いくらクロエに盗賊ギルドという後ろ盾があったとしても、せいぜい8歳から10歳くらいの女の子に、ほかの3人を養う力があるとは思えない。
「…まぁ、こればっかりはクロエに聞かないと分からないね」
私の独り言に、アリスが大きく頷いた。
それから、その話をすることはなく、いつもの旅のようにたわいのない話をしながら、雪の積もる道を進んだ。
──
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